大岡信「言葉の力」 | 近江の物語を君に捧ぐ

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近江を舞台に、近江に生きる人を主人公にした小説をひたすら書き続けている近江人、木村泰崇のブログ。




昨日の、レオナルドの
「最後の晩餐」をめぐる評論も
そうだが、
中学校の「国語」の教科書には、
けっこう、素敵な作品が
多く収められている。
教科書も捨てたもんじゃない!!!

大岡信(おおおか・まこと)の
「言葉の力」という作品も、
もう二十年は
光村図書の教科書には
載り続けているが、
とても素敵な小品である。

大岡信さんは、昭和6年生まれ。
八年前に死んだ私の父が
昭和5年生まれだったから、
父と同世代だ。
朝日新聞の一面に「折々のうた」を
長く連載されていた。

教科書に載っている
「言葉の力」という
随筆は、
わが滋賀県出身の
染織家の志村ふくみさんとの
やりとりをモチーフにした
作品である。

志村ふくみさんが
見せてくれた、
桜色の鮮やかな
見事な着物。

その色があまりにも
素晴らしいので、
一体何からこの色を出したのか!?
………と、大岡信は
志村さんに尋ねる。

すると、志村さんは
「桜からです」
と、答える。

大岡信は、
てっきり、
桜の花びらから、
取り出したのだと思う。

…………
ところが、どっこい
だった!!

その美しい桜色は、
ピンク色の
花びらからではなく、
あの
ごつごつした
桜の木の
樹皮から
取り出した色
なのだった!!

桜の花びらの
きれいなピンク色。
あの色は、
その木が
全体でもって
ピンク色に
なろうとがんばっているからこそ、
幹も
枝も
すべてが
ピンク色に
なろうとしているからこそ
花びらも
美しい!!

桜という
樹木全体の色なのだ!!!

大岡信は、
このことは、
人が発する
人が書く
言葉も同じではないかと
思うのだ。

………………