小学時代の私は、将来なりたい職業が弁護士だった。父親の影響を多分に受けており、ことあるごとに父は「お前は将来弁護士になって困っている人を助けるんだ。中央大学法学部に入って司法試験に受かるんだ。」と耳元で呪文のように幾度となく唱えられたもんだ。


純粋な私は「わかった。一生懸命勉強してその難関大学に合格し必ず弁護士になる」と素直に答えていた。小学校の卒業アルバムかなんかの文集には確かに将来なりたい職業として「弁護士」と書いていた。

中学生に進むあたりで現実が見えてきた私は弁護士になることは難しいけど、スポーツ推薦枠で中央大学への入学は可能かもしれない、と考えるようになり得意の陸上で目指そうとした。

高校3年生。

高知インターハイ4位入賞で推薦はほぼ確定したんだけど、10月の国体で準決落ちをしてしまい推薦枠からなんと漏れてしまった。私よりも成績の良かった熊本県代表選手が中央大学の推薦枠を獲得した。


大学進学は中央大学意外に考えていなかった私はどん底に落ちた。大学進学をほぼ諦めていたその時、東洋大学から声がかかり拾ってもらった。捨てる神あれば拾う神あり、とはまさにこのことだった。


人生何があるかわからないもんだ。

腐らず、諦めないで前向きに生きていれば必ず良いことがある。

突破口は見えてくる。

弁護士にはなれなかったけど、世のため人のためと言う意味では似ている仕事に付くことができた。

選挙で落選したらこの役目は終わるけど、なるべくなら世のため人のために生きていきたい。

「九条の大罪」という漫画をご存知だろうか。

「闇金ウシジマくん」を描いた真鍋昌平が現在執筆している漫画である。

結論を先に言うととにかく面白い。

きちんと弁護士を取材し、事実を積み重ねた上で裏話まで説得力あるように描いている。弁護士という一見世のため人のために働いていそうな仕事についている人間が、実はどんな人間と付き合い、汚れ、落ちていくのかが描かれている。

主人公の九条はこの物語の中では悪徳弁護士として最初描かれるけど、その本質が見えてくるにつれて真のヒーローであることが明らかとなる。

相談者に寄り添い、本質を解決するための弁護を引き受けるダークヒーローである。

クリストファー・ノーランの描くバットマン「ダークナイト」のようだな、と感じた。

ちなみに、クリストファー・ノーランの「バットマン三部作」は私のバイブルだ。


ネタバレになるのでここでの詳細は控えるけど、いつの世も清濁合わせ飲んだ人間が1番強い、と言う不易流行の哲学が描かれている。

弁護士といえども中には悪人もいるし、善人ぶって金にガメツイ奴もいる。

良い部分だけをことさら世間に見せようとする人間は実は1番危険な人間である事を、漫画「九条の大罪」では指摘している。

作者の真鍋昌平は前作「闇金ウシジマくん」で闇金の世界を克明に描き、読者をその世界に引き摺り込んだ。

闇金行為自体が違法行為であり主人公の牛島は、いくら悪党とはいえ相手の命を奪う本物の犯罪者である為、作者はラストで主人公を殺すしかなかったと思われる。

今度は、同じく社会の病裡を描くにしても、人を弁護する側からの視点で描いてみたかったのではないか?と勝手に推測した。

主人公の九条は、まさにオモテの牛島であり「ダークナイト」のブルース・ウェインだ。冷めた目で世の中の悪を見透かしている。

ここまでではないにせよ、私もそういう意味では清濁合わせ飲んで、これまでも生きてきたし、これからもそうする自負と覚悟がある。

思想家や活動家の政治家とはソリが合わない。

本質からズレて自己満足と承認欲求のために政治をしているからだ。


本質を見抜いた上で生きていく。

大半から「それやったら誤解されるし批判されるかもよ」と言われてもやる時はやる。

私は九条側の人間である。

本当の意味で世のため人のために仕事するとは何か?

それを問いかけてくるのが漫画「九条の大罪」だ。