カテーテル治療医 | 救急医の戯言

救急医の戯言

元呼吸器内科医であった救命医が、患者として2回手術を受けたこと、最近の医療について思うことを思いつくまま書いてみました。

 私が以前大学に居た頃、一人の循環器専門の先輩が居た。冠動脈カテーテルの専門で、当時実用化され始めていたカテーテル治療に熱心に取り組んでいた。患者さんの名前、年齢を言ってもその患者さんのプロフィールを直ちに想起することができなかったが、冠動脈造影の画像をみると、年齢、性別、病歴などがスラスラと出てくるようなまさにカテーテルおたくだった。なので、当時東京大学から派遣されていた准教授からは、カテーテルが循環器診療の全てではないのだから、もっと大局的に物事を見ないと、とよくたしなめられていた。私の目から見ると、その准教授も相当偏った人物ではあったが(笑)。

 その後、彼は県内ではとても僻地ではあるが、思う存分カテーテル治療ができるブティック的な病院に就職し暫く腕を振るっていたが、その後開業し、今はごく普通の内科医として活躍していると聞く。

 

 

 今、僕の職場は脳血管領域のカテーテル治療(脳梗塞における血栓吸引療法)に力を入れている。その技術に関しての若いスペシャリストが腕を振るっている。脳梗塞疑いの患者さんが搬送されてくると、救急隊が直接CT室に運び、来院2分以内にCTが撮影されるが、CT室でパラパラ漫画のようにとりあえず出てくる画像を一瞥して、「ああ、ここに(血栓が)あるね」と言ったかと思うと、あっという間にカテーテル治療の準備を始めている。

 結果、その患者さんの機能的予後がどの程度良くなったのかは、わからないが、このプロセスは僕の目からは正直わからない世界だ。いまのところは正直凄いと思っている。