Nゲージを集め出すと、この”業界”の特異さに気づくことがあります。
■ 販売店
まず、Nゲージですが、「普通の店」には売っていません。だいたいが、模型やNゲージ専門店で購入することになります。あとはネットね。
恐らく理由は、「取り扱いが難しい」のと「アフターフォローも難しい」のと、「買っていくのがコアなお客さんばかりなので、その対応がまたレベルを要する」のと、「高額なので、在庫するだけでもリスクがある」のと、まあいろいろでしょう。要するに、普通のおもちゃとは取り扱い方法が根本的に異なる。
同じ模型でも、ラジコンとかプラモデルとかはトイザラスとかイオンでも売ってるのにね。Nゲージには踏み込まないようです。トイザラスはちょっと昔、最寄りの店で扱っていたんですけど、早々にやめてしまいました。まあやめて正解だろうな。店の陳列をみたけど、ありゃダメだw
Nゲージは車輛を連結して展示するので、ひな壇展示が一般的なんですが、手入れされていないのか展示されている電車が脱線してるわ倒れていたりとひどいものでした。専門店と違って、Nゲージ専属の店員がいないのが原因でしょう。とにかく売るにも手がかかる商品なんだなと分かります。人が歩いてきた振動で、簡単に倒れますからね。
■ 商品特性
Nゲージは、他のおもちゃや模型と比べ、ハンパなく壊れやすいです。
メーカーも、「耐久性を犠牲にしてリアリティを追求している」と公言しています。なのでちっちゃいお子様には当然NG。ついでにペットにもNG。Nゲージの部品は簡単に外れてしかも細かいですからね。下手に飲み込んだりしたら大変です。
そして、この事実は、Nゲージを購入してしまった当日から、どんな素人でも自己責任で認識しなければいけません。
極論を言うと、この製品にPL法、すなわち製造物責任法はありえない。法的にはありえるけど、実際にはありえない笑。
Nゲージはだいたい、6,7両位のセットで購入することになります。お値段は1~3万円位。高いです。
なので、購入するときは店員さんが箱を開いて、中の車輛を全て手に取らせてくれます。
ここでちゃんとチェックして、もし壊れていたりしたらこの時点で申告しなければいけません。
動力車の走行試験もこのときに行います。ちゃんと走る車両であることを、店員さんと購入者で確認しあって初めて売買成立。まどろっこしいです。
で、購入後店から出た瞬間、それ以後に購入した車輛におきたトラブルは全部自己責任。
私の場合、買って3日で車輛のパンタグラフが1つ壊れてしまい、至急部品の手配をお願いしました。もちろん自腹です。それでも何の不満もありません。むしろ、部品が手に入ったことを店員さんとメーカーさんに感謝する位です。次のテーマは「在庫」
■ 在庫
Nゲージは、相場制はさすがに取っていないものの、「完全」に生産者が流通を仕切っています。こういうと昔の家電のように大メーカーが販売代理店に圧力を・・・などと考えてしまうのが大人のウラ事情を知ってしまった人達の想像ポイントですが、そういう意味ではないですよ。
まあ市場規模が小さいというものもあって、バンバカ手当たり次第に全製品を欠品無くばらまいているというわけではなく、本当にメーカーさんも自分たちの身の丈にあった生産能力内で製品を作ってるんですね。これは、鉄道車両だけでなく、先述の細かな部品もそうです。
なので、「あ、部品が壊れた」という事態が起きても、じゃあ取り寄せしたら確実に交換部品が手に入るとは限らないんですね。
メーカーの生産計画はおよそ数カ月先位まではホームページに記載されます。それを見て、自分のほしい車輛や部品が早く出ないかな~と、首を長くする以外、我々はやることがないのです。涙。
私なんかは「特急はくたか」(※新幹線じゃないよ、新幹線開通前まで北陸を走っていたあの白くてカッコいい特急電車ね)が欲しいんですが、時期を逃したのか全く製造される糸口が見えません。
形がそっくりなサンダーバード号は近くの店に在庫がありますが、それを買ったらやっぱり負けだと。そう、この業界は欠品時の代替効果はゼロ。店から見たら欠品=失注です。色が違うだけでもダメなんです。2位じゃダメなんです(?)
■ お客様
この業界のお客様は”濃い”です。
以前、店員さんに、ある車両の部品の在庫があるか聞きに行きました。415系のクーラー。中古で買ったのですが部品が欠けていたのを直したかったのが動機ですが、415は長らく製造されてません(涙)。あるかどうか、正直不安でした。
店員さんが「あったかなー?」と言いながら店内を探していると、近くで話を聞いていたお客さんが「ほれ、そこにあるよ、一番下の段」と指をさして教えてくれます。すげー、店員さんですら知らないことまで把握してる!なんだよ神はココに居たか!?
新人の店員さんが来ると、Nゲージの取り扱い方法を親切に教えたりもします。新人を育てるのも濃いお客さんの役割だったりします。
そういった意味も含めて、店員さんとお客さんの距離も近い。こんなの、Nゲージを売る専門店だからできること。他の商品売るついでにNゲージも売るみたいな腰の座らない店にはまず無理です。店員が、Nゲージの取り扱い方法までいちいちちまちまと覚えるわけがない!
■ この業界の特有
やっぱりなんというか、メーカー、販売店そしてお客さんと、3方含めてまるっと変わってます。
「効率性重視」とか、「マーチャンダイジングの重要性」とか、そういう今のガツガツしたビジネスとちょっとかけ離れた世界を味わえるのも、Nゲージのちょっとした魅力かもしれませんね。