7月13日、Studio397はQ3アップデートの事前ベータ版となる、July Release Candidateをリリースしました。
今回のアップデートでは、UI、トラックリミット、TCS&ABSの挙動改善に加え、路面温度やTender Springs(ヘルパースプリング)の実装が盛り込まれており、rFactor2の挙動に大きな変化をもたらす可能性があります。
当記事では、このリリースの和訳を行い、内容について簡単にまとめてみたいと思います。いつものように、誤訳や間違いがあれば、こっそりお教えいただけると幸いです。
Update Notes
General
-
トラックリミットシステムをアップデート、違反にワーニングポイントを付与するために多くの要素を取り入れ、(カットにより得られた)レースポジション/タイムアップを戻すために、ドライバーには短い猶予が与えられます。
-
トラックリミット設定機能、None/Default/Strict(厳密)を追加しました。
-
レースセッション中、ドライブスルーペナルティが課せられるまでのトラックリミットポイント数の設定機能を追加しました。
-
オフトラック中の違反計算を改善し、タイムゲイン、移動距離、スロットル開度、オフトラック時間、速度差、ポジションゲイン、ウォールライディング(壁走り)などが考慮されるようになりました。
-
全セッションにおいて、ラップの終わりにどのくらい近いか、もしくは違反の大きさによって、現在のラップ、もしくは次のラップが無効にされます。
-
レースセッション中には警告ポイントが与えられます。もし3ポイントを一度に課せられるか、累積ポイントリミット限界値(デフォルトでは5)を超えた場合、ドライバーにはドライブスルーが与えられます。エクストリームカットではペナルティサイズが大きくなります。
-
ピットレーン出口違反(白線カット?)が記録されるようになり、それによるペナルティが課せられるようになりました(コンテンツアップデートが必要です)。
-
Wrong way driving(逆走など)の計算は、トラックから離れた位置では、より緩やかになりました。
-
eスポーツを想定したStrict(厳格)モードでは、かなり厳しい限界値が設定され、さらにレースセッション以外のオフトラックラップは全て無効にされます。
-
カット分析記録オプションと開発モードオプションが改善されました。
HUD
-
MFD(レース中画面右下のテキスト)のペナルティページに、レースセッション中のペナルティトラックリミットポイントが追加されました。
Graphics
-
ドライバーラベルのデブスバッファは、ディスプレイモードに影響なく正確になりました。
UI
-
初期起動ウィザードのコントロール設定が、"Calibrate controls"ページにて再動作させることができるようになりました。
-
"Electronics"セッティング(TCS&ABS)は"Engine"セッティング下に移動し、"Engine & electronics"にリネームされました。
-
シングルプレーヤーセッション設定のダメージ倍率設定説明を修正しました。
-
ダンパーセッティングが独自タブに移動しました。
-
サーバージョイン時、散発的にエンプティカーがリストされる問題を修正しました。
-
シングルプレーヤー設定に"Track Limits Rules"を追加しました。
-
シングルプレーヤー設定に"Track Limits Points Allowed"を追加しました。
-
サスペンションセッティングページにTender Springs(ヘルパースプリング)が追加されました。
Physics
-
天候変化とコース上の車両に基づく、動的路面温度が実装されました。
-
新たなABSとTCSが追加されました(現在、テストバージョンのマクラーレン・セナにのみ実装されています)。
-
適用されたトラクションコントロールを調整する、TC Power Cut mapが追加されました(新TCのみ有効)。
-
TCがアクティブになる前のターゲット(最大)スリップ角をコントロールする、Traction Control Slip Angle mapが追加されました(新TCのみ有効)。
-
スリップ量を表しシステムがアクティブになった際に表示される、ABS/TCダッシュLEDが追加されました。
-
Tender Spring機能が追加されました(現在、テストバージョンのポルシェカップにのみ実装されています)。
Networking
-
大きなラグが発生もしくはテレポートが発生した車両は、5秒間接触しないようになりました(ラグクラッシュ対策)。
Sound
-
ループが正しく再生されない問題を修正しました。
-
マルチプレイヤーセッションをローディングする際、大きなスパイク音が発生する問題を修正しました。
-
ガレージ内でランダムにシフト音が発生する問題を修正しました。
-
ピットリミッターとTCSイベントを分離しました。
-
オーディオループポイントを修正しました。
-
スポッターとスターライトが再生されない、もしくは遅延する問題を修正しました。
-
オーディオデバイス無し、もしくは+nosoundが有効になるゲーム設定を修正しました。
-
パフォーマンス:現在、サウンドシステムは別スレッドを使用するようになり、ランダムに発生するフレームスパイクを排除し、ゲームパフォーマンスが改善されました。
Modding
-
ロード警告ポップアップメッセージを統一し、ポップアップ数を低減しました(DevMode/Scene Viewer)。
-
最適化デバッグ用に、デフォルトLODOutでエクスポートされたアセットワーニングポップアップを追加しました(DevMode/Scene Viewer)。
-
セッション中にこれ以上のメッセージを表示させなくするキャンセルボタンを追加しました(DevMode/Scene Viewer)。
-
ShowroomとJoesvilleに存在する、様々なコンテンツの問題を修正しました(DevMode/Scene Viewer)。
-
車両のUIスクリーンショット用の、Sideview_UI_showroomをModDevに追加しました。
-
MapConverterにおいて、*_M_<type>.TGAと名付けられたテクスチャがクラッシュする問題を修正しました。
Known issues
-
Tender Spring設定の説明がありません。
-
カット判定は、ターボ搭載車両にとても厳格になっています(調査中)。
-
周囲温度は任意に設定可能となっており、トラックロケーションの気象条件に合致しないことがあります。これにより、周囲温度と路面温度が大きく異なることがあります。
-
(ラグにより)接触がオフになった際、プレイヤーへのフィードバックがありません。
-
ABS/lockingを示すLEDが、ロック時に一つ点灯しません。
-
(サウンド)エフェクト数が少ない場合、特定の車両/コースの組み合わせによっては音が出ないことがあります。
-
ドライバーラベルトグルは正しく動作していません。
7月18日: RCアップデート
-
(ピットボックス、リプレイなどの)モニターにて、ドライバーラベルが切り替わらない問題を修正しました。
-
サンプル(サウンドエフェクト数)が少ない場合、音が出ない問題を修正しました。
-
シフトプロテクションサウンドを修正しました(異なるギアにシフトする際は、一度だけ再生されるようになりました)。
-
路面温度が水と相互作用するよう、リアルロードをアップデートしました。
7月29日: RCアップデート2
General
-
オーバルコースにおいてレースセッションではない場合、ピット出口違反(ホワイトカットライン)は無効状態がデフォルトになりました。
-
GDBもしくはRFMファイルに、ピット出口制限のカスタム機能を追加しました。
-
コース読込時に毎回作成されていたRRSHDファイルを修正し、ロード時間を改善しました。
-
最大16のインプットデバイスをサポートしました。
-
RCのAIが遅くなっていた問題を修正しました。
Graphics
-
オレンジアンビエント(赤系色)バグを修正しました
UI
-
テンダースプリング設定の説明/tooltipを追記しました(※テンダースプリング項に和訳を掲載しています)。
-
TCS&ABSの説明/tooltipを修正しました。
-
opponent(対戦相手)フィルターとリストのアルファベット順ソートを改善しました。
-
レースカウントダウンが1分以上になる際の、タイマーフォーマットを修正しました。
Physics
-
メインゲーム/Moddev/dedにおいて、リアルロードファイルから温度を読み込むトグルを追加しました。
-
テンダースプリングを使用する際の車高を修正しました。
-
(rF2純正の)TCS・ABS機能を修正しました。
Sound
-
多くのアンビエントサウンドを使用するコースにおいて、幾つかのコンディションでは全てのサウンドが再生されなかった問題を修正しました。
-
オンラインで他車がクラッシュした際、プレイヤーカーでクラッシュ音が再生されていた問題を修正しました。
-
HRTF選択を修正しました。
-
クラッシュ音が再生された際、稀にゲーム自体がクラッシュしていた問題を修正しました。
Modding
-
AIWファイルが存在しない場合にクラッシュしていた問題を修正しました。
8月6日: RCアップデート3
※今回はBTCCヒュンダイの発表と被った影響か、6日の1時時点で正式リリースがありません。下記の情報はS397Discordの開発者コメントから得ていますので、これが全ての情報ではない可能性があることにご注意ください。
-
UI上でのトラックリミットモードと許容ポイントの設定を修正しました。
-
ドライバー交代時、トラックリミットポイントが部分的に移行する(もしくはしない)問題を修正しました。
-
トラックリミットペナルティポイントを増加させる小アップデートを行い、判定時間終了間際でのオーバーテイクに関して改善を行いました。
-
レイテンシー(ラグ)によって接触がオフになった際、チャットメッセージを追加しました。
-
DRSライト(車内インジケータ)がonにならない問題を修正しました。
-
セットアップリストをリフレッシュ(再読込)するボタンを追加しました。
-
"Visuals"に2つの設定を追加し、トラックリミット情報(TLI)の垂直、及び水平位置が調整可能となりました。
-
AIWファイルが存在しない場合のクラッシュを修正しました。
新機能まとめ
※ここからは和訳ではありません、不正確な情報もあるかもしれませんのでご注意ください。
Real Road 2.0
来月予定されているQ3アップデートの目玉は、何と言ってもこの新リアルロード(2.0)となることでしょう。これはrF2がリリースされた直後から要望されており、古くからのユーザーとしても待望の機能となります。
今回のリリース候補版では既に路面温度がピットボックス画面に表示されており、今後は鯖管が気温と異なる路面温度を設定しなくても、自動的に路面温度が気象条件に応じて、動的に変化していくことになります。
路面温度に影響を与える気象条件には、ただの天候変化のみではなく、日付や時間帯による太陽光角度、雲、サーキットの地理的位置(緯度経度高度)、他車両の走行量など、様々な要因が含まれることになるようです。
また、同じコース上でも日陰と日向では路面温度に変化が生まれ、ドライバーはこれまで以上にタイヤ温度や、交換時期の管理に注意が必要になるようです。
ただ、現在のところ、路面温度の設定に関しては特に記述がなく、JSONファイル類を見ても設定が見当たりません。もしかしたら、これらは全てコースMod側の設定に左右される可能性があり、Modの設定(緯度経度、標高など)によっては、正しく機能しなくなる可能性もあります。この辺りには、ユーザー側設定が増えることを期待したいところです。
UI Improvements
今回のアップデートでは、UIにも様々な変更が加えられました。新しく追加されたTCSとABSの設定はエンジン設定に含まれるようになり、また、TCSの動作も細分化されたため、これによりさらにリアルなTCS動作を体験することができそうです。
さて、リリースノートではTCSや路面温度の部分が注目されていましたが、私としてはもっと気になる部分もあります。
今回の変更では、セッティング画面のダンパーをサスペンションと分離したとのこと。以前のUIでもそうでしたが、最近のS397はなぜかセッティング画面を冗長させてしまう傾向があります。スプリングとダンパーを対比して考えたく、セッティング画面自体もギュッと凝縮している方が好みの私としては、ちょっと歓迎し難い部分です。
ただし、今回のアップデートではTender Spring(ヘルパースプリング)が新たに追加されており、また、この空間の大きさからすると、もしかしたら更に新たな設定が追加される可能性も否定できません。今後の展開に期待したいところです。
Traction Control (&ABS)
UI変更でも触れられていた通り、今回のアップデートではTCSとABSにも手が加えられました。特にTCSに関しては細かく分類されており、これからはTCSの使い方にもテクニックが要求されることになりそうです。
まず、今回のUI変更ではELETTRONICSがENGINEに統一され、ブレーキ以外の加減速に関する項目が一覧で見られるようになりました。
ABSは設定項目こそ以前と変わりませんが動作自体は大きく変更されたようで、センサーがロックを検知した瞬間にブレーキをリリースするという、ABS本来の動作が反映されるようになっています。
そして、TCSは下記の三項目に細分化されました。
-
Onboard TC
-
Onboard TC power cut
-
Onboard TC slip angle
これらの詳細な説明は専門的な知識をお持ちの方にお任せするとして、単純に言ってしまえばpower cutは縦方向、slip angleは横方向へのTC動作を制御することになり、これまではどちらも"TCS"の中に含まれていた動作が細分化されています。また、powerとslipが分かれない車両に関しては、これまで通りにOnboard TCが作動します。
ただし、これらの挙動変化は今のところテスト版のマクラーレン・セナにのみに実装されており、体感できるユーザーは一部の所有者に限られています。他コンテンツへのアップデートはまだ先になりそうで、実際にレースで使えるようになるにはもう少し時間がかかりそうです。
Track Limits
このアップデートでは、トラックリミットに関しても大きな変更が行われ、トラックリミットのしきい値がユーザー側で変更できるようになりました。
これまでカット判定のペナルティは目に見えないため、同じ場所でもカット判定されない時と一発ペナになるケースがあり、ユーザーにとっては混乱の原因にもなりました。しかし、今後はカット判定されてもすぐにポジション/タイムを戻せばワーニングが回避され、また、カット判定自体も累積ポイントがMFDに表示されるため、ドライバーにも分かりやすくなってくれることが期待されます。
また、カット判定自体にも見直しが行われており、ピット出口の白線カットなどにおいてはコース製作者側の対応も必要になりそうです。
これらのカット判定については、最初は動作不具合の可能性もあります。ただ、ペナルティのしきい値、ワーニング回数設定、執行猶予が実装されたことは、鯖管としてはとても助かる部分となり、今後は動作安定化を期待したいところです。
2022/7/16追記、トラックリミット検出(DefaultとStrict)の違いについて
Discordにおいて、alex.s氏(S397スタッフ)が公開したトラックリミット検出の違いをまとめておきます。
Strictが有効にされている場合、Defaultとは次の違いがあります。
-
レースセッション以外でのオフトラックは、全て無効となります。
-
トラックリミット違反中に他車両を追越した場合、ペナルティポイントは2倍になります。
-
コース復帰時にスピードアドバンテージを得た場合、ペナルティポイントは2倍になります。
-
ワーニングポイントのしきい値が半分になります。
-
レースセッション以外で0.05秒壁にタッチすると、そのラップは無効となります。
-
ウォールライディングのしきい値は引き下げられます。
-
1度のウォールライディングで付与されるペナルティポイントは2倍になります(0.5vs0.25)。
-
ピットレーンから規定のポイントより前にメインコースに復帰した場合、ドライブスルーペナルティが課せられます(ピットレーンペナルティがそのコースで有効になっている場合)。
Tender Springs
2022年7月18日訂正:Bellettさんのブログにてテンダースプリングはヘルパースプリングとは異なるとのご説明があり、これを受けて当ブログ記事を削除しました。よく知りもしないのに誤りの内容を記載したこと、お読み頂いた皆様に深くお詫び申し上げます。
テンダースプリングの詳細については、下記リンク先にてご確認ください。
2022年7月29日追記:rF2内のディスクリプションにテンダースプリングの説明が追加されました。下記に和訳を掲載しておきます。
TENDER SPRING RATE:テンダースプリングの硬さ(と長さ)に影響する。テンダースプリングは、メインスプリングの上部に設置される柔らかいスプリングとなる。これはサスペンショントラベルの特定ポイントまで有効であり、その後はメインスプリングがアクティブになる。これは初期圧縮においてサスペンションを比較的柔らかくさせ、バンプをより良く吸収することで、タイヤは路面との追従性を得る。テンダースプリングが低スプリングレート(10-20N/mm)の場合、それはダンパーが圧縮されていない状態でフルストロークが十分に長くない場合に、メインスプリングを所定の位置にキープするために使用される。この時、テンダースプリングは車両が静止状態で既に全圧縮された状態となる。
さて、今回のリリース候補版に関して、谷間鯖では明日にでもテストサーバーを開催しようと考えております。土曜日はマクラーレンセナ(もしくはエンデュランスバンドル)を使用、木曜日は車種は未定ですが無料公開されているModを使用予定です。
オフラインで簡単にテストしてみた限りでは、特に路面温度に関してはかなり面白い動作を見せているため、できればプチ耐久レースを開催したいところ。もしご興味があれば、ご参加いただけると幸いです。