「林の中の家」
仁木悦子
仁木悦子は本名、大井三重、二日市三重(どちらかが結婚後の改姓と思われる)
なぜ仁木というペンネームにしたのかというと、字面が簡単だからとのこと。深い意味はないとエッセーで語っていました。
この人は古い時代の本格ミステリーを書く人でアガサクリスティに比較されていました。
私は本格はあまり評価していないのですが、彼女は子供向けの本を書いており、子供と言ってもハリーポッター世代くらいの年齢対象のもので、そちらが面白そうだと思います。
さて、この作品は「仁木悦子」という女性とその兄が探偵役として登場する推理もの。彼女自身、兄を慕って尊敬していた様子が伺えます。
作品自体としては、単なる謎解きなので、物語としてはあまり深みがないと言えるかも知れません。
「紙の罠」
再読:
都筑道夫
近藤庸三という男が金になることに首を突っ込むコミカルアクション。作者は007を意識していたはずで、しかしもちろん真似にはなっていない。
作品としては昭和の古さを感じさせるが、読みにくいということはない。
~造幣局から紙幣の紙が盗まれ、それを偽札に応用するのだとにらんだ近藤が先回りして、偽札作りをする連中からおこぼれにあずかろうとする。
しかし曲者の土方や邪魔が現れ、どたばたとする。
「猫は知っていた」
仁木悦子
再読:
大分前、子供の頃に買った文庫を引っ張り出して読みました。全く内容は覚えていないので初読のような感じです。
感想は、ちょっとすっきりしないというか、作品としては好きではないものでした。ただ、出来はアガサクリスティばりで、確かに賞を獲っただけの質はあります。
私としては本格はパズルのようなものであり、パズル小説とはトリックが暴かれたとたんに興味の失せる類のものです。
ヒッチコックが言っていたように謎を主体とした物語はそこが弱みなのです。
ですので、彼女の作品としてはトリックに重点のあるものではなく、物語を追う、子供向けの「消えたおじさん」のような作品の方を評価します。