NHKスペシャル「夢の丘」は危険地帯だった 10/31放送 | 私の備忘録(映画・TV・小説等のレビュー)

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副題「土砂災害 広島からの報告」


番組紹介
http://www.nhk.or.jp/special/detail/2014/1031/


土砂災害のあった、広島 安佐南地区 八木。「広島ショック」として各都道府県に問合せが増大中。
八王子では問合せが500件以上来ている。神戸でも緊張が高まる。8月に市内で土砂災害があり、700ケ所総点検を行った。
市街化区域と危険箇所のマップを重ねあわせると、現時点での住宅の危険地域が特定出来る。


京都大学の竹林教授。土砂が狭い場所を通ると土石流が高くなり、破壊力が増大する。現状では災害を意識した開発になっていない。

希望を持って移り住んだ夢の丘で74人が犠牲となった。


なぜこの場所に開発されたか?
昭和30年代の航空写真では、そこは「天井林」と呼ばれていたが、その4年後に住宅地が造成されていた。当時の町内会の記録あり。大雨が降ると、石がころがる大きな音がしていた。住民は危険に気がついていた。
当時そうして開発された土地は坪5500~9000円で分譲された(標高が高くなる程安くなる)。購入者のホンネ「土地は買ってしまった。引くわけには行かない」。
当時は高度成長期であり、広島の人口は2倍。住宅不足が深刻だった。八木で20軒以上売った業者の話。住宅が100m上がる毎に100万安くなる。むちゃくちゃな時代。


こんな状況に転機が訪れたのが昭和44年。国が「都市計画法」でルールを設けた。市街化区域と市街化調整区域に分け、危険な地域の開発を制限。
だが今回被害の大きかった小原山地区では制定後も開発がやれた。なぜやれたのか? 当時の都市計画化係長の談。規制しようとしても地主、業者の反対が強く聞いてくれない。線引きに不満や要望が続出。市街化区域を増やせとの声に逆らえなかった。小原山に事故の1ケ月前に引っ越して来た若夫婦が死亡(妻は妊娠していた)。


広島大 海掘教授談。100mm超の豪雨の時の土石流は通常とは違うメカニズムが働く→「パイピング崩壊」。通常は地表と岩盤の間に水が溜まって表層が持って行かれる。パイピング崩壊では、岩盤の割れ目にも水が浸入し、その圧力で岩盤を水が突き破り、岩盤ごと流される。巨石が多いのが特徴。雨さえふればどこで起きてもおかしくない。


今回の前にも広島で土砂災害があった。H11年、154棟が全壊となり35人が犠牲となった。
それを受けて県で警戒区域指定の調査を済ませていたが、公表していなかった。警戒区域の中に今回犠牲者のうちの66名が含まれていた。
県はなぜ公表しなかったのか。作業プロセスは調査→指定→公表の手順だが、調査と指定の間で住民説明会が必要。住民の理解がないと公表出来ないが、反発が多い。公表されると「住めない」「売れない」「地価が下がる」。

元国土交通省の広島担当者。3年間で対象3万2千ケ所のうち危険区域の指定が出来たのは13ケ所のみ。妥協を強いられる。指定出来るのは過去に災害が起きたところを優先。


9月下旬、行政が動いた。広島では方針を転換して公表を優先(住民説明会の前に)。行政の覚悟が問われる。
住民意識も変わり始めている。



感想
若い頃(25年ほど前)土地の安さに魔が差して「海」の付く地名に家を建てたことがあった。引っ越してから地元の人に聞いたら50年に一度水没する土地だと言われてガックリ。4年ほど暮らしたが、別の要因もあり転居。幸い当地は災害のリスクは少ない。


確かに家を建てるのは人生の一大事業。危険かも知れない、と人から聞かされても、そこに住んでいる人が居る以上、大丈夫だと(心に言い聞かせて)突き進んでしまう気持ちは、本当に良く判る。
でも住むためには「安全」が第一。貴重な教訓として記憶しなくてはならない。
しかし「パイピング崩壊」すごいな。

この前NHKでやってた巨大災害 の話だと、今後集中豪雨のリスクはどんどん増大する。このテの被害も多くなるのは確実だろう。