生成AI革命

教育現場から、よく生成AIに関しての質問をいただきますので、こちらで解答させていただきます。私も専門家ではないのですが、いちヘビーユーザーとして答えさせていただきますね。

 

「生成AIやチャットGPTがそもそも何なのか、どのような影響を教育現場に与えようとしているのかがよくわかりません。教えてもらえますか?」

 

 チャットGPTをはじめとする生成AIがメディアを賑わせています。よく生成AIによって、教育のあり方が大きく変わるとも論じられています。では、この生成AIとは、そもそも何なのでしょうか?難しく定義すると、「生成AI(Generative AI)」とは、人工知能(Artificial Intelligence, AI)の一分野であり、データから独自のコンテンツや情報を生成する能力を持つAIのことを指しています。生成AIは、テキスト、画像、音楽、動画など、多様な形式のデータを生成することができます。

 と、いわれてもピンときませんよね。簡単に言うと、私たちの指示に従って、人工知能(AI)が動き,文書などのこれまで人間が作っていたものを自動で作り出してくれるサービスのことです。

 これまで、AIを活用するためには、プログラミング言語を理解し、使用する必要がありました。しかし、生成AIでは、英語や日本語などの自然言語によって、AIからの回答を引き出すことができるようになりました。これは、パソコンが一気に普及した過程に似ています。

 かつて私が若かった頃、コンピューターは大変使いにくいモノでした。MS-DOSというOSが使われていて、画面にコマンドを入れて文字でパソコンを操作していたのです。それが、グラフィックインターフェイスのウインドウズの登場によって、マウスを用いて誰でも扱えるようになりました。

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 これと同様に、生成AIの登場は、これまで専門家にしか扱えなかったAIを、一般の人たちが自然言語で扱えるようになった、大きなターニングポイントと言えるでしょう。いまや、プログラミング言語が使えない人でも、スマホやパソコンで簡単にAIに対して指示を出し、回答を得ることができるようになったわけです。

 生成AIがどうやって答えを出すかというと、まずは、サーバーに大量のテキストデータを読みこませます。例えば、本やウェブサイト、ニュース記事などを「読んで」、どんな単語がよく次に来るのか、どういう文章が自然かといったことを学ぶのです。

 質問が来ると、その質問に対して適した単語で始まる文を考えます。その次に、その文が自然で、質問に対する答えになるように次の単語を選びます。そして、その次の単語、その次の単語と続けていき、最終的に一つの文や文章が完成するわけです。

 これをやっているのは、コンピュータプログラムなので、人間よりもずっと早く大量の情報を処理できます。しかし基本的な仕組みは、人が文を作るときと似たようなものです。ただし、一般的な知識や、たくさんのデータから学ぶことはできますが、自分自身の感情や経験はありません。よって、質問に対する「答え」は出せますが、自分の意思を持っているわけではありません。

 ここで、注意点があります。チャットGPTなどの生成AIはアメリカ発祥の技術です。だから、基本のシステムは英語ベースで構築されていて、英語による言語処理がいちばん得意だということです。生成AIの日本語が不自然に思えるのはそこに起因しています。文の作りがどうしても英語の論理になってしまうのです。なので、国語の学習に使い過ぎるのは問題があるかもしれません。

 しかし、英語の学習においては、生成AIは大変な力を発揮します。生成AIのサーバーには,英語圏の大量の情報が集積されています。それは、英語という言語そのものの本体ともいえるものです。これを私たちは、簡単な方法を学ぶことによって、自由に使えるわけです。

 

英語教育の現場においては次のような活用方法が考えられます。

 

・授業で活用する英文やその付属資料の作成

 

生成AIはありとあらゆる分野の英文をこちらの指示に従って、様々な長さやレベルで作成してくれます。入試問題等の英文を模して、似たような英文を生成させることもできます。また、その英文の和訳や、構文の説明、発音記号付き単語リスト、確認問題など、思いつくものはほとんど自動作成させることができます。

 

・評価問題の作成

 

生成AIに様々な問題を作成させることができます。長文を与え、その理解を試す問題を作らせたり、リスニング問題のスクリプトを書かせたりすることもできます。ある種の問題を読み込ませて、同レベルの同種の問題を量産させることもできます。

 

・英作文の添削と講評

 

英作文は添削を通じて実力を向上させるものですが、これまでは生徒の英作文の添削をするのは大変な手間でした。生成AIは、これを自動的に、正確にやってくれます。生成AIは英語ベースで動いているので、英語の添削はもっとも得意とする部分です。

 

・対話の練習相手

 

文字チャット形式で、気軽にAIと会話をすることができます。また、音声認識機能や英文読み上げ機能を組み合わせると音声でもチャット行うことができます。この機能は日々向上しており、英会話の練習相手としても今後AIが活用されるようになるでしょう。

 

・指導方法のアイデア出しや指導案の作成

 

英語ベースの生成AIには、英語を教えるための英語圏の知見がつまっています。授業でのアクティビティの案に困ったら、すぐに質問してみましょう。候補をたくさん出してくれますよ。また、ワークシートや授業での発話例、指導案の下書きなども作ってくれます。

 

ということは、言語学習におけるほぼ全ての雑用をやってくれるということですね。少しずつ使い方を学ぶと、仕事にも自分の勉強にも役に立つと思いますよ。