晩御飯に、実に久しぶりにイタカマが登場した。夕飯の準備中の妻ユカ・リーが、「お母さんがイタカマ(板についてる昔からあるカマボコ。外側がピンク、内側が白)くれたよ。どうやって食べてたっけ?久しぶりすぎて」「イタカマ?」見上げると「あ、それね!」
普通に薄切りでそのまま生で食べてたよ」「分かった!じゃそうする」
たわいもない会話だったが、幼かった頃を思い出した。信じて欲しい。今から40年程前は、このイタカマ本当に御馳走だったのだ。
このイタカマを手にして「お宝ゲット!これ全部俺の!」とはしゃぐ。「待て!ヤスヒロ。それは私の物よ!」と気づいて追いかけ始めた最強姉フーミン。
時は真冬。七輪にのったヤカンから熱々の湯気が立ち、カタカタと音を立てる蓋。その周りを追いかけ回す姉とイタカマ右手に必死に逃げる弟。
何周かで ついにつかまった!
ここからスローモーション。
姉につまかまれ、ヤカンの方へ倒れる俺。倒れるヤカン。中のお湯がヤスヒロの腕の上にジュワ〜!湯気立つ中で泣き叫ぶ俺。
号泣する右腕に冷水を流し応急処置をしてくれる母マーサの一言は今でもはっきり覚えている。「泣くな!男やろ‼︎」
近所の病院に車で向かったはずだが、そこからの記憶は全く覚えていない。ただ、もう少し応急処置が遅れれば、お尻の皮膚を移植する手術を受けなければならなかった程の大火傷だったことだけはしっかりと覚えている。
本当に久しぶりのイタカマを夕飯につまみながら、「こんなんがご馳走やったんやなぁ。本当やで!」と妻に言うが、ただただ苦笑するユカ・リー。
春とはいえ、雨のせいか 久しぶりに冷えこんだ今宵。久しぶりに右袖を手繰り内側に回すと残る 手首から肘の間にちょうどカマボコ板一枚程の大火傷の古傷。
誰にでも一つや二つあろう古傷の話。
痛くも懐かしき傷跡の思い出。
つーか恥ずかしいわ!カマボコでやで!