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2018年版間違いだらけのクルマ選び
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【平成の末に自動車のことを考える】
http://booklog.jp/item/1/4794223110
「間違いだらけのクルマ選び」のもともとの著者は、ハードウェアはよくても乗り味だとか日本車の理念のあり方に辛口批評をしてきた故徳大二有恒氏でした。氏の志を引き継いだ自動車評論家島下氏が続けている年度版のクルマ選び。このシリーズは、そう言いながら技術動向にはそう詳しく触れておらず、ライフスタイルや理念や文化論、車としてのタッチ良さなどを中心に私的な論評を各車に与えているところが特徴です。
クルマ好きとして学生時代から地道に続けているのは、新車やその技術動向のチェックです。仕事がら、自動車リサイクル・また自動車部品製造工場との取引の関係から知識として必要なこともあり、時代の変遷とともに自動車のトレンドをじっくり見てきました。
平成のはじめ、バブルの頃、日本車はハードウェアから世界に大きなインパクトを与えたクルマを世に出しました。「レクサスLS(セルシオ)」「ロードスター」「GTR」これにSUVの概念を創出した「ハリアー(レクサスRX)」を加えて当時の日本車の勢いと個性はすごかった印象があります。そして、プリウスをはじめハイブリッド車の隆盛の時代。
平成が終わり、新しい時代を心情的ではあるが迎えるとき、自動車の未来はどうなのでしょう?EVシフト・自動運転・エコノミーシェアリング・AIやIoTやブロックチェーン技術で、大きく変わることは自動運転する排ガスを出さないクリーンなクルマを移動手段として共有する可能性も出てきたことで、自動車産業の構造そのものからライフスタイルからタクシー業界まで大きく変わっていくのではないでしょうか。その方向が具体的にどの方向になるのかを注目しています。
2018年版では、「EVシフト」の実態は世界の先進国主要自動車メーカーが一定量を販売する世界最大のマーケット、中国の環境規制にあることが注目点でした。
クルマが所有や高価格耐久消費財という資本主義の功罪(罪の部分とは、環境問題や交通事故、経済格差の象徴として)の中で、またGDPの割合も大きく税の塊でもあるクルマの所有を簡単に減ってもよいという方向に国も慎重に施策を進めるとは思いますが、機械でありながら操縦やスピードの快感は得難いものであることもまた人間の勝手な業なのでしょう。
クルマの功罪を考えながら、また愛する人や家族とともに人生を歩んだ生き物としてのクルマも大事にできる世の中であって欲しいものです。
読書メモ↓
・クルマを買い、乗るのはユーザー
・「EVシフト」ヨーロッパでは次世代パワートレインはEVという強固なトレンドが形成されつつあったが、日本でも2017年秋くらいから急激にその嵐が吹き荒れ始めた。引き金は欧州各国で打ち出された将来の内燃エンジン禁止という施策
・「EVシフト」は実は「中国シフト」 VWの半分は中国向け
・イギリス・フランス 2040年までにガソリン・ディーゼル車の販売を禁止すると発表
・中国2019年からのNEV規制実施
・インド2030年からすべての新車をEVにする方針
・VW2025年に300万台のEVを販売50車種のEVを開発
・トヨタ・マツダEVを共同開発
・ルノー・日産・三菱2022年に新車の3割を電動車とする方針
・既存自動車メーカーはEVだけに傾倒していくことにはならない。様々なパワートレインが並立しながら徐々に電動化の割合が強まる方向へ動いていくのではないか
・「このクルマならどんな幸せがもたらされるか」を目指せ。日本のコンパクトカーは飛躍的に完成度を上げてきたが味わいの部分は希薄で機能性や道具という領域をはみ出すには至っていない
・メルセデスは、熟成されたシャーシが実現した絶品の乗り心地。サスペンションの動きは、オイルの中をピストンが上下する感じが伝わるような濃密な感触。包み込むようなまろやかな味わい
・自動運転技術はほぼ確立されている。自動運転で社会をどう変えたいかヴィジョンが重要
・今期のベスト3 (心に残った)
シビック 階層分化で中流が消えつつある世の中でクラスレスな匂いが良い
シトロエンC3 フランス人のお金をかけなくても日常をちょっと豊かなものにするイメージに合う
プリウスPHV 航続距離の長さ、エネルギーマネジメントの巧みさ、疲れない乗り味、ハードウェアとのレベルは非常に高い
・MIRAI 水素ステーションの整備は進んでおらず、次世代パワートレインの主流はFCVではなくEVだと騒がれている。納車待ちで発信力が必要
・実用品であるセダンやSUVとは違ったリアルなライフスタイル観がクーペを売る側には求められる
・レクサスLCは場の空気を一変させる雰囲気のある稀有なクルマ