さて、いよいよ表題曲、『空の無い世界』のミュージックビデオが公開されました。
今回はこの曲の歌詞について、ようやくではありますが踏み込んで書いていこうと思います。
まず、なぜこの曲のタイトルが〝空の無い世界〟なのか。
そして空の無い世界というのは何を意味しているのかをお話しします。
端的に言うと、空の無い世界というのは、人が持っている自分だけの世界のことです。人にはそれぞれ物理的にも、そして心の中にも自分だけの部屋があります。
それは、誰の目も意識せずに、寝たりご飯を食べたりテレビを観たりネットをしたりすることができる部屋のことであり、そしてまた、人には言えない自分だけの秘密を閉じ込めていたりする、そんな心の中の部屋のことです。
この歌の登場人物は、同じアパートの隣同士に住んでいる二人の男女です。
主人公の男性は、隣の部屋に住んでいる、たまに廊下ですれ違うと笑顔で挨拶してくれる女性に淡い恋心を抱いています。
ところがある日彼の部屋に、隣に住む女性が電話をしながら泣いている声が聞こえてきます。
その日から彼の心は揺さぶられ、やるせない想いが募り始めます。
以下、歌詞から抜粋です。
神様そりゃないぜ
あんなに綺麗な人でさえ
幸せにはなれない世界なんてさ
(中略)
誰にも言っていない秘密が
君にもあるんでしょう?
でもそれはそんなに悪い事なのかなぁ?
誰にも言っていない秘密は
人の数だけあるんだよ
それでいいよ
この世界の理不尽さを恨めしく思う彼の心情、そして彼が考える、人それぞれが秘密を持っていることに関する持論を歌にしました。
僕の個人的な話をすると、今までの恋愛では、彼女が僕に言えない秘密を持っているということは耐え難いし許せない、という想いがありました。
でも歳を重ねて今のところ至っている結論は、たとえ僕に言えない後ろ暗い過去や悲しい秘密があったとしても、彼女が僕に心を開いていない証拠にはならないのかなということです。
彼女が本当に僕を愛してくれていると僕が実感できたなら、誰にも言えない秘密を彼女が抱えていたとしても、僕はそれを許す(傲慢な言い方かもしれないけれど)べきなのだと、そう思えるようになってきました。
それがいいことなのかどうかはわからないし、次に彼女ができたときに本当にそれを許せるのかもわからないけれど、僕は、自分だけの〝空の無い世界〟を、つまりは絶対的不可侵領域であるマイワールドを持たない女性には魅力を感じないのかもしれないなと、そう思うようになってきているのです。
僕は、とても恵まれた幼少時代を過ごしてきました。両親は仲が良く、裕福で、両親から無条件の愛を受けることができるのが当たり前だと思っていました。
でも、世の中にはそれが叶わなかった人がたくさんいて、僕は大人になるにつれ、自分があまりにも恵まれた幼少時代を過ごしてこれたことに対してある種の罪悪感を覚えるようになりました。
これは全く見当違いの罪悪感なのかもしれません。でも、次に誰かと付き合うことがあったら、その子には、恵まれて育ってきた僕だからできることをしてあげたいなと、そう思います。
最後にもう一度、歌詞の一節を抜粋します。
君が壊れてしまったのは
多分君のせいじゃないから
夢を見せたい
どうかこの歌が、多くの人にではなくてもいいから、愛してもらえますように。
これからこの歌を、たくさん歌います。
何度も何度も、歌います。