前回の続き、3日目(1月5日)の戦いになります。

 

征討大将軍任命

戦いが始まった1月3日の夜、朝廷は仁和寺宮嘉彰(にんなじのみや よしあき)親王を征討大将軍に任じ、孝明天皇より天皇の命で出征する印となる節刀と錦旗を与えられました。

 

「征討大将軍節刀拝受」(『戊辰戦記絵巻』より)

 

そして、鳥羽方面から京都の中心部である洛中への入口にある東寺に本陣を置きます。

 

1月5日の早朝、仁和寺宮は本陣から出て戦場の視察に向いました。

 

宮を護衛する薩長の兵士が集結しています、三角にとがった笠が薩摩兵、角度がゆるやかな方は長州兵です。

 

同丸鎧を着用した武士もいますが、公家の家臣でしょうか。

 

「唐門陣列」(部分、『戊辰戦記絵巻』より)

行軍の先頭は剣付銃を肩にした薩摩兵で、太鼓を叩きながら進んでいます。

 

「征討大将軍出陣」(部分、『戊辰戦記絵巻』より)

宮の前に錦の御旗が2流ひるがえり、そのすぐ後には馬に乗った2人の公家(旗奉行)がつづきます。

 

「征討大将軍出陣」(部分、『戊辰戦記絵巻』より)

宮のまわりを囲む槍を持った武士たち、公家も混じっています。

 

 

錦の御旗

そのころ、淀川堤の千両松付近や富之森では激しい戦いがくりひろげられていました。

 

「淀千両松戦争」(左が長州兵、右が会津兵 『戊辰戦記絵巻』より)

「富之森激戦」(左は大垣兵と後の会津兵、右は薩摩銃砲隊『戊辰戦記絵巻』より)

千両松は長州兵と会津兵、富之森は薩摩兵と会津・大垣兵の戦いでしたが、どちらも激しい戦闘となりました。

 

支えきれなくなった旧幕府軍は南にある淀城に向けて敗走したため、午後2時過ぎには砲声もおさまったようです。

 

錦の御旗は、激戦が終わってから登場しました。

 

下の図は錦の御旗が淀川にかかる橋の手前にひるがえっている様子です。

 

実はこのとき、旧幕府軍は淀城に入ろうとして拒まれています。

 

淀の城主は時の老中稲葉正邦(いなば まさくに)ですが、当時は江戸にいて不在でした。

 

城内に残っている家臣たちは旧幕府軍の戦いの様子から、敗色濃厚とみて官軍側につく腹をかためたようです。

 

そこで、旧幕府軍は退路確保のため、淀川にかかる橋と城下の家に火を放って退却しました。

 

「官軍淀橋陣営」(部分、『戊辰戦記絵巻』より)

よく知られているように、「錦の御旗」は皇室伝来の宝などではなく、急ごしらえで作られたものです。

 

しかし、この旗が出現したことで、戦況は大きく変化しました。

 

それまでは「薩長」対「旧幕府+会津+桑名ほか」の私闘のように見られていたものが、官軍対賊軍に変わったからです。

 

薩長側が官軍となったからで

しょうか、戦で逃げ出した鳥羽の人々も、兵士達に酒や肴を差し入れに来ました。

 

「鳥羽里人官軍を労う」(部分、『戊辰戦記絵巻』より)

手前の兵士はザルに入った沢山のスルメを他の兵士達に配っているようですし、その奥にはスルメをかじりながら酒を呑んでいる兵士もいます。

右端の町人はおにぎりを配っているようです。

 

激戦の後の思わぬ差し入れに、兵士達の表情も明るくなっていますね。

 

激戦地を歩く

千両松の激戦地は、現在の京都競馬場(写真の奥になります)のとなりです。

 

上に高架橋がありますが、この工事のときに一時石碑を動かしたら「怪異」がおきたそうです。

 

京都市の「いしぶみデータベース」にあるこの戦死者慰霊碑の説明には、こう書かれています。

 

この碑は鳥羽伏見の戦で激戦地となった宇治川堤千両松の地に立つ。

もともと戊辰役東軍戦死者埋骨地(HU032)が明治40年に建立されたが,大正14年隣接地に京都競馬場が建設され,昭和42年に大駐車場が新設された。

同時に駐車場と競馬場を結び京阪線を跨ぐ高架自動車道が付けられた。

俗伝によればこの高架橋建設時に埋骨地の碑を撤去したところ,工事現場に怪異が起きたので慰霊祭が行われ,埋骨地碑は元に戻されたという。

確証はないがこの碑もその慰霊のために建立されたと思われる。
【フィールド・ミュージアム京都「いしぶみデータベース」より】
 

手前が「戊辰役東軍戦死者埋骨地」石碑、奥は「戦死者慰霊の碑※」。

※鳥羽伏見の戦>戊辰役東軍戦死者慰霊碑で検索

 

淀城は早くに廃城となり、現在は堀と石垣を残すのみです。

 

 

 淀小橋の址※も現在はこう。(※淀と淀城>淀小橋址で検索)

 

 

 

淀城に近い長円寺は、東軍(旧幕府軍)の野戦病院として使われました。門前には野戦病院跡をしめす石碑が建っています。

 

6/6)につづく。

 

via 幕末島津研究室
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