ひとくちにがん患者といっても、取り巻く状況は様々。
わたしのように、社会的な責任を整理してしまった人間は、仕事や子育ての心配がありません。
つつましく暮らしている限り、生活や治療にかかるお金も、なんとかなりそうです、もっとも、がんはお金がかかります、セカントオピニオンだって、相当な出費。
一件行くのに、Kとふたりでは、旅費、ホテル代、セカンドオピニオンは自由診療です。
話を戻しますね、つまり、いまのわたしのテーマは、自分とKとの残り時間だけ。
Kは、頼りなくて危なっかしいところもあるけれど、最愛の人。
いい年齢の大人が、愛だの恋だの、おかしなことだと思われるでしょう。
ただ、人にとって大事なのは、経済的成功でもなければ、地位や名誉の獲得でもない、愛だと思います。
それが、今まで生きてきた結論。
最愛の人と、人生の最期を歩けることは、幸せ。
でも、Kには、看取りという重い荷物を背負わせてしまう、それでいいのか、ある日、風のように消えてしまったほうが、Kのためではないか、気持ちは揺れます。
手術がうまくいかなかったと知らされた夜、Kは「入籍しよう」と言いました。
これからの治療のためにも、と。
お互いの子どもたちのことも考えると、安易にできることではないため、今もまだ、踏み切れずにいます。