小林製薬「紅麹」問題、機能性表示食品制度の怪 4/4日経ビジネス電子版記事 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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小林製薬「紅麹」問題、機能性表示食品制度の怪

海外向けでは厳しい品質管理 4/4日経ビジネス電子版記事

感想
今回は事件周辺に関するもの。
「コレステヘルプ」が適用されている「機能性表示食品」の基準の甘さが追及されていると共に、同社の海外向けの紅麹原料はカビ毒の「シトリニン」の分析を実施していたという。
国内向けでも、もしこの分析をやっていれば「未知の物質」として水際で流出阻止が出来たのではないか?
今からでも規制の見直しを行うべきだろう。
一方紅麹自体には「シトリニン」生成の能力はないようだ。

 

この記事の3つのポイント
1.小林製薬の「紅麹」問題で「機能性表示食品制度」に注目
2.制度発足当初から品質保証や品質管理を問題視する専門家も
3.日本向けと海外向けで異なる紅麹原料の品質管理方法


記事本文(転載ご容赦) 筆者:Aya Kubota 2024.4.4
「長く続けて摂る方が、 お客様の健康維持に役立ちます」
小林製薬の「紅麹コレステヘルプ(コレステヘルプ)」は、サプリメント形状の機能性表示食品だ。紅麹(こうじ)原料に含まれる機能性関与成分の米紅麹ポリケチド(モナコリンK)に、「LDL(悪玉)コレステロールを下げる機能があることが報告されている」のが売りだった。同社はコレステヘルプについて、毎日3粒(米紅麹ポリケチド2mgを含有)を長く続けて摂取することを推奨していた。
ところが2024年1月以降、コレステヘルプを摂取した人が腎機能障害を呈し、死亡例や入院例が出ていることが発覚。3月31日時点で、死亡例が5人、入院例が143人に上っている。

これまでのところ、1年以上摂取して死亡した例や数カ月摂取して入院に至った例などが報告されており、長く続けて取ったことが裏目に出たと推察される。現状、23年に同社の大阪工場(大阪市淀川区)で製造された紅麹原料の一部ロットから、不明の「成分X」が検出されており、腎機能障害との関係が強く疑われている。

「機能性表示食品」は、第2次安倍政権下、13年1月に当時の安倍晋三首相が発足させた「規制改革会議」が生んだ制度。

13年4月、規制改革会議の「健康・医療ワーキンググループ」で議論が始まり15年4月、食品表示法が施行され制度がスタート。

安倍首相は成長戦略に向け、規制改革を「一丁目一番地」に掲げていたため、機能性表示食品も「経済成長に資する政策」と位置づけていたのだろう。

機能性表示食品は、効果や安全性を消費者庁が個別に審査し、許可を必要とする特定保健用食品(トクホ)とは異なる。

第三者による評価を受けた学術誌に論文が掲載されているなど、事業者自ら機能性の根拠を示せば、同庁に届け出るだけで機能性を表示できる。国の許可は必要ない。

その手軽さから、制度開始からわずか3カ月半で、届け出は50件超に上った。

もっとも機能性表示食品の機能性については当初から、「質の低い論文を根拠にしている」「根拠となっている臨床試験のエビデンスレベルが低い」といった数々の指摘が出ていた。

さらに、機能性や安全性を担保するための品質保証・品質管理のまずさについて批判していた専門家もいた。

コレステヘルプの安全性や品質管理に関する届け出はどうだったのだろうか。
消費者庁が運営する「機能性表示食品の届出情報検索」で調べてみると、コレステヘルプの届け出情報を閲覧できる。そして、コレステヘルプの安全性に関しては、端的にまとめると、「2018年から同一処方の製品を20万食以上販売しているが、重篤な健康被害は報告されていないので安全である」と書いてある。マウス急性経口毒性試験やラット90日間反復投与毒性試験など、in vivo(生体内試験)やin vitro(試験管内試験)で安全性を評価したというざっくりした概要は載っているが、届け出情報の内容のみでは学会発表できるレベルには達していない印象だ。

 


小林製薬の大阪工場(大阪市淀川区)ここで製造された紅麹原料の一部ロットから、不明の「成分X」が検出された

さらに、機能性表示食品の機能性や安全性を担保するためには、品質管理がしっかりしていることが大前提だが、生産・製造および品質の管理の項目に記載されていたのは、最終製品(コレステヘルプ)が日本健康・栄養食品協会のGMP(医薬品の製造・品質の管理基準)適合製造所に認定されたアピ(岐阜市)の池田工場(岐阜県池田町)で製造されているということだけ。

紅麹原料は原材料の扱いであり、それを製造していた大阪工場についての情報は届け出る必要がなかった。これが、機能性表示食品の現実だ。

日本向けと海外向けで異なった紅麹原料の品質管理
これまでのところ、小林製薬は紅麹原料の出荷にあたり、全てのロットについて

(1)機能性関与成分(米紅麹ポリケチド)が一定量含有されているか、

(2)微生物検査で衛生的に製造されているか、を調べていた。

ただ、同社の紅麹菌株はもともとカビ毒のシトリニンを生合成する遺伝子を持っていなかったためか、「シトリニンについては年1回の分析としていたほか、質量分析で不明のピーク(成分)が検出されないかどうかの確認は行っていなかった」(広報担当者)と説明している。

紅麹原料の製造工程において、菌株が変化し予期しない成分を産生したり、紅麹原料に何かが混入されたりすることはない、という前提の品質管理になっていたわけだ。

さらに考えさせられるのは、「海外向けの紅麹原料は、ロットごとにシトリニンの分析を実施していた」(広報担当者)ということ。日本向けか海外向けかで品質管理の方法が違ったわけだ。この事実こそ、日本の機能性表示食品の緩さを物語っているように思う。