ちょっとした自慢話 | 救急医の戯言

救急医の戯言

元呼吸器内科医であった救命医が、患者として2回手術を受けたこと、最近の医療について思うことを思いつくまま書いてみました。

 80歳ぐらいの女性が、このところ連日のように救急外来を訪れている。最初は、胸が痛い(心電図異常は全くキャッチされていない)ことを理由に診療所から狭心症の疑いと紹介されたのがきっかけ。循環器科にコンサルトされて、唯一ニトロを舐めたら症状が軽快したことから、冠状動脈の精査をしてもいいかな?と循環器科に継続受診の予約は入っている。

 

昨日は、動悸と頭痛での受診だった。今回は研修医の先生が担当となった。

この日は、微熱もある。少し前に受診した日の血液データを見たら、CRPがちょっとだけ高かったがスルーされていた。脈はそれほど早くないし、余り切迫感がない。

ともあれ頭痛と微熱は何か関係がありそう。

研修医くんに、赤沈(赤血球沈降速度)もはかってごらん、とアドバイスした。

 

普通赤沈というのは1時間に数ミリが正常。100ミリもあると数十ミリは慢性炎症でよく見る数値。100ミリ以上だとけっこう問題。

 

案の定、CRPは2.5と大した上昇ではないのに、赤沈は100ミリ以上だった。

 

こういう時は、宝物を掘り当てたような気分になる。この人は90%以上の確率で、側頭動脈炎ないしはリウマチ性多発筋痛症という自己免疫性の血管炎だ、と思っている。

 

救急疾患ではないのでおよそ緊急性はないが、長年いろいろな患者さんを診ていないと直感的にはたどり着かない診断。

 

平日になったら内科に紹介することにした。多分ステロイド治療が始まるだろう。

 

 地味な急患ではあるが、救急医療をやっていて劇的救命をするよりこういう場面のほうが達成感が高いこと、研修医君はわかってもらえるだろうか?