ある老人ホームの入居者さん、Tさんはいつも介護士さんを怒鳴りつけていた。
元社長さんなだけに、周りの人たちを下に見る本質があるようだった。
私も最初は毛嫌いされた。
何も知らない何もできない若僧ぐらいにしか思われなかった。
悔しかった…
でもその人に近づきたいと思った。その人のことをもっと知りたいと思った。
その人と分かり合いたいと思った。
たとえ生きてきた時代や人生観が違っていても。
何度も接して介助してるうちに、少しずつTさんは穏やかになっていた。
ほんとは寂しく、人と接していたいTさんの感情がにじみ出ていた。
ある日、Tさんは自身の若い時代の話をされた。
早慶の教授を上回る講師であったこと、よく見たら部屋はいくつかの清々しい賞が飾られていた。
東京駅を建設した辰野金吾さんの話や昔の数学は縦書きであり、今の横書きに至るまで深い物語があったことなど。
学校では教えてくれないようなことや貴重な話を聞かせていただいた。
その日に退勤する前にTさんの食事介助と排泄介助をした。
Tさんは最後にニコッとしながら言った…
「よく働いてくれたな」って。
初めて心から通じ合えた気がして、嬉しかった。
改めて思えることがある、、
どんなに苦しいときでも、闇の海の中でも、、
求め続ける限り、希望の光がなくなることはない。
そう信じている。
どんな時代になっても、、笑顔が絶えないような未来が広がりますように☆彡