皆さま、ご機嫌よう。
本日は、我らがテツ心をくすぐる、ほほえましいニュースからスタートです。
2025年5月31日、JR東日本・水戸支社がまたもや粋な計らいを見せてくれます。
あの「E501系K704編成」を使った乗務員のお仕事体験イベントが開催されるとのこと!
場所は勝田駅構内。参加者は制服着用で点呼から体験できるという、なかなかの本気度。
リアルな運転士気分を味わえる貴重なイベント…と言いたいところですが、筆者は財布と相談の結果、いつものように「高いからいかないけどw」で片付けさせていただきます(笑)
とはいえ、このイベントが取り上げられた瞬間に、僕の鉄脳にある一つの記憶がよみがえったのです。
そう、それは——E501系という、JR東の「迷い」が記録として残された車両の物語。
■ 常磐線という、色のルール
E501系の物語を語るには、まずは常磐線の“お約束”から振り返らねばなりません。
常磐線といえば、茨城から東京へ、そして東京から茨城へと人々を運ぶ大動脈。
しかしそこには、「色」による暗黙のルールが存在します。
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青帯車両(中距離電車)
→ 交直流対応の優等生。東京〜茨城以北までのフル区間を悠然と走る。 -
緑帯車両(快速)
→ 直流専用。取手でピタッと折り返す短距離ランナー。
そう、東京〜茨城間を貫くには、交直両対応である必要があるのです。
なぜって? 茨城には直流を拒む“交流区間”という電気の壁があるから。
つまり、青は全区間走れる、緑は東京寄りだけ。
この色分けは、常磐線利用者にとってのリテラシー。「色で行き先を判断する」という習慣が、自然と身につくのです。
■ その常識を、E501系はブチ壊した
そして、1995年。JR東は、ちょっとだけ未来を見ました。
「ねぇ、緑色なのに、全区間走れる車両を作ったらどうなるかな?」
・・・こうして誕生したのが、E501系。
一見すると普通の緑快速。でもその心臓部には、交直流対応という青並みの高機能。
しかも音は209系ライクなバリバリサウンド、内装もなんとなく新しさが漂い、「これは…常磐線の未来か!?」と一部ファンは胸を熱くしたものです。
しかし、現実はそんなに甘くない。
■ ギャップに苦しんだ“迷える戦士”
色は緑、でも性能は青。
これはまるで、サラリーマンのスーツ姿に隠された元バンドマンの魂。
その見た目と性能のギャップに、多くの人が混乱しました。
駅の案内でも「快速」なのか「普通」なのかはっきりせず、沿線住民は戸惑い、案内放送も二転三転。まさにJRの“アイデンティティ迷子”状態。
結局、常磐線の緑帯=直流専用、という認識を崩せないまま、E501系は次第にローカル寄りの運用に追いやられていきます。
今では水戸以北で地味に活躍中。静かに、でも確かに、存在感を放ち続けています。
■ でも、僕はE501系を推したい
確かに、E501系は「成功」とは言い難いかもしれません。
でもね、僕はこういう車両にこそ、拍手を送りたい。
それは、E501系が挑戦の記録だから。
「もし緑で全部まかなえたら?」という、鉄道会社の試行錯誤が詰まった1本の電車。
その迷いは、決して失敗ではない。
それは未来へのプロトタイプだったんだと、僕は信じています。
■ そして今、再び脚光を浴びる
今回の「乗務員体験イベント」で、E501系はふたたび表舞台に登場します。
K704編成、しかも方向幕付き。
もうこれは、“わかってる人”に向けた最高のサービスです。
思えばこの車両、青春期の実験的な思想が詰まりすぎてて、ある意味ものすごく人間味があります。
鉄道という無機質な世界に、「人の迷いや夢」がにじみ出ている。
それをまっすぐ走り続けている。……そんなE501系が、僕は好きです。
■ 最後に:E501系よ、君の迷いは美しい。
正解が何かわからないまま、走り続けた電車。
でも、走ったことで、たしかに道を作った。
E501系は、僕たちに問いかけてくるのです。
「迷ったって、いいじゃないか。進もうとしてるなら、それで。」
ありがとう、E501系。
今日もどこかで、変電所を超えていく君の姿を想像しながら、僕は次の列車に乗ります。
🛤「迷いの記録」E501系に、栄光あれ。