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衆議院解散に合わせて。

 

正直、「権力に迎合している」と田原氏を「変節」として長年批判してきた佐高氏のこともあり、この二人が対談本を出すのは意外でした。

 

田原氏は戦争の実体験や戦後の国や学校の先生が言うことが180度変わったことで権力を信用してはいけない、という信念をお持ちです。また海部・宮沢・橋本の三首相を失脚させたという自覚があり、権力の弱さやマスコミの影響力の強さを自覚しており、権力側の人間と親しく対談することが佐高氏にとっては我慢ならなかったはずです。

 

正義と道徳と理想を説き、それに反する人を敵として批判してきた佐高。ジャーナリストとして権力の悪を知りながらも幅広く興味を持ち立場の違う人とも会って議論する田原。どちらも教養人のふたりのスタンスの違いはこの対談で明確になっています。

 

二人のスタンスの違いはあるものの、こういう対談で戦後日本の政治状況が見えるきっかけとなる本かも知れません。


安倍首相は、自らに批判的だった田原氏や森田実氏らと会食しています。そこでの提案が解散に繋がったのかどうか。


イエスマンだけでもいけませんし、短絡的な批判や本質とはかけ離れたスキャンダル(モリカケ問題や暴言不倫問題を直接指すわけではない)の中でじっくり物事を見る眼が必要な時期でしょう。

 

 

 

 

読書メモ↓(S佐高 T田原)

 

S小池百合子の都民ファーストの圧勝に危惧を覚える

T自民党から安倍一強を揺るがす風が起こる

S安倍というわかりやすいオスのタカから、小池という狡賢いメスのタカへ、という流れには警戒しなければならない

S民主党政権のひどさが安倍政権につながり、安倍政権のトンデモぶりが小池フィーバーを生むという危機感

T天皇退位問題について、天皇のお気持ちと今の政府は相反している

T個人ではなく制度について言うと、戦後相当長い間、天皇制はなくなったほうがいいと思っていた

S民主主義には王はいらないというシンプルな原則ですね?(田原に)

T昭和天皇は吉田茂に、民主主義と天皇制は矛盾するのではないか、と問うた

S現天皇の歴史認識は安倍などよりはるかに真っ当。安倍的、日本会議的、森友学園的な右派あるいはファシズムを撃つことが一番大事

T教育勅語が現代はとんでもない、と自民党議員が大っぴらには言えないのが今の時代

S安倍は岸信介同様、戦争に負けてよかったとは思っていない

Tキッシンジャーはアジアのからの日本への信頼は憲法9条であると言った

T戦争体験者として日本は平和国家であるべきだという立場は絶対変えない

Tドイツの軍隊はNATOとしての集団的自衛権は認められているが個別的自衛権を認めていない。それはヒトラーが個別的自衛権によってヨーロッパを席巻したから

Sドイツは国民投票がない。ナチス台頭を許した国民を信用ならないものとみなす態度がある

S世耕たちの安倍側近は自民党の中で戦後培われてきた保守の平和主義を破壊する一派

T安倍は右ではなく、安倍の応援団(日本会議など)が右。安倍は応援団に見捨てられるのが怖い

T安倍には二つの顔がある。ロマンチスト(憲法改正と戦争のできる国にしたい)の顔とリアリスト(アメリカの言うことを聞かねばならない)の顔。彼は保守ではあるけど右翼ではない。

T成田闘争からみても、マスコミの立場で世論は変わってしまう

T国家は国民を騙すもの。これが原点。偉い奴の言うことは信用できない。新聞もラジオも信用できない。日本が戦争をしてしまったのは、言論の自由がなかったから

T明治になって日本が近代化を進めたとき、ヨーロッパの思想風土はキリスト教。伊藤博文は日本の仏教は葬式宗教であり信仰の対象ではない。キリスト教に代わるものは天皇だという議論に行き着いた。明治憲法では天皇には権限がないことを規定した。明治天皇は日清日露戦争に反対だった

S日本の場合は共同性が家族で止まってしまって、天皇制に直結してしまう

S舛添はマイノリティとの共生感覚を持っていたとは言える

T教育勅語を暗唱した最後の世代であり、教科書を黒塗りされた最後の世代

T原子力発電は日本ではもうダメ。新しく作ることはできない

S福島の事故までは、原発は危ないけれどもやはり原発でいくと思っていた

T放射能による被ばくがどのくらい健康被害をもたらす明確な科学的論拠がない

T佐藤栄作久前福島県知事は東電の無責任さを追求して国策逮捕された
T田原は佐高が嫌うやつが好き(堀江・江副)彼らも冤罪
T田原と佐高の大きな違いは、体制側の人間にも平気で会うか、会わないか
T大東亜戦争の敗戦で日本政府は総括をしなかった。宮沢喜一によると、日本が独立した時、政権党の幹部たちはほとんど公職追放組すなわちA級戦犯の子分。子分が親分の総括などできなかった。日本人は戦後、国民自ら・政治家・天皇の戦争責任を総括できずにきてしまった
T安倍政権は小泉・竹中路線を継承していない。米欧は多くは二大政党制で、保守とリベラルが変わりばんこにやっていた。日本は自民党は保守だと言うけれど経済的にはリベラル(バラマキ)民進党も一緒
S安倍のバラマキは新自由主義のアベノミクスの破たんを取り繕うためのバラマキ
T竹中は本格的な資本主義をやとうとした

Tトランプはグローバリズム時代の終焉を象徴する人物

T田原は海部・宮沢・橋本3首相を失脚させた。権力というのはこんなに弱い面があるのか、と思った。こっちから突っ込むときは対案も用意しなければい意味がないと考えるようになった

T省庁の数が減ってもひとつの省庁が大きくなる。政府や誠治かの目が行き届かなくなる。官僚の謀略によって橋本の行政改革は失敗した

S田原氏のことを、権力者に卑屈だ、無思想だ、と批判したが単純なレッテル貼りの批判だけではなく、認めるところは認めている。政府の審議会の委員にとかはならない

T政府の批判を自由にしたい。51%はアナーキーで49%は憂国

T小泉は言葉の天才

S竹中は派遣労働者の保障をせずに楽して儲けるシステムを作ってしまった

T連合は正社員しか守らない。労働力は流動化したほうがいいが、セーフティネットはしっかり整えておくべき

Tソ連にはまったく言論の自由がなかったし、格差社会の国だった

T自由と平等を保障する社会システムというのはあり得たとしてもせいぜい社会民主主義。実は日本は戦後ずっと社会主義的だったと言えるのではないか

T自由というのは腐敗する自由さえ含む徹底的なもの。なんでも自由に言えないとだめ、日本いは自由に発言できない空気がある

S新自由主義というのは、公的保障や福祉国家的なものを取り払って資本主義の原始的な弱肉強食に戻してしまった

S竹中を批判するのは、日本社会の真の姿、弱者の現実を見ながら政策を実行することがまったくなかった。いまの格差社会を作り出した調本人

Tホリエモンをやっつけた真犯人は検察ではなく、体制側の財界人

S小泉にはオフレコがなかった

S赤字黒字では計ってはいけないものがある。それが公共。ここ30年の日本社会は赤字黒字で計っていくことで公共の部分をどんどん無くしていった

T会社の悪いイメージだけをもち出すのは反体制側がよく使う手口

T会社の経営者が悪い、と言ってしまうのは、佐高がマルクス主義者だから(佐高はマルクス主義者ではないと反論)

T共産党の成功すると悪だ、という考え方はおかしい

S松下電器は思想統制がひどい

T小泉は財政投融資の入口を閉めるために郵政民営化の方針を打ち出した。しかしそのときは、すでに財投の財源はなくなってきていた

S竹中は長谷川慶太郎の系譜

Sアベノミクスは本質的に軍需と同時並行

Sアメリカ人は自らはドルを相対化できない

S経済のことを語るときに経済のことだけを語ってはダメ

S田原氏は対案が必要だと言うが、対案やヴィジョンとか言い始めてからメディアの堕落が始まった。メディアは徹底的に事実に迫って、権力や体制の批判をすればいい

S批判派というのは少数派と重なる。少数派は世の中に異議申し立てをするから必然的に体制の批判をすることになる

S今の天皇がリベラリストとして独特の存在感を発していることは確かだが、そこに過剰な意味を付与することには禁欲的である

T1990年以前の近代史の本はすべて左翼的で日清戦争から侵略戦争だという話だった。これは偏りがあって参考にならないし面白くない

S山本五十六は艶聞があった人だった

S原敬は田中角栄と似ている(ダーティなハト)

T新聞社でも、かつての翼賛報道のように、日本の隠蔽体質や無責任な組織の在り方は変わっていない

S非武装中立が理想。だからこそ主張し続ける人間が必要。理想は抑止力になる。憲法は理想だから大事。それを変えようとするとき、現実はろくでもない方向に向かっていくだから護憲

T戦後、アメリカとソ連が代理戦争をしながら、直接はぶつからなかった。日本が戦争に巻き込まれることもほとんどなかった。そのおかげで経済成長でkちあ。それはアメリカの核兵器があったから

T核兵器が抑止力かは疑問がある。それはテロの問題が出てきたから。テロリストが原爆を盗んだら終わり

T中曽根は戦後的な意味では最後の権力者らしい権力者だった

S中曽根の時代は権力者が市民を相手にせずにすませていた最後の時代

S保守の智恵が好き

T自民党が長持ちした理由はそういう保守の智恵があったから

T佐高という男は正論主義であり、原理主義者

S敵と味方の区別をはっきりとつけているが、田原氏は敵味方の区別があいまいであり「権力の犬」と批判した

T現実を踏まえながら、どのように既存の体制をぶち壊していくか日本を変えていくかということに興味がある。誰であろうととにかく会って話をする

T国家がいちばん面倒な存在。国家というのは基本的に悪いものだ。ないほうがいいが現実にはある。世界中で国家のないところはない。だから国家にこだわる。

T憲法も民主主義もアメリカから与えらえて、日本は民主主義国家として再出発を果たして、国際社会で経済大国としての地位を築いた。しかし歩んできた道が100%正しかったとは言えない。戦後70年経っても日本はアメリカの言いなり。独立国家とは言えない

T若い人間とは価値観がまったく違うから面白い。彼らは経済成長しない日本で、生きがいや幸せとは何だ、と一生懸命考えている

T25年間ダブル不倫していた

T佐高氏は正義や道徳しか興味がない。自分はモラルを持っているが、人のモラルにあれこれ言うつもりはない