「箱男」は若い時分に1度読んだが、ほとんど忘れていた。
ただ、極めて限定された箱の中の「自分の世界」、閉所にこもる安心感という思考に改めて接し、ハマったらちょっとアブないなーという印象が・・・・・
ダンボール箱を頭からすっぽりとかぶり、都市を彷徨する箱男。例によって詳細に説明される箱の構造・仕様。男自身、自宅そばに居付いた「箱男」に嫌悪を感じ、空気銃で追い払ったにも関わらず、その後自分自身が箱男となって徘徊を始めてしまったのだった。
箱男はある時、偶然出会った看護婦に5万円でその箱を買いたい、と言われる。彼女に対する欲望を感じ、病院に侵入したうえ彼女の裸を覗く。彼女を思いのままに出来、箱男から箱を買い取った偽箱男。いつのまにか語り手は偽箱男となり、さらに少年D、露出狂の画家へと次々に変化して行く。このノートを書いているのが一体誰であるのか、もう誰にも判らない。
この小説にどういう計算があるのか、あまり深刻に考えてもキリがない。とにかく理屈付けにこだわらず、淡々と読み進む。
彼の作品のワイセツ感というのは「燃えつきた地図」でも余すところなく表現されているが、この看護婦に対する思い入れもかなりのもの。
秀逸なのは脚の定義・・・女性の脚は性器の蓋だという。
箱の中にこもる自分と看護婦に惹かれ、外に出たいと思う自分。どちらを望んでいるのか。
見る者と見られる者との関係性を極限までつきつめた小説。
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で映画の予告編がありました。本編も観たいナー(看護婦は緒川たまき)
しかし、中には実際「箱男」をやってみようというチャレンジャーな人も世の中には居る様であり、まんざら捨てたもんじゃないです(笑)