2024年読書評8 市川沙央 絶対残酷博覧会 | 預言者のコラム2

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「絶対残酷博覧会」
都筑道夫
再読
これは長らく文庫化されなかった1つ。
ハードボイルドものと言っていいのか、皮肉な暗いアクションものというか。
合本になっていた「危険冒険大犯罪」はユーモアのあるアクション小説だけれど、こちらは暗い感じ。
そして短編集だけれど、全体的にあまり出来は良くない。
これと「哀愁新宿円舞曲」は長らく文庫化されなかったけれど、両方ともあまり出来がいいとは言えない。だから見送られていたのか。
いずれにせよ都筑先生にはジャンルバラエティがあり、無数のジャンルを書く人であり、その才能の一端を見たと思えばよいのではないだろうか。


「ハンチバック」
市川沙央
芥川賞受賞作。
私は賞を取ったからといって読みたくなるたぐいの人間ではなく、過去、そんなものを読んだのは数冊。
田中慎弥「共喰い」
村田沙耶香「コンビニ人間」
そしてこれ

これは著者が障害者ということでニュースにも取り上げられていたけれど、私はそういう意味ではなく、そこにこの作家がたくさん娯楽小説を書いてきたという点に魅かれました。
私は基本、純文学など興味がなく、芸術は娯楽だと思っているので、楽しめるものを求めます。
映画でも音楽でも文学でも。
というわけで、この本を読むことに。本書はもちろん娯楽ものではないけれど。

この本自体は、作者がこれまで書いてこなかったこと、自分をさらけ出すというか、日常を描くということをして、変な好奇のある選考委員がこれを選んだという感じが私はします。
つまり、私は文学賞の選考委員たちに疑問をまず感じるということです。
賞というのは、映画のアカデミー賞でもそうですが、奇妙なものにしか与えない。ストレートな娯楽にはまず行かない。
そんなひねくれを感じます。

で、本書は
障害者の日常にフィクションを加えたという感じか。
インタビューで「どこまでが現実でどこまでがフィクションなのか」と問われていたけれど、確かに、日常とフィクションを曖昧にした点がこの本のポイントなのかも。

そして重い現実と、ユーモアと皮肉。
この人はペラペラしゃべれたら実際に冗談をよく言うのかも知れない。そんな風に感じた。
そして読書に埋没しているようだが、音楽は遠くでかかっているようで、あまり深く興味を持っていないのかなという印象でした。
韓国語のラブソングがかかっているけれど、主人公は歌詞が分っている。市川さんも英語や韓国語も聞いて話せるのかも。

音楽は聴く分には受け身だけれど、読書は読むという作業、紙の本だと作中にもあるけれど、全くの受け身ではない。
読むという作業は、受け身ではあるけれど、作業でもあるということ。
本というのはそこにも意義があるのかな、と改めて思わせるものでした。



主人公は妊娠をして堕胎をしたいという。
妊娠をしたいという願望は、普通の人としての機能をしたいということ。
そして堕胎をしたいというのは、おそらく自分自身が生まれて来なければよかったという親と世界への憎しみ。

こんな感じだと思います。

しかし、
主人公のハンドルネームが「シャカ」であることは2つの意味があって、
1つはシャカ=仏陀は涅槃を解いていたことから死を連想させます。つまり、主人公は死を望んでいるということ。
もう1つ、シャカは神の救いを表してもいる。つまり、この人は神の奇跡的な救いも同時に潜在的にではあるけれど、求めているということなのだ、

そのように感じました。

そして読書評で見ると、読者の中には「この障害者だけでなく、健常者の中にも同じように苦しんでいる人がいて、必ずしも障害者のみが苦しんでいるわけではない」ということを言う人もいました。

私はそういう意味でも、多くの人は死を望み、同時にできることなら神の救いを求める、という心理を持っているのではないかと感じたわけです。

本書は暗い小説だけれど、そこはかとなくユーモアを感じさせるものでした。純文学を書く以前はハッピーエンドの娯楽ばかり書いていたそうで、基本そういう小説を書く方のようです。黒沢の「天国と地獄」を評していたので、気が合いそだなと感じました。
爆笑の太田も黒沢ファンなので、彼とも。


 

 


ココナラ
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