今回は一見不思議に見える現象(技)のメカニズムの解析、いや回想か…?

 

手首を掴んだだけで人を制圧する絶技。しかも片手で。掴み手(大東流合気柔術)、雅薫(八光流柔術)、片手四教/四ヶ条の表(合気道)と称する技。

 

30数年前にある週刊誌に、鉄のゲージツ家クマさん(篠原勝之)の対談シリーズが連載されていた。

当時は格闘プロレスを謳うUWFの勃興期であり、武道や格闘技に脚光が当たり始めた時代だった。

そこに掲載されていたのが、

     

  右が達人塩田剛三、このとき72才。写真©祥伝社

クマさん曰く、

「合気道の第一人者、塩田剛三さんは、一見、ヒョーヒョーとしたおじいさん。だが、ちょっと手を握られただけで腰が抜けてしまった。まるで電気ナマズのような人だった。超人というのはいるものだ。」

 

競技式合気道にも似たような手はあり、それは両手で持って上から気合一閃で極めるものだった。

通常の四教は手首うらのツボに当たると激痛が走ったが、表側は正直なところ効くわけないじゃん?と思っていた。

ところが写真では笑いながら、それも片手で軽々と制している。

クマさんの表情みたらその効果は明か。

これは…?

 

私の長い合気道というか合気遍歴は、この1枚から始まったと言っても過言ではない。

*お気づきの方も多いと思うけど、私の話はあまりにマニア過ぎてついていける人がほぼいない。ところが10年前に同門で後に免許皆伝された森坂さんと初めて会ったとき、彼はそのエピソードが載っている本【ケンカ道 篠原勝之 祥伝社1987】を知っていた。絶対に誰も知らない、と私は思っていたから本当に驚いた。その後わかったけど彼は私より遥かに武術全般に詳しかった。世の中上には上がいる、と驚くと同時に嬉しかった。そして何よりも、武術に対して真摯な実践派で生半可な技は一切かからない方だった。2年前に同じく免許皆伝者の佐川さんと三人で稽古して、そのときはお二人からものすごく勉強させていただいた。武術に限らずあらゆる分野にわたる書物や白黒グレーの現実世界について、氏のブログから非常に多くの示唆を受けていてとても感謝している。

  

👆大山倍達、芦原英幸諸先生方の話が満載の稀覯本です。

👇は森坂さんのブログ。

 

 

話を元に戻します。

 

塩田剛三(*)の演武は多数あるけど、腰中心に振動する独特の動きは生前公開されていなかったと思う。演武会やテレビ出演時にチラッとみせることはあれど、没後しばらくして“黒帯研修会”での指導映像が公開されて初めて強く意識した。受け役で技を掛けられていた高弟方が、今全員同じ動きをして世に出ているところが面白い。とにかく一瞬で極め、相手は痺れるらしい。上に挙げた片手四ヶ条も電気ナマズと評されているし。

そういえば同じ技に雅薫と名付けているのが八光流柔術。垂直方向と腕の方向への微妙な力配分すなわち手の内の操作と経絡への刺激で、受けは想定外の力と方向なのでガクンと落ちる…当て字だろうが言い得て妙。

下は塩田剛三のそれと似ているか…?両方ともに受けたことないので本当のことはわからない。しかし私は違うのではないかと思っている。このあたりの考察はいずれ書くかもしれないが、更にマニア過ぎて机上の空論なので止めるか…

 

 

  八光流柔術開祖、奥山龍峰の雅薫

 

冠光寺流柔術の形にはないこの"掴み手"は、当流の"片手捕り合気崩し"の逆バージョン。

だから私は片手合気(愛魂)の理合を説明するときに、応用技としてデモで"掴み手"をやっている。

いつ頃からやるようになったかはもう憶えていないが、かなり早い段階で使えるようになっていた。

要は私の場合、冠光寺眞法つまり愛魂でやっているだけ。

だから見た目は同じだけど威力は全然ちがっていて、先師方の絶技とは別物と思っている。

電気が走るわけでもないが、ただ何故か抵抗なく崩されて跪いてしまうみたい。

ガクン!じゃなくてスルスル?アレっ?という感じ(たぶん)。

ではそれ、具体的にどうやっているのか?

以下次回に乞うご期待。誰もしてないか_| ̄|○

 

 

(*)【注意事項】

故人ですでに歴史上(武道史上)の評価が定まっている方に対しては、当ブログでは敬称略の方針で記事を書いています。ただし冠光寺流門人の立場として、当流創師保江邦夫先生の師匠に当たる佐川幸義先生だけには敬称をつけています。いろいろなご意見があると思いますが、優劣をつけているわけではないことをご理解いただけますと幸いです。