彼女はSさんと言う。
Sさんと初めて会ったのは小学三年生の頃だった。
学校は違うけど、塾が一緒で
この時は、可愛いとか好きだとか、そういう気持ちは一切無く、
ただ声が小さくておとなしくて、スグ顔が赤くなる子だなぁと言う印象だけだった。
今思えば、可哀想なくらい か弱い子で、授業で先生に当てられるだけで
赤面して目に涙を浮かべる様な子だった。
今でこそアヒル口という言葉が、ぶりっ子の定番仕草として当たり前に使われるけど、
そんな言葉が出回る以前に彼女は困るとすぐアヒル口。上目遣いも備わっていて
ぶりっ子を地で行くような人だった。
年齢が年齢なら同性を敵にまわすタイプだ。
とは言え、小3の自分には何の興味もないわけで、
初恋でもなければ、ただの出逢いに過ぎない。
この頃の自分は厳しい進学塾でトップになる事ばかり考えていた。
気が付けば、彼女はいつのまにか他の塾に通っていて、
たまーに道ですれ違っても、僕の事は気にもとめず、すっかり忘れた様子だった。
一緒の塾に通っていた事すら彼女は覚えていないだろう・・・
そんな、道端ですれ違った程度の出逢いだった。
塾も小学校も別なので、それからはしばらく会う事もなかった。