続き
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フィリピンからの帰国後、何はともあれ実家へ向かい、最後の様子を母から聞いた。
・・・
息が苦しくなってきたから、家族を呼んで欲しいと言い出したのは父本人。
そして病院から呼び出しを受けたものの、同居している孫(と言っても大人)の長風呂(普段はカラスの行水)のために、
母は家を出るまでに1時間もかかったそうな。
ようやく病院に到着した時、僅かに間に合わず父は息を引き取ったところだった。
しかしその後、ゼロになっていた心電計の数値が、目の前でバクーン、バクーンと跳ね上がったという。
何が起きたのかと驚いているうちに、やがて動かなくなったそうな。
・・・
私も母もその話には何の疑問もなく、
「また天井から戻ろうとしたんやなー。」
と納得し、さすがにもう戻れないことを悟ったのだろう、ということで一致した。
それから数週間ほど経った頃、自宅で本立てから本を取り出そうとしたときのこと、
正確に言うと、立ててある本ではなく、その上に平積みにしてある中から本を一つ取り出そうとしたとき、
平積みもいい加減度を越えていたのか、上の方から平積みの本がスルスルと手前に滑ってきた。
支えようとする間もなく、今度はその下の立ててある本も腰砕けになり、
「スルスル・・、ズズズズ・・、ズボズボズボ・・、ドドドッドーン」
結局、連鎖雪崩の如く、ド派手にほとんど全部が手前に落ちてしまった。
「ここまで全部落ちるかぁ・・・」
トホホの気分でふと目に入ったのが、古い写真のスクラップブック。
「お、確か学生の頃の写真とか入れてたやつか、どれどれ・・」
と、一つを取って開いたそのページに、なんと、父がこちらを見て笑っている写真が。
「・・・・」
思い出すのに数秒、、
それはまだ子供が小さかった頃、実家に帰った時にほんのスナップとして撮ったものだった。
まさか、こんなところに入っていたとは、全く記憶になかった。
それから数日後、今度は夕食後に弁当の用意をしようとした時のこと、
我が家の炊事場には、溜まりに溜まったガラクタを積んでいる手製の簡易棚があって、
いつものようにそこから弁当箱に入れる仕切り銀紙を取ろうとしたとき、
それがスルスルと手前に滑ってきたかと思うと、またまた連鎖崩壊を起こして、
棚の上のガラクタが総崩れで「ガッシャーン」と床に落ちてしまった。
後にも先にも、こんな派手な崩落はなかった。ましてや2度も。
私はさすがにここで父のアピールだと確信し、
「分かった、もうせんでエエ」
と思わず小声でつぶやいた。
果たしてそれ以降、崩落は起きなかった。
しかし、初盆も近づいたころ、今度はまた全く違う技でアピールがあったのだ。
続く
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※赤丸が写真のスクラップブック。その上の平積み本を一つ取ろうとした時、下に立ててある本まで引き連れて一緒に落ちてきた。