夏になると、このハーフパンツをKは穿く。
 
テレテレの迷彩柄。
 

 
 
わたしと彼が、一緒に暮らすことになったのは、このハーパンのせいだ(と思う)。
 
およそ、性格や好みや、生まれ育ちや、仕事っぷりや、どれを取っても相性がいいとは言えず、コロナで日帰り温泉が閉鎖になり、風呂貸してくれと、うちに転がり込んでくる数か月前は、あんな性格絶対無理、と、Facebookに書いたほどだった。
 
それが、なぜ、こんなことになったかというと、このハーパンの匂いだ。
 
ムスク系の甘い香りに加齢臭がブレンドされて、なんとも芳醇なアロマ。
 
特に、太腿の外側がいい。
 
ネコにマタタビ粉をやると、くてんくてんになる、あれと同じくらいの効果が感じられる。
 
学者によれば(誰だか忘れた)、匂いが好きな異性は、より優れた子孫を残すため、交配する相手として必要な遺伝子を持っているのだそうだ、それを運命の相手と呼ぶことができる、んだとかなんとか。
 
わたしに無くて、Kにある優れた遺伝子なんてのがあるのか甚だ疑問だが、要は、匂いが好きな相手とは、相性がいい、ってことらしい。
 
斯くしてわたしは、ハーパンをクンクンしながら、くてんくてんになって、そのまま暮らしを共にすることとなったのだった。
 
でも、ふと気がついた、他のKの衣類からも、もちろん本人からも、この甘い香りはしない。
 
てことは、わたしの運命の相手は、Kではなく、ハーパンだった、ってことなのか?
 
クンクン。。。