夏への扉 キミのいる未来へ 2021年 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

日々接した情報の保管場所として・・・・基本ネタバレです(陳謝)

 

原作   : ロバート・A・ハインライン『夏への扉』ハヤカワ文庫刊
監督   : 三木孝浩
脚本   : 菅野友恵
音楽   : 林ゆうき
主題歌 : LiSA『サプライズ』
挿入歌 : Mr.Children「CROSS ROAD」

キャスト
高倉宗一郎   - 山﨑賢人、南出凌嘉(少年期)
松下璃子     - 清原果耶
白石鈴(りん)   - 夏菜
松下和人     - 眞島秀和
坪井強太     - 浜野謙太
遠井          - 田口トモロヲ
佐藤太郎     - 原田泰造
佐藤みどり    - 高梨臨
PETE(ピート)  - 藤木直人

予告編

 

感想
原作はSFの古典と言われるロバート・A・ハインラインの「夏への扉」
基本ストーリーはこちら

半年ほど前に読んだので、興味はどうアレンジしたかという事。
共同経営者に騙され、権利をはく奪されて失意のうちにコールドスリープ契約を結ぶところは原作と違和感ない。

思い直して状況打開するも失敗し、冷凍されるところも想定内。
目覚めてからが異なる。

新たなキャラとして現れたのが介護ヒューマノイドのピート。結果的に30年未来に来た宗一郎の行動をサポートし、狂言回し的な役を担う。
強いて言えば、原作で主人公ダニイが過去で自分の会社ハイヤード・ガール社に入った時協力してくれたジャック・ギャラウェイが近いか。

また原作では軍の機密としてのタイムマシンを、発明者をそそのかせて作動させるが、映画では過去に戻った宗一郎が、発明者に開発費を渡して未来で完成させるという離れ業!(いずれが卵か鶏か)

じっくり原作をレビューした者にとっても、あまり大きな違和感はなく、爽やかでいい作品になったと思う。

ただ、SFという造りとして見ると「地味」ではある(原作自体が)
カッコいいメカが出て来るわけでもないし・・・

コレに着想を得た「バック・トゥ・ザ・フューチャー」の方が映画向きか。
あと出演者の年齢差が残念。

原作では主人公ダニーが30歳、その相手となるリッキィが11歳。

これぐらいの差があるとストーリーとしてのインパクトがあるが、映画では宗一郎が27歳で璃子が17歳。

この程度では最初から恋愛対象として想定され、意外性に乏しい。
ただし原作のリッキィはダニイに指示され21歳で冷凍睡眠に入るが、璃子は自分の意思でそれを選ぶ。

よりポジティブさがあって映画の方が好ましいか。

それからドラマに度々出て来るミスチルの「クロスロード
元々桜井は大嫌いだが、ここまで宗一郎・璃子の意思決定に影響を与えたのなら、エンディングでキチンと聴かせるべきだった?

(LiSAの曲が悪いわけではないが・・・)

オマケ1

元々冬の公開が前提だったので、夏を渇望するピート(つまり今は冬)との違和感があった。それはコロナのせいだからしゃーない・・・
オマケ2

そういえば、過去に戻った時の出現はまんま「ターミネーター」(笑)


あらすじ
生まれてすぐ母を亡くし、その17年後、父親も亡くした高倉宗一郎。
一方帝都大学研究科 遠井教授が世界で初めて時間移動に成功したというニュース。


 

父と入れ替わりで猫のピートに出会う宗一郎は、父の親友浩一さんに引き取られた。一人娘の璃子。
大学で電子工学を学び、自宅では浩一さんから機械工学を学んだ宗一郎。だがその義父母は飛行機事故で亡くなる。
中学生になった璃子は叔父の和人に引き取られた。

そして今1995年。ピートと二人で暮らしてもう三年の宗一郎。
巷では保険会社がコールドスリープの宣伝を大々的に行っている。

ロボットの調整に余念がない宗一郎。

そんな時にTVのインタビュー番組。
FWE社が開発した家庭用ロボットA1の特集。

その開発者である高倉宗一郎(27歳)として写真が出される。


ピートの単純明快な哲学。外に雪が舞うのを見つけると、家中のドアを開けさせる。その中のどれか一つが夏に通じているという信念。


開けたドアから璃子が入って来てピートを抱く。
ウォークマンでいつもの曲を聞いていた。
宗一郎から電子工学系を本を借りて読んでいた璃子。

あと一週間では読めない・・
璃子は一週間後、離れた学校に進学する事になっていた。
仕事とは別で個人的にロボットを作っている宗一郎。

そして亡き義父浩一が進めていたプラズマ蓄電池のメドも立てていた。実現すれば充電不要、革命が起きる。

そこに宗一郎と交際している白石鈴(りん)がやって来る。

ピートには嫌われていた。
叔父和人と宗一郎がFWE社を興して、鈴はその経理を担当。

会社の株の1/3を鈴に譲渡する書類にサインする宗一郎。それは和人の提案を受け入れた結果。これで三者が1/3づつの株を持つ。

ある日会社に呼び出される宗一郎。和人が臨時株主総会を宣言。
新規事業計画が提出された。

報道で注目度も上がり、A1を世に出すという。
まだ完成度が低く、三号機ぐらいからでないと商品にならないと抵抗する宗一郎だが、A1の権利をマニックスグループに売り渡して資本援助を受けると言う和人。
採決したら?との鈴の提案。

だが何と和人、鈴の賛成で議案が可決されてしまった。
「嵌めたのか!」と絶句する宗一郎。
社との関係解除。試作機及び他の物品に近づく事も禁止された。

研究室に行く途中でFWE社のトラックとすれ違う宗一郎。

開発全てのものが持ち去られていた。


そこに璃子が来る。酒を飲んで荒れる宗一郎。

いつも大事なものが直前で消える・・・
「私は絶対いなくならないよ」と璃子。

ずっと我慢して来た。ずっと宗ちゃんが好きだった・・・
私には何が出来る? 「何も出来ないよ」と言って去る宗一郎。


失意の中、クレデウス生命のコールドスリープに入る契約を結ぶ宗一郎。期間は30年。だがメディカルチェックで飲酒が確認されて中止に。酔った勢いで人生を棒に振らないための対策。
大切な人の事を思い浮かべ、また明日来て、と言われ事務所をあとにする宗一郎。
璃子が聞いていた曲が流れて来る。

諦めないで、と言った璃子を思い出す宗一郎。
銀行へ行きFWEの株券を信託する宗一郎。

松下璃子が二十歳になった時に譲渡する。

家で和人と計略を話す鈴。プラズマ蓄電池の事も知っていた。

たまたまそれを聞いてしまった璃子は、宗一郎のもとへ走る。

璃子とすれ違いで和人の家に行く宗一郎。居たのは鈴。

今回の撤回を申し出るが、法的には問題ないと突っぱねる鈴に、これをマスコミに公表する、と言う宗一郎。

信用が落ちた会社をマニックスが欲しがるか・・・
降参だと言って油断させ、宗一郎の首に麻酔薬を打つ鈴。
そこにピートが攻撃。どなり散らして追う鈴。

その時黒い影が見えてピートを連れ、車で去った。
カバンからコールドスリープの契約書を見つける鈴。

望み通り冬眠させてあげる。

ただしウチの息がかかったマニックズグループの設備で・・・


目覚める宗一郎。医師が、今は2025年だと言った。


介護用ヒューマノイドのピートが五日間の滞在期間、身の回りの世話をする。
30年の間にマニックスは破綻して宗一郎には資産が何もないが、救済措置で補助金が出るという。

松下璃子様から問い合わせが何度もあったと聞いて、施設を抜け出す宗一郎。
だがピートがしつこくついて来て、補助金が入力されたスマホを渡す。今は現金が流通していない。
ピートの世話でタクシーに乗り「松下璃子」の家へ行く宗一郎。
ほとんど廃墟状態のアパートにいたのは、変わり果てた鈴。
あの件の翌年、和人は病気で死に、会社は買収された。

鈴はマニックスでやっていた不正がばれて投獄されたという。
会社については、急にあの男が出て来て全部計画が狂ったとわめく。FWEの株券もその男が持っていたという。
璃子とピートの行方を聞くが、研究室が大爆発したから、あの時に死んだんだろうとの事。

あの株券は璃子に渡す筈だった。
ひとまず宿に落ち着き、そこでピートの仕様に気付く宗一郎。

自家再生エネルギーで半永久的に動く・・・
上半身裸にして胸を開かせると、中には「プラズマ蓄電池」が。

完成していたのか。じゃあ君はFWE社の?
ヒューマノイドロボット市場はFWE&ガーディアンズ社とアラジン・インダストリーの二社独占だが、彼はアラジン製。

FWE&ガーディアンズ社に乗り込む宗一郎。
以前の株主について教えて欲しいと受付に頼むが、けんもほろろ。
だが生体認証などするうちに、急に社長室に迎えられる。
そこに出て来た社長の坪井強太。

見覚えがないが、宗一郎に憧れて開発者になったと言った坪井。

宗一郎が書いたという「子供の科学」へのサイン。
プラズマ蓄電池は宗一郎が発明したという(アラジン一社独占)
坪井の実家は定食屋で、宗一郎が遠井教授に会いに来ていたと言った。
実家の常連で、大学の研究費を横領して逮捕された事がある遠井。
遠井の発明は時間転移装置。
誰かが俺になりすましている・・・・

会社の沿革を調べて、アラジンの創設者「佐藤太郎」がFWE社の株主だった事が判明。

そして特許情報を確認すると、初号機の発明者は宗一郎。

代理人の弁理士が佐藤太郎。二号機以降の発明者は「佐藤璃子」
そうか、この仮説が正しければ黒幕は・・・

遠井研究所を訪れる宗一郎。宗一郎を見るなり迎え入れる遠井。

中には大きな装置。30年も君を待っていた、と遠井。
俺が先生に頼んだ。黒幕は俺。ここは描き替えられた未来。
すぐこの台座に乗れと言って遠井は宗一郎に金の延べ板を巻き付けた。今では金の価値が低い。これを過去の私に渡せ。
転移されるのは30年前の今日、2月28日。
装置が作動し、宗一郎が転移される寸前、ピートが抱き付いてしまった。転移される二人。

道路に出現する宗一郎。気を失っている。あやうくそれをよける車。

ピートが呼んでも起きない宗一郎。車の男が様子を見に来る。

目覚める宗一郎。相手の男は全てを承知していた。今は1995年2月28日。延べ板は換金して通帳にした。ピートから全てを聞いたという男。
開発・設計のための設備は全て準備した。設計が完成するまでの滞在費、手数料等は差し引かせてもらう、と名刺を差し出す男。

佐藤法律事務所 佐藤太郎。「仕事としてなら引き受ける」

ピートが言う「未来であなたを探していた」

それから必死でA1初号機とプラズマ蓄電池の設計を進める宗一郎。


決行日は3月8日。その前にあの人に会いに行く。
定食屋で食べている遠井に声をかける宗一郎。

先生の時間転移装置でここまで来たと言うが、信じない遠井。

研究資金として通帳を渡すと更に驚く。
その時、宗一郎を紹介しているTV映像が流れる。
研究は必ず成功します、との声を背に店を出る遠井。
その店の少年がサインをねだり、本にサインする宗一郎。
「君は将来立派な開発者になるよ」

佐藤に追加の依頼をする宗一郎。

マニックスグループの不正告発をやって欲しい。
そして新会社設立。社名は? 

そこに掛かっていた絵から「アラジンとか」
報酬はFWEの株とアラジンの社長。
そして一番大事なお願い・・・
 

妻に家族が増えてもいいかと聞く太郎。

二年前の事故で半身不随のみどりは

「もし叶うなら、そんなに嬉しいことはないわ」

設計を進める宗一郎。ピートが研究室に走る。
研究室から開発物を持ち出すトラックの前に立つピート。

撥ねられるが窓にへばりついて「逃しませんよ」


設計が完了し、和人の家に向かう宗一郎。

まさに宗一郎自身が麻酔を打たれ、鈴がピートを追い回している。
窓を開けてピートを救い出し、車で去る宗一郎。その車を見る鈴。
研究室に向かい、璃子に会う宗一郎。
そしてピートと落ち合った。璃子を預けて研究室に向かう宗一郎。

車を突っ込ませ、ガスボンベを開いて火を点けた。大爆発が起きる。

璃子に「これから未来の話をする」と言う宗一郎。
そして佐藤の家へ。佐藤夫妻が迎える。
「佐藤璃子です・・・」と硬い表情で話す璃子。
報酬の株券を佐藤に渡す宗一郎。そして設計図と共にこれを協業のガーディアンズ工業に渡して下さい、とトラックの中の物を見せる。

それは開発した機材全て。

そしてコールドスリープに向かおうとする宗一郎を止める璃子。
だって私にはもう宗ちゃんしかいない・・・
璃子はまだ17歳。これからも学んでたくさんの経験をする・・・
一日に二回も振るなんて、と璃子。
ピートが言う。私がここに来たのも必然。全ては未来の一部。
それでは30年後に・・・・

目覚める宗一郎。佐藤太郎からの手紙を読む。
拝啓、高倉様。今は確信している。降参だよ・・・
璃子は学校へ行き、たくさんの経験をした。

ピートと共にロボット、プラズマ蓄電池の改良もした。
私は君が来るまで待つ。
璃子も連れて来てくれ。

あれから20年後、彼女は同じ場所で眠りについた・・・
 

走る宗一郎

 

そう、君が言ったことに間違いがあった。

璃子は、君が思うより諦めが悪かった。


目覚める璃子に寄り添う宗一郎。
「おはよう、宗ちゃん」
「おはよう・・・」