2025年春──旧国鉄時代の生き残り、「キハ52」がついにいすみ鉄道から引退。 鉄道ファンにとっては、名優の引退公演を見届けるようなものだ。しかも、昭和カラーで登場した最後のスター。惜しまないわけがない。
でもこの引退、ただの“懐かし列車グッバイセレモニー”では終わらない。背後には、なかなかシビれるテーマが見え隠れしているのだ。
クリーム+朱色──視認性MAXの昭和テクノロジー
あのクリームと朱色のツートン、いわば当時の「高性能セーフティーカラー」だった。
鉄道が山奥を走るなら、遠くからでも「あ、来てる!」と分かる方がいい。遮断機なし、警報もナシ、草ボーボーの踏切でも目立つ色。それが朱色の意味だった。要は、昭和の安全対策ってけっこうロジカルだったのよ。
そして何より、あの色、いかにも「国鉄してる」って感じがする。無骨で、ちょっと地味。でも、頼れるやつ。
で、なんで今は使われないの?
それはね、「お金とセンスの話」になってくるんかと。
現代の鉄道会社はすべて民間企業。つまり、“カッコよく儲けないといけない”という試練を抱えている。インスタで映える車体、グッズが売れる車両デザイン、観光地とコラボしやすいラッピング……これらはすべて、生き残り戦略。
正直言って、クリームと朱色じゃポストカードも売れない。 いや、売れるかもしれないけど、ターゲットが渋すぎる。
だから、今は視認性よりも“指名される車両”が求められてる。経済性重視?もちろん。でも、どの企業もそうでしょ?
「命より経済を優先するのは悪」──ほんとにそう?
ほら、ここからが今日の本題。
「お金より命を大事にしろ!」って、言いたくなる気持ちも分かる。でもちょっと待って。お金がなきゃ、安全すら成り立たないのが現実。
検査も整備も人件費もぜんぶタダじゃない。 そもそも鉄道会社が潰れたら、安全もへったくれもない。
だからこそ、命を守るために、まずは会社が利益を出せる構造を守る。 そう考えると、ちょっと哲学的になってくるけど…… 経済を優先するって、じつは“命を守るための回り道”なのかもしれない。
決して命を軽んじてるわけじゃない。むしろ、“命を守るために先に稼がせて”って話。
最後に──旧塗装の消滅は、「自分の命は自分で守れ」という静かなメッセージ
視認性カラーが静かに姿を消す。それは、単なるデザイン変更じゃなく、時代の価値観の変化だと思う。
「誰かに守られる安全」から、「自分で考えて守る安全」へ。
……うーん、なんか急に自助論っぽくなってきた? でもまあ、それも時代ってことで。
旧塗装が去るというのは、つまりこういうことなんだろう。
──“自分の命は自分で守れ”。それが、あの色が最後に伝えた静かなメッセージ。そんなふうに、ちょっとカッコつけて受け止めてみようじゃないか。