肉がある。
厚めの肉だ。栃木の牛肉だ。
まだまだガキの頃の誕生日、
親父が肉を焼いてくれました。
誕生日当日は一人。
俺は肉屋で肉を買っていた。
いつものように、肉は常温に戻し、焼き頃を待つ。
折角の誕生日だ。肉だけでは寂しい。
常備していたじゃがいもを適当に切り、揚げ焼きにして、
軽めの塩とガラムマサラをまぶしたものと、
人参を適当に切って、白ワインと蜂蜜、
砂糖で甘くグラッセにしたものを付け合わせに。
クレソンは忘れた。でも、いいよね。
いよいよ肉を焼く。
片面にだけ塩と挽きたての黒胡椒。
強火でカリッと表面を焼き、裏面へ。
軽く蓋をして蒸した状態にし、音を聞きながら
焼加減を見極め、ふたを外して軽く赤ワインを振る。
焼きすぎず、ミディアムレアを目指し、辿り着いたのは
こんな一皿だった。
肉汁が落ち着いたところで、ナイフを入れ、
一口、口に運ぶ。
1つ年齢を重ね、1枚の肉に想いを馳せる。
自分の廻りのいろいろなものに感謝をしつつ、
肉欲に浸るというよりも、噛み締めるように、
ひとときを過ごしていました。
肉を焼くという事、人生を見るという事。