ビジネスプレゼン
英語はストレートに表現する言語なので、何でもズバズバ言ったほうが良いというアドバイスもよく耳にしますが、実はビジネスのプレゼンではそうとも言えません。どんな国の人だって話しかける相手は感情を持った人間です。洋の東西を問わず相手を傷つけないようにする言い回しが重要です。ただ当然自分の言いたいポイントはしっかり伝えるべきですが。

さて、ここではステップバイステップでどのようにプレゼンを組み立てれば良いのかを見ていきましょう。今回使用する事例は、今よく話題になっているEVの充電方式の移行をテーマにしてみました。

学習するプレゼンの背景は以下の通り。設定もプレゼンの中身も、あくまでも架空の内容です。
プレゼンターは自動車メーカーから出向し、充電規格の協議会で働いている委員の山田さんです。世界の自動車メーカーが、北米市場でドミノ倒し的に充電方式をNACS方式に変更している中、日本だけがCHAdeMO方式を継続していることに懸念を示すプレゼンをしています。さて、山田さんは、どのようにして言いたいポイントを伝えるのでしょうか?


山田さんのスピーチの始まりです。


1. CHAdeMOの対世界的なEV成長への貢献を賞賛(顔を立てる)
"CHAdeMO's technical prowess in the EV industry is truly commendable."

「CHAdeMOのEV業界における技術力は本当に賞賛に値する。」ここでは、CHAdeMOの技術力を賞賛しています。このように功労者の顔を立てて、誰も傷つかないように配慮をすることも大切です。

2. 変化の必要性を表現(主張)
"But with the global trend moving towards the NACS standard, it's time to adapt."
    
「しかし、グローバルなトレンドがNACS規格へと向かっている今、適応する時が来ている。」ここでは、NACS規格への変化の必要性を表現しています。逆説の接続詞で転換して自分の主張を押し出します。

3. 消費者の視点からの推奨(背景と理由)
"Considering the convenience for consumers, transitioning to NACS seems like a wise move."
    
「消費者の利便性を考慮すると、NACSへの移行は賢明な選択に思える。」ここでは、消費者の観点からNACSへの移行を奨励しています。このように主張をサポートする理由をしっかり述べて説得力を持たせます。

4. 変化の難しさを認識(共感を促す)
"Undeniably, changing standards is no easy task, but the long-term benefits cannot be ignored."
    
「もちろん、規格を変えるのは簡単なことではないが、長期的な利益は無視できない。」ここでは、規格の変更が難しいことを認めつつ、長期的な利益を指摘しています。難しい短期的な変化を促す際には、時間軸を変えて長期的な視点から利益を述べることが説得力を持たせます。

5. メーカーからの協力を求める(巻き込み)  
"Manufacturers should stand together with consumers in this transition."
    
「この移行において、メーカーは消費者と共に立つべきだ。」ここでは、メーカーへの協力を求める方法を示しています。時間軸だけでなく、空間も広げ、多くの人を巻き込んでいくような形でスピーチを構築すると良いでしょう。

6. NACSの利点を強調(再主張)
"NACS offers greater convenience and interoperability that consumers will surely appreciate."
    
「NACSは消費者が確実に評価するであろう、より大きな便利性と相互運用性を提供する。」ここでは、NACSの利点を強調しています。やわらかいまま最後まで続けると、自分の主張がしっかり理解されないこともあるかもしれません。終盤に向けて自分のポイントを強く主張しましょう。

7. 開放的な対話の促進(手法の提示)
"Let's open the dialogue for the smooth transition to the NACS standard."
    
「スムーズなNACS規格への移行のために対話を開きましょう。」ここでは、開放的な対話の促進を提案しています。ポイントを提示するだけではなくて、どのような手法でそこに至るのかという道筋を示すことにより、さらに説得力が高まります。

8. 集団努力の力を認識(強調)
"Together, we can bring about a seamless transition to NACS."
    
「共に、我々はNACSへのシームレスな移行を実現することができる。」ここでは、集団努力の力を強調しています。終盤に向けてはポイントをしっかり繰り返して長袖に印象づけることが大切です

9. CHAdeMOへの敬意を維持(共感を促す)
 "Even as we transition to NACS, the value of CHAdeMO's contributions cannot be forgotten."
 「NACSへ移行するとしても、CHAdeMOの貢献の価値を忘れてはならない。」ここでは、CHAdeMOへの敬意を保つ表現を最後にまた用いています。

10. 未来に向けて(前向きに結ぶ)
"Moving to NACS is not discarding the past, but embracing the future."
    
「NACSへの移行は過去を捨てることではなく、未来を受け入れることだ。」ここでは、未来に向けた前向きな視点を示しています。変化によって得られる利益を実感してもらうためにも、未来に向けてのポジティブな発言でプレゼンを終えると良いでしょう。

皆さん、山田さんのポイントは聴衆に伝わったと思いますか?またこれまでの功労者である、他の委員の顔を立てることができたでしょうか?このように様々な工夫をしながら、誰もを巻き込んでいくビジネスのプレゼンを練習したいものですね。