監督・脚本・原作 新海誠 上映時間：46分
キャスト
秋月 孝雄（タカオ） - 入野自由
雪野 百香里（ユキノ） - 花澤香菜
伊藤 宗一郎 - 星野貴紀
秋月 翔太（タカオの兄） - 前田剛
寺本 梨花（翔太の恋人） - 寺崎裕香
タカオの母 - 平野文
予告編
感想
高一の少年と、年上の女性の淡い恋を、雨の風景と共に描く小品。
「君の名は」と同様、実在の風景を丹念に描き、それに柔らかな雨を乗せて場面が作られる。
公園に佇む東屋に座って、女子と話をする・・・確か自分の思春期にもあった（年上ではなかったが）
そうした誰にもありそうなシチュエーションで、ゆっくり、静かに設定を沁み込ませて行く・・・
これはなかなかの技術と言っていいだろう。
タカオの、静かな応対が好ましい。
オトナの対応をして一度はタカオと距離を置こうとするユキノだが、彼に去られた後で想いがこみ上げる。そして辛らつな言葉を浴びせられ、ようやく自分の心に素直になれた。
いやー、こんな純な感情はほぼ忘れていたので、映画館なんかで観たらヤバいだろうな・・・
エンディングで流れるのは昔、大江千里が歌っていた「Rain」
秦基博が歌っているが、これがまたいい。
ＳＦの絡まない、彼の作品を観たのは初めてだが、雨や水の描写が秀逸であり、幻想的なイメージが好ましかった。
観るというより、時間の流れに身を委ねる感じ。
今後も時々味わいたい。
声の主役の入野自由は「聲の形」でも主役をやっていた。
独特の感性があって好きなアクター。
そういえば「聲の形」の制作は京都アニメーションだったとか。
亡くなられた方々のご冥福を祈ります。
あらすじ
地下鉄で学校に通う高校一年の秋月孝雄（タカオ）は、雨が降るとストレスで学校に行けない。
６月の雨の日に、タカオが新宿御苑の東屋に行くと、朝からチョコをつまみにビールを飲む女性に会う。
どこかで会いましたか？と聞くタカオだが女性は否定。
バッグ一杯のチョコを見せられ、ドン引きのタカオ。
そのまま彼女と別れ、遅刻して出校するタカオ。
別れ際に女性が呟く短歌「雷神（なるかみ）の 少し響みてさし曇り 雨も降らぬか 君を留めむ」
タカオは兄翔太、母との三人暮らし。兄、母が働いているので、家事の受け持ちはタカオ主体であり料理もうまい。近く家を出るという兄。
時々降る雨の日に、その女性と会うのがタカオの習慣になる。
靴に興味を持ち、自分でも作っているタカオは、その女性の足元を盗み見ながらスケッチ。
時々自分の弁当を譲っていると、ある日彼女が自分で弁当を作って来た。だが卵焼きの味がオカシイ。
自宅で誰かと電話をしている女性。出掛けられない事と、最近会う「おばあさん」に食べ物もらううちに味覚が戻りつつある事を話す。
相手は「伊藤先生」
ある日彼女がタカオのノートを見て、彼が靴に興味を持っている事を知る。夢を語るタカオは、参考にしたいから、と彼女の足のサイズ計測を申し出る。
彼女はタカオに海外の専門書をプレゼント。素直に喜ぶタカオ。
梅雨が明け、新宿御苑に行く口実がなくなり、タカオが彼女に会う事はなくなった。
二学期のある日、学校で偶然彼女とすれ違うタカオ。
多くの女子生徒に囲まれている。教師？
「ユキノちゃん、学校来たんだ」と友人の松本。
彼女は本校の古文教師、雪野百香里。話によれば、彼女に横恋慕した男子生徒が逆恨みしたせいでクラス全員が嫌がらせをし、ユキノ先生は学校に来られなくなったという。
松本の彼女から首謀者 逢沢の名を聞き出し、その女子にビンタを張るタカオだが、取り巻きに返り討ちにされる。
ほどなくして、晴れの日ではあるものの例の新宿御苑に行くタカオ。そこにユキノが居た。
先日の返し歌を言うタカオ「雷神（なるかみ）の 少し響みて 降らずとも 我は留らむ 妹し留めば」
突然の雨で、ユキノのマンションへ行く二人。ユキノは服を乾かし、タカオは料理を作る。
食後、今が一番幸せかも知れない・・・・とタカオ。
そして「ユキノさんの事を好きなんだと思う」
だが彼女は「ユキノ先生でしょ」と静かに言う。自分はあの場所で歩ける練習をしていたと言い、郷里の四国に帰る事を告げる。
いくばくかの失望を抱き、そこから去って行くタカオ。
しばらく経ち、突然裸足で外に飛び出し走るユキノ。
階段の踊り場で壁の袖にもたれ、景色を眺めているタカオが振り返る。
何か言おうとするユキノに、厳しい言葉を浴びせるタカオ。
朝っぱらからビール飲んで、訳の判らない短歌。
自分は何も話さないくせに、生徒だって知っていたんでしょう。
教師だって知ってたら靴の事なんて話さなかった・・・・・
オレが誰かに憧れたって、そんなの届きっこないって、アンタは最初から分かってたんだ。
アンタは一生ずっとそうやって、一人で生きて行くんだ！
走ってタカオに抱き付いて、声を上げ泣き出すユキノ。
毎朝ちゃんとスーツ着て、学校へ行こうとしてたの・・・でも怖くて、どうしても行けなくて。
あの場所で、わたし、あなたに会えてたの・・・・
今は冬。四国でまた教師を再開したユキノから、時々手紙を受け取るタカオ。
ユキノのための靴が完成し、あの庭園に持って行くタカオ。
あの雨の日々は二人とも、歩く練習をしていたのだと回想する。
もっと遠くまで歩けるようになったら、会いに行こう。