司馬遼太郎の対談集を読む | 近江の物語を君に捧ぐ

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近江を舞台に、近江に生きる人を主人公にした小説をひたすら書き続けている近江人、木村泰崇のブログ。

司馬遼太郎。

トシヨリになってから

この人の本を時折、手にするようになった。


それにしても

この司馬遼太郎という人は

いろんなことをよく知っているものだ。

まるで、歩く百科事典のような人だと

思う。(笑)

(最近、この種の物書きが

いなくなっている)





今から
30年位は前の対談集。
対談の相手は、医学の世界の人、
山村雄一である。

対談のテーマは
実に幅広く
どのテーマの対談も面白く
この2日、私は
この対談集にハマってしまった。


たとえば
あの歌人、西行。
源頼朝に幕府に招待され
源頼朝を相手に
長く長く対談をしたこともあったという。
そのテーマは
和歌ではない! 武芸について
である‼️(笑)
源頼朝は、西行の武芸をめぐる話に
魅了されたという。
西行は
決して
ナヨナヨした歌人ではなく
まるで鍛え上げられたアスリート
のような男であったという。
(と、同時に、西行ほど
哲学的な思考においても
優れていた人はあの時代には
いなかったとのこと)


また
たとえば
あの画家のユトリロは
あの当時、パリでは有名だった
写真家の撮った写真を手元に置いて
あの一連のパリの風景画を
描いたという。
アル中だったユトリロは
家の外に出歩くなんてことは
できなかったらしい。


バスク地方をめぐる話も
もう
実に実に
興味深いものがあった。
スペインとフランスの境界に
位置するバスク地方。
スペイン語、フランス語、
英語、そしてバスク語の
4ヶ国の言語を
操る人も珍しくない地方。
そのバスク地方を語りながら、
民族というもの、
国家というもの、
言語というもの、
ナショナリズムというもの、
ふるさとを思う心、
…………といった
島国に住み暮らす
私たち日本人が
最も理解しにくいことに
ついて
対談している。


私は
小学生の時、
国語の教科書で
「最後の授業」という単元を学習したが、
小学生だった私にとって
あの単元の印象は
とてもとても
強いものがあった。

自分の国の「言葉」「言語」というものに
ついて、私が
はじめて考えた単元が
「最後の授業」であった。
(バスク地方についての対談を
読みながら、思い出していた)


そして
医学に身を置く人と
語り合う
いわゆる
性同一性障害の問題についてのページにも
心引かれた。
私は
染色体とか細胞の分野には
弱いが、
母胎にいる間に
何らかのことが起こり
身体は男ながらも心は女になっていく
(またはその逆)
…………というその現象を
めぐる二人のやりとり。



昔の結核、
今の癌。
…………その比較の
やりとりも印象に残っている。

あの正岡子規は
なんと7年間も
結核であったという。



…………対談集、
何ページあっても
読みやすく
疲れない。(笑)