十人十色。無限に広がる茶の湯の空間とは
私たち人間にはイメージするという力が備わっていたりします。
以前お話した
細部に至るまでの模倣を施すことにより、
模倣によって得られる周囲からのレスポンスを肌で感じ、その模倣の対象となる者の思いに触れるというサイクルを繰り返し、己の心を育む私たち人間。
だれかのなにかに触れることで、
何かの拍子にある対象に触れた時、頭に浮かぶイメージ、エピソードがそれぞれの心にあったりします。
茶の湯って
そういうイメージする力、それぞれの心の中にあるものっていうのをとっても貴重に大事にしていたりします。
そこで今日お話したいなと思っているのが、
待庵という最も狭き千利休の茶室空間についてのお話。
この茶室
広さにして、なんと2畳の空間です。
たったの2枚の畳の空間。
何もない土壁の空間。
電気もなく、冷暖房の設備もない。
そんな一見お世辞にも高貴な/立派ななどとは言えぬこの茶の湯の空間に広がる景色とは?……
それは、
茶室に足を踏み入れた一人ひとりの心の中にあるなにか。です。
静けさに満ちた茶室空間に
かすかに聴こえる釜の音。
鳥の声。
亭主の足袋の擦れる音。
柄杓から滴る水の音。
茶の香り。
あらゆる五感が刺激され
いまの自分自身の心に映るなにか。
そのなにかと対峙する時間。
物理的には
狭きと感じられるかもしれない茶の湯の空間。
だが、しかし。です。
冒頭でもお伝えした通り、私たち人間には、
イメージする力っていうのがあるんですよね。
それぞれのいま心の中に映る景色。
そんな今あるあるがままの自分の思いと
対峙してみる。
そんな時間を取ってみるというのもいいですね。