昨今のコロナ禍で、ノーベル賞受賞者の大村智先生が開発されたイベルメクチンが世界的にも注目されている。
このニュースを聞いて、私が連想したのはあのティム・バートン(Tim Burton)の名画(迷画?)の「マーズ・アタック!(Mars Attacks!)」だ。
【以下、ネタバレ気味なので見てない人は見てから読んでください】
映画はさまざまな人の人生模様(冴えない人が多い)を描き出すところから始まる。
緑色の火星人(ミドリ人)がTVを電波ジャックして、人類とのコンタクトを果たすと、火星人を崇め奉る人、敵視する人、友好的な宇宙時代と喜ぶ人、火星人で一発当てたい人、出世したい人、エロい人とさまざまな人間が湧いてくる。
米政府内でも楽観的なケスラー教授と好戦派デッカー将軍の意見が対立し、大統領は冷静なケイシー将軍の意見を信頼するようになる。
ケイシーはその後ネバダ砂漠での火星人歓迎式典に臨む。「友好のために来た」という火星人。米国関係者も友好的に対応した式典だったが、平和のシンボルとしての鳩を飛ばしたところから、雰囲気が変わる。
火星人は鳩を熱線銃で焼き殺したのだ。一瞬で骨まで焼かれる鳩。驚く間もなく、火星人は式典関係の人間を次々熱線銃で焼き尽くす。これが全米生中継!火星人は犬と女性を拉致して飛び去っていく。
にわかに巻き起こる「火星人を倒せ」の声。それでも友好を信じて発信された大統領のメッセージを火星人は嘲笑する。
火星人は連れ去った女性と犬の首を相互に交換させる科学力がある。
火星人は友好を求める大統領のメッセージを表面的には受諾するが、実際にはスパイを送り込んで穏健派のケスラーにハニートラップを仕掛け、ホワイトハウスに侵入する。
間一髪で大統領を守りはしたものの、それから火星人の総攻撃が始まる。
しかも火星人は偽の友好を盾に、世界中の主要国と同じようなことを繰り広げていたのだ。
次々と破壊される人類の文化遺産。世界中が一気に火星人に侵略される。円盤や巨大ロボットを駆使する科学力で勝る火星人に人間の兵器は通用しない。
ついには大統領も無惨に殺されてしまう。
防戦一方、なすがままの地球軍であったが、ふとしたことで形成は大逆転する。
火星人に襲われた際に、認知症の祖母を助けようとした青年(冒頭の冴えない人)がつまずいて、祖母のヘッドホンジャックを抜いてしまうと、大音量でスリム・ホイットマン(Slim Whitman)の「インディアン・ラブ・コール(Indian Love Call)が流れ出す。すると次々に火星人の巨大で剥き出しの脳が破裂して死んでいくのだ。
この弱点は、すぐさま報告され、ラジオから町中に「インディアン・ラブ・コール」が流れる。
すると火星人は次々に爆死して、火星人の円盤さえも安定を失って海に堕ちて行く。
こうして偶然にも火星人の侵略を食い止めた人類はボロボロになった地球で日常を取り戻す。
そこでトム・ジョーンズ(Tom Jones)の「よくあることさ(It's Not Unusual)」が流れて物語は終わる。
皮肉でブラックユーモアたっぷりな大人向けコメディの傑作だ。
現在、世界で猛威を振るう新型コロナウイルス感染症(COVID-19)だが、これは重症急性呼吸器症候群(SARS)や中東呼吸器症候群(MERS)と似たウイルスによる感染症だ。
世界中の医師や科学者がワクチンや特効薬の開発に躍起になる中、ウイルスは次々と変異して、さらに人類を脅かす。
致死率の極端に高いエボラ出血熱(一説に致死率90%とも)のような感染症が蔓延し出したら、人類はその叡智と決断をもって初期のうちに感染を食い止めるだろう。
ゴジラ(GODZILLA)のような怪物が現れた時のように!
でも、変異を重ねながら、常に5%の人類を削っていく、頭でっかちで悪趣味な容姿の変なヤツには、ついつい人類は鳩を飛ばしたり、酒の肴にしてしまう悪癖がある。
結果的に本当の危機的状況を作るのはこういう、狡賢いが「ナメてかかれるキャラ」の方だ。
ちなみにCOVID-19に近いSARS(サーズ)は致死率15%、MERS(マーズ)は35%超だ。
今のところ、新型コロナに関しては変異をして感染力が強くなれば弱毒化するという通説は当たっていない。
このMarsAttacks!(ある意味でMERS Attacks!)を鎮めるのが、犬の駆虫薬であるイベルメクチンならば、Tim Burtonのこの先見的なブラックジョークは実に素晴らしい。
私たちが近い未来に、ぶっ壊れたホワイトハウスで「It's Not Unusual」をBGMに、大村智先生に勲章を授ける日が来ることを切に願わずにはいられない。