感想
瀬戸市が近い事もあり、藤井君の快進撃をいつも楽しみにしている。
前回のNHKスペシャル「藤井聡太二冠 新たな盤上の物語」にも驚いたが、それから一年ちょっとで四冠達成とは、あきれるしかない。
将棋については、育て親だった伯父と少、中で打ち合っただけだが、一応動かし方は知っている(棒銀戦法も)
この二人を見ていると、ライバルという者の有り難さを痛感する。
タイトルを一つ取っただけで満足していた豊島に火を点けた藤井。
それぞれの対戦の裏に潜む駆け引き。NHKはいい番組を作ったナ。
内容
龍王戦第四局。王手をかけていた藤井聡太九段。
豊島将之九段は追い詰められていた。
この五ヶ月、十四局200時間越えの戦い。
藤井にとって豊島は「超える事の出来ない壁」通算1勝6敗。
それを破っての偉業達成。全力で盤面に向かう。
対戦によって強くなって行った。
この春から4日に1回のペースでの対局を続けて来た藤井。
ようやく日常を取り戻した。
今までは八つのタイトルを4人で分けていた。その中での竜王戦。
第一局
序盤藤井が積極的な攻め。飛車で敵の駒を奪う。
豊島は冷静に対応し飛車を釘付けにする。追い詰めて飛車を奪った。
AI判断では藤井劣勢。藤井は粘ることで打開策を模索(王を逃がす)
ひたすら粘り、王を希望の場所へ移動(耐える)
それは豊島から学んだ勝負術。
昨年10月の対局(王将戦) 豊島が粘り、藤井が焦って痛恨のミス。
そこで学んだ「苦しいながらも耐える」
豊島が攻め急ぎ、飛車を差し出した。
ここで決めないと「まずい」という怯え。
焦りは必ずある。チャンスを見逃さず豊島の王を追い詰める藤井。
19時間25分で藤井の勝利。大逆転。
藤井にとって豊島は特別な存在。
豊島は9歳で奨励会に入った(将来の名人候補)
AIソフト導入の先駆け。
一昨年竜王と名人を獲得。「現役最強」と言われる。
勝率8割の藤井に6連勝して大きな壁として立ちはだかる。
藤井の師匠 杉本八段が初めて豊島と藤井の対局を組んだのは、藤井が小学生の時。
「豊島君は常にテーマを与えてくれる存在」と語る師匠。
将棋の世界はライバル対決で切り開かれて来た。
将棋は対話。二人の対局は160を超える。
竜王戦の一、二局は藤井が制した。
第三局
想像を超えるハイレベルな戦いになった。
藤井、攻めの銀。
そして盤面は進み、銀を守るためその直後に角を打った藤井。
銀も角も斜めに動く駒(機動性の点では弱い)
これはプロなら絶対指さない手だと解説者は言う(アマの指す手)
それに対し対戦後「違和感なかった。見た目以上に耐久力がある」と言う藤井。
豊島もそれに気付いていた。6手前からその手を考えていた。
「こんなに厳しかったんだ・・・」
パフォーマンスレートというものがある。
これが0(ゼロ)に近いほど最善手。
プロ棋士の平均が2.7に対し豊島1.6、藤井1.3
藤井の打った2二角は終盤に向けての伏線だった。
最後王の逃げ場を塞いだのが銀と角。豊島連敗。
宿命のライバルによる究極の戦い。広大な宇宙。
谷川がその思いを語る。指さなかった手は本人だけが知る(棋譜に残らず)そういう手の積み重ね。答えが出ない局面。それが楽しい。
カド番の豊島。藤井との対局に特別な思いがあった。
棋士としての歩みは苦難の連続。
初タイトルを取ったのはプロ入り16年後。
タイトルを取るのに苦戦したため「一つ取ればいいや・・・」の思い。
それ以降の目標を見失った。
そんな時に現れたのが藤井。見たこともない様な人。
年齢にしては驚異的な成績。
5年後、10年後彼が一番強くなった時に戦いたい。目標ができた。
第四局
将棋史に残る一局。
序盤互いに譲らず。
中盤以降は藤井に傾くも、藤井は持ち時間を大幅に消費。
難しい局面続出で長考が続いていた藤井。そして持ち時間10分に。
藤井、飛車で攻め入る。危険覚悟の手。勝負しないといけない局面。
形勢は藤井から豊島に移行(AI判断)
豊島の「時間責め」を予想する解説者。
トッププロなら30秒で指す(立派な勝負手)
豊島は長考に入った。
時間責めは知っているが自分が有利な局面でチキンと考えたい。
①銀で角を奪う
②3五桂
この選択に99分考え続けた豊島。
納得行くまで考えたかった。かつてないほど難解。
勝敗を抜きにして局面と向き合えたのは良かった。
一番集中した(両者の感想)
藤井は一つの答えに辿り着いていた。3五桂での13手先に自分の勝ち筋があるのを発見した。もしかしたら・・・・・
豊島が打ったのは「3五桂」
その9手後に自分の負けを悟る。それは122手目に藤井の王手。
自らの詰みが10手以上先なのに投了した豊島。
それは相手に対する信用。
長い静寂のあとの投了だった。棋士としての矜持。
敗者は投了の時期を自ら選べる。生き方でもある。
藤井の強さを認めて、ここで投げるのがすごい(解説者)
谷川談:第四局は今の時代の一つの傑作。
豊島が最善手を指していたらどうなっただろう。
激闘を終えた藤井と豊島は同じ事を考えていた。
5五銀を指していたら?・・・・
数十手先に豊島の勝ちがあったかも知れない。
盤上に広がる宇宙をどこまで進んでいたか。
藤井談:もうちょっとやりたかった。やっている瞬間が楽しかった。
豊島談:自分も純粋な将棋の楽しさを共有できた。向き合う事が出来たのは幸せ。
藤井と豊島。
二人はまだ誰も見たことのない将棋の深淵を覗こうとした。
そして、200時間の激闘は終わった。
今日の一曲
王将 村田英雄 ちょっとあざといか(笑)
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