https://booklog.jp/item/1/4062884615

 

橋本氏は社会学者なので、氏の講義を聞いているような内容です。

 

データや意識調査結果を分析して得たのは、「現代日本社会は、すでに高度成長後に創出された中流意識の強い一億総中流社会などではなく、新・階級社会」であり、その主な原因は、非正規労働者の増加とそれを支える政策にある、と結論づけているようです。


格差や階級という言葉はいい響きではありません。多くの人々は気づいているのに、本音と建前の乖離が極まれり、と言ったところでしょうか。


経済格差拡大を抑え、機会の平等を実現させるのは政治の役割であり、人々のパブリック精神のはずです。


そのためにはどうすればいいか。平成に変わる時代の節目において、日本に生きる人々すべてがそれぞれの分野で活躍する環境を整えることが社会の発展のために必要でありましょう。


現実を知り、健全な社会に至るまで、今の課題多き資本主義に変わるポスト資本主義が何かを見届けることが私の課題でもあります。



 

 

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読書メモ↓

 

・現代日本で格差拡大が始まったのは1980年前後。格差拡大は40年近く続いている。いえ格差は放置されてきたといってもいい

 

・貧困率が上昇し、膨大な貧困層が形成された。1985年1400万人12%が2012年は2050万人16.1%に

 

・貧困率の上昇は非正規労働者が増えたことによる部分が大きい

 

・生涯未婚率2035年には男性29%女性19.2%に

 

・自民党の支持基盤は明らかに富裕層への軸足を移している。自民党は富裕層の政党としての性格を強めている

 

・現代の日本社会は「格差社会」というより明らかに「階級社会」であり、その内容は新しい階級社会である

 

・日本は一億総中流の社会と言われた時代があった。それは1970年代の後半から30年近くにわたってほとんどの日本人の常識だった

 

・一億総中流論はナショナリスティックな言説に基礎を与え続けてきた

 

・格差拡大容認派は日本人の6割近く

 

・19世紀に入ると、貴族が社会の頂点に位置するようになった一方で、新しい勢力として近代的な産業を組織するブルジョワジー(資本家階級)が勃興して貴族と平民の間の中間階級を構成するようになった

 

・資本主義とは、資本家階級と労働者階級の労働力と賃金を交換する経済構造。最大の特徴は生産手段が一部の人々によって集中的に所有されているところにあり、労働力が商品として金銭で売買されている

 

・マルクス経済学では資本家が生産手段を独占しているため労働者は余剰価値を搾取されている。これが経済的な格差が生じる基本的なメカニズム

 

・現代日本社会の階級構造は、4階級図式(平成24年・就業構造基本調査)

資本家階級(経営者・役員)4.1%254万人

新中間階級(被雇用の管理職・専門職・上級事務職)20.6%1285万人

労働者階級(被雇用の事務職・販売職・サービス職・マニュアル労働者・非正規労働者)62.5%3905万人

(うち 正規労働者35.1%2192万人 パート主婦12.6%784万人 非正規労働者 14.9%928万人)

旧中間階級(自営業者・家族従業者)12.9%806万人

合計6251万人

だが、非正規労働者は「アンダークラス」と労働者から分離し5階級構造になっているといってよい。これが日本の階級社会である

 

・資本家階級の個人平均年収は604万円 従業員30人以上の個人年収は861万円

 

・新中間階級は教育水準が高く、情報機器を使いこなし、収入もかなり多く、豊かな生活をする人々。政治的には保守的ではない

 

・他の4階級との間の決定的な格差の下で苦しみ続けているのがアンダークラス

 

・学歴の違いを媒体として、格差が世代から世代へと継承されている可能性は高い

 

・資本家階級出身者は資本家階級になりやすい

 

・新中間階級出身者の資本家階級比率が減少し続けてきたこと

 

・女性と階級社会。彼女たちの人生の多くは、本人の所属階級、配偶関係、夫の所属階級というわずかな要因によって決定されている

 

・格差が拡大し、貧困層が増えている現実を肌で感じ問題だと考えているのはアンダークラスでありパート主婦。資本家階級は貧困層が増えているという現実を認めない傾向がある

 

・自己責任論をもっとも強く支持するのは資本家階級であり、次いで旧中間階級

 

・戦後の平和運動や左翼運動は平等への要求と平和への要求が常に結びついてきた。右派は平等への要求を悪平等、効率の無視などとして否定し、軍備の拡張を求めてきた。左派は格差是正・平和主義・多文化主義、右派は格差容認・軍備重視・排外主義。こうした構図はかなり崩壊してきている(格差是正の要求と排外主義がアンダークラスにだけ強く結びついている)

 

・資本家、新中間、正規労働者はアンダークラスに比べて所得再分配を支持しない傾向があるパート主婦、旧中間階級、専業主婦、無職の人々は所得再分配をアンダークラス同様支持する傾向がある

 

・自己責任論は貧困を生みやすい社会の仕組みを作り出し、放置してきた人々を免罪するというもの

 

・格差を縮小するための諸政策

①賃金格差の縮小 均等待遇の実現 最低賃金の引き上げ 労働時間短縮とワークシェアリング

②所得の再分配 累進課税の強化 ジニ係数を見ると日本の税制は所得再分配の機能を果たしていない 資産税の導入 生活保護の実効性の確保 ベーシックインカム導入で多くの社会保障制度が簡素化される

③所得格差を生む原因の解消 相続税率の引き上げ 教育機会の平等の確保 大学教育税を奨学金に

 

・ピケティは世界的な資本税を提案している。資産税はヨーロッパの多くの国で導入されてきたが、富裕層が海外に逃げる資産の国外流出への批判がありアイルランド・オランダ・スウェーデンなどはいったん導入した富裕税を廃止している

 

・格差縮小の手段として社会の構造そのものを変える、非階級社会を目指すには

 

・格差社会を克服する主体は政治意識の高い新中間階級のはずだが、所得再分配に否定的な傾向

 

・2009年総選挙で民主党に政権交代を実現させたのは主に新中間階級だった

 

・新中間階級の政治意識は①穏健保守②自民支持のコアグループ③リベラル派 に分かれる

 

・リベラル派は格差解消の立場から自民党以外の政党を支持したくても現実には支持しうる政党がない現状

 

・自民党は一強大勢に安住して排外主義と軍備重視の傾向を強めるなら自民党はその支持基盤を惰弱なものにしている