- 変貌する自民党の正体 (ベスト新書)/ベストセラーズ
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http://booklog.jp/item/1/4584125147
参議院選挙までは、政治の話題がほとんどになります。書いておかねばならないと思っていますので。
田原総一朗氏の最新刊。
氏のこの本は、戦後政治と自民党史の流れが理解できる内容になっています。
おさらいの意味で分かりやすかった。
特に、安全保障の議論の変遷の歴史的な流れが理解できました。後程メモで触れておりますがこの4つの田原氏の言葉を刻んでおきます。
今年までいろいろ学んできて、日本の政治風土に合うのは、①新自由主義的保守政党 と ②社会民主主義的保守政党 の二大政治勢力が政策を競い合うこと。これは私見です。
残念ながら②が壊滅状態で、しかも①の自民党に反主流派非主流派がいなくなって安倍首相と官邸の意向で自民党が染まっているかに見えること。小選挙区制で自民党の体質が不自由非民主党に変わってしまったと田原氏は嘆いています。
参院選は現在の政治状況を理解してどの方向と選択がいいのかという判断が有権者に問われていますね。投票に行こう。
戦後の日本は平和国家を国是としてきた。戦争の放棄を謳った平和憲法の下で、集団的自衛権を行使しないこと、自衛隊の海外派兵はしないことをふたつの歯止めにしてきた。この国是を取り下げるということは、日本を普通の国にすることそれが安倍首相の狙い
「私はやはり日本は平和国家を国是とするべきだと思う。戦後70年にわたって、せっかく平和国家で売って来たのだから、この看板をこれからも掲げるべきだ。太平洋戦争は、明らかに1928年のパリ不戦条約違反であり、その意味で東京裁判を肯定する。そして、中国や韓国と仲良くなるように努めるべきである。」
日本を普通の国にするのか、それともこれまで通り平和国家のままにするのか、国民の判断が問われている
自由民主党は金権政治・密室政治・強権政治・対米従属といった批判があった。主流派と非反主流派が政策を競い合っていた時代は自由に徹底的に議論する開かれた雰囲気があり、党内に活気があふれていた自由・民主党だった。小選挙区制の制度改革が原因で反非主流派もいなくなり、自由で民主的な空気が失われた今、党是でる憲法改正へと突き進む先にいったいどんな未来があるのか、強い疑問を抱いている
読書メモ↓
・平和憲法の下で、自民党が60年にわたって党是としてきた歯止めがふたつある①自衛隊の海外派兵②集団的自衛権の行使 安倍政権はその歯止めをぶち壊した
・憲法96条の改正は批判が強まるとすぐ断念
・憲法学者の8割が集団的自衛権の行使は憲法違反、7割弱が自衛隊が憲法違反の疑いあり、と表明
・安倍首相はおそらく、祖父の岸信介が成し得なかった憲法改正を実現し、歴史になお残したい、そして日本を普通の国にしようとしている(田原)
・(田原)「私は安倍首相と違う考えを持っている。日本が安全保障をアメリカに頼っていることは従属とは思うが、日本はこれまで通り平和国家として歩むべきだ」「日本は平和国家の看板を下ろさないほうがいい。この看板を掲げていることで、中国や韓国、アジアの国々から信頼される国になることができる。そしてアジアの国々から信頼されることが、アメリカとの外交を進めていくうえでも説得力を持つことになる」
・戦後レジュームとは、GHQのマッカーサー司令官の下でつくられた政治体制。ひとつは日本国憲法であり、もうひとつの柱が極東国際軍事裁判(東京裁判)吉田路線のこと
・歴史修正主義とは東京裁判を認めない考え方のこと
・自民党とは保守もいればリベラルもいる総合デパートのような政党だった。党内は言論の自由があり、民主的な雰囲気があった
・今の自民党は激しい論争が消え、反主流派や非主流派の存在感が全くなくなってしまった
・岸田派は宏池会。池田勇人時代から立ち上げられ、保守本流であり平和憲法を守るハト派であり安倍政権とは体質が異なる
・自民党が変わったのは選挙制度が中選挙区制から小選挙区制に変わったこと。 自民党の執行部が推薦する人物しか立候補できなくなった。小選挙区制になってお金はかからなくなった
・旧民主党の安倍政権との戦い方はお粗末。批判だけで(党内対立もあり)対案を示せなかった
・野党には対抗軸となる明確な政策を打ち出すべき
・1955年の自民党結党の目標は 憲法改正と日米安保の改定
・自民党の歴史は、護憲・経済重視の吉田路線と改憲・安保重視の岸路線の攻防の歴史
・岸内閣が安保改定と心中する格好で倒れたことで、自民党は方針転換をし、吉田路線に進路を戻した。だが、1990年前後に米ソの冷戦が終結し、アメリカはソ連が敵でなくなり、極東を守る必然性が薄れた
・吉田茂の勲章は敗戦時に憲兵隊に逮捕されていたこと
・吉田は、自国防衛をアメリカに守ってもらい、復興と経済発展に全力を投入するため新憲法を歓迎した
・吉田が再軍備をしない理由①米国の圧倒的な軍事力の優位②再軍備を支える国民精神の基盤が失われている③敗戦処理がいまだできていなかった
・朝鮮戦争開戦時、自衛隊の前身である警察予備隊が米側から「提案」された
・(岸)現行の憲法は占領下において、時の占領軍の最高司令官から押し付けられたものであり、国民の自由意思に基づく民族の魂が表現された自分たちの憲法であるべき。祖国の防衛は独立国としての義務でり権利。異国の軍隊を国内に駐屯せしめその力によって独立を維持するのは真の独立国ではない
・岸は満州国を国家社会主義的な統制経済を徹底させた
・岸は48年、児玉誉士夫、笹川良一ら19人のA級戦犯とともに釈放された
・吉田茂が51年に結んだ安保条約は占領政策の延長であり、岸はその改正に取り組んだ
・岸首相によって安保改定されると日本はアメリカの戦争に巻き込まれると思い込み国民の多数が安保改定に反対した
・安保反対闘争の背景は岸内閣の警察官職務執行法改正法案。治安維持法の復活を狙う反動政治のイメージが
・池田首相の所得倍増政策は目標を現実が上回り国民は成長を実感できた
・日韓基本条約締結時(1965)韓国は軍事独裁国家であり、北朝鮮こそが理想的な国家という認識が常識だった
・佐藤首相は「戦争を前提に物事を考えていた時代は終わった」という認識
・沖縄返還にはふたつの密約①非常時に沖縄に核兵器を持ち込むことをアメリカに保証した密約②沖縄返還に関する日本側の裏負担(2億ドル)
・吉田首相以後の歴代首相は石橋湛山を除いて、すべて旧帝大→高級官僚→政治家エリートだった
・田中角栄は法律を勉強し、官僚機構を使いこなせていた
・田中角栄「日本の法律は特異な法律。占領軍が占領目的達成のために作った法律が多かった」GHQは日本の弱体化を民主化という言葉でごまかした
・米国は平和の敵がソ連とワルシャワ条約機構であるとしたので、政策を転換し日本と西ドイツを再軍備させた
・日本弱体化のために作らせた法律を日本強化のために作り変えることになったのが、日本の法律の大特異な点
・田中政権の業績は日中国交正常化と日本列島改造論
・田中、一日生活圏・一日経済圏・一日交通圏
・自民党内の政権抗争は田中角栄と福田赳夫の争い角福戦争、三木降ろし、大平正芳と福田大福戦争と10年近い党内抗争が続いた
・中曽根康弘「政治家は実績であり、内閣は仕事」
・中曽根「戦後政治の総決算」吉田政治からの脱却(一国平和主義)国家像の構築や安全保障は棚上げして、経済重点主義に走って国民に国家意識がなくなった
・竹下登、調整役に徹し自分の意見や本音を口にすることはほとんどなかった
・リクルート事件は自民党に決定的なダメージを与えた戦後最大のスキャンダル
・戦後の日本は1989年以前と以後に大きく二分できる
・湾岸戦争で日本が派兵をせず資金の拠出が世界中から非難され軽蔑されたことが、日本のトラウマになった
・小沢がつくった細川非自民連立政権
・田原のインタビューで首相退陣に追い込まれた海部・宮澤・橋本
・小泉純一郎「ワンフレーズポリティクス」番記者たちにひとつのことしか話さない
・小泉純一郎は田中角栄の党内派閥(平成研)を敵に回して初めて首相の座を獲得した人物
・小泉は亀井静香を味方につけたが、小泉は首相になるや裏切った
・小泉の「構造改革なくして景気回復なし」のフレーズ
・小泉は野党の質問に対して、官僚の書いた文章を読まず、自分の言葉で自分の考えを率直に述べて国会は面白くなった
・宮澤喜一「日本は昭和に入って自衛という名目で何度も侵略戦争を行い、そして惨敗した。のうしたことは二度と起こさないということで、憲法を作り、それを守ってきた。それはまったく正しいことだと確信しています。しかし、9.11のようなことが起こるとは想定していなかった。これは明らかに民主主義社会への挑戦です。だから、敵と目されている勢力に直接の武力行使はしないがそれ以外はできるだけのことはやる。自衛隊も派遣するということです」
・小泉首相批判が吹っ飛ぶ出来事は北朝鮮の平壌に飛び、金正日総書記と会談して拉致生存者を一部帰国させたこと
・小泉はイラク戦争で、アメリカの戦争に巻き込まれないための口実として、平和憲法を使った
・第一次安倍晋三内閣で、安倍首相は、戦後レジュームから脱却して新憲法を制定するためリーダーシップを発揮すると宣言した
・安倍首相は、東京裁判について、A級戦犯が問われた平和に対する罪は事後法であり、罪刑法定主義上問題がある、と発言し東京裁判を是認していない本音を語った
・東京裁判は事後法であり、勝者の断罪であるが、その判決を日本政府はサンフランシスコ講和条約で受諾している
・岸信介が1960年に改定した日米安保条約はアメリカは日本を守るが日本はアメリカを守らない日本にとって有利な片務条約だった。アメリカは日本を守るというよりも西側陣営の極東を守るという位置づけだった
・ベトナム戦争では日本は憲法を盾に派兵を回避した
・冷戦が終わり、ソ連という敵がなくなるとアメリカが極東を守る必然性もなくなり、日本はアメリカから捨てられる恐怖が出てきた。冷戦後の日本の歴代政権はさまざまな形で日米関係の強化に取り組んだ。そこで出てきたのは日米関係強化の集団的自衛権の行使だった
・岡崎久彦が集団的自衛権の行使をさせようと目を付けたのが岸信介の孫であり岸を尊敬していた安倍晋三
・安倍は、自民党結党の柱であった自主憲法制定が後回しになり、経済発展に力が注がれたことによって、戦後の日本では損得が価値判断の重要基準となり、損得を超えた家族や地域、国に対する思いが軽視されるようになったと嘆いている
・民主党政権は開かれた政治を打ち出したが、欠点や矛盾が露呈し国民の期待を裏切り続けた
・アベノミクスは、日本の成長は終わり成長は望めない、とする日本の経済学者の常識に対する挑戦
・小林節氏の憲法96条改正は裏口入学論で、安倍改憲論はトーンダウンし、96条改正は断念した
・内閣法制局は一貫して「集団的自衛権の行使は憲法上、認められない」としてきたが、外務省出身の小松氏を法制局長官に据えたのは、行使を認めさせるためだった。安倍は憲法改正せずに、解釈改憲によって集団的自衛権の行使に踏み切ることを決めた
・乱暴なやり方であったとしても安倍の首相としての手腕はなかなかのもの
・自民党という政党が反主流派や非主流派もなく安倍首相の考えがストレートに通るようになったのは自民党が変貌したものだと捉える
・アメリカは安倍が歴史修正主義者だという疑念を持っていた
・日本のリベラル派からすると、憲法改正や集団的自衛権の行使、東京裁判を否定しての靖国参拝は
いずれもタカ派的行為だが、アメリカにとっては憲法改正や集団的自衛権の行使は日米同盟の強化であって歓迎されるが、東京裁判を否定しての靖国参拝は許しがたい反米行為である
・安倍はアメリカとの信頼関係を大事にする現実主義者か、思想信条を棚上げにできる功利主義者か
・戦後70年の首相談話は、先の大戦への深い反省と心からのお詫びと村山談話がすべて踏襲されている。だが安倍自身の考え方主語が抜け落ちていた
・集団的自衛権行使の新三要件による閣議決定を行った(2014.7)が新三要件では実際に集団的自衛権を行使することは難しい
・自民党は集団的自衛権という名を取ったが公明党に実を取られた格好
・自民公明両党推薦の長谷部教授が集団的自衛権の行使を憲法違反と言い切ったのは大失態だった
・「専守防衛」は英語では翻訳できない造語であり、世界中のどの国の軍人にも理解できない言葉
・2016年になると安倍首相は(集団的自衛権行使と憲法の現状の関係から)憲法改正して9条を改正する、と言い出した
・戦後の日本は平和国家を国是としてきた。戦争の放棄を謳った平和憲法の下で、集団的自衛権を行使しないこと、自衛隊の海外派兵はしないことをふたつの歯止めにしてきた。この国是を取り下げるということは、日本を普通の国にすることそれが安倍首相の狙い
・(田原)「私はやはり日本は平和国家を国是とするべきだと思う。戦後70年にわたって、せっかく平和国家で売って来たのだから、この看板をこれからも掲げるべきだ。太平洋戦争は、明らかに1928年のパリ不戦条約違反であり、その意味で東京裁判を肯定する。そして、中国や韓国と仲良くなるように努めるべきである。」
・アジアから信頼されることで、アメリカはアジアのことはやはり日本に委ねた方がいい、と考えるだろうし、それをアメリカとの交渉権にするべき
・日本を普通の国にするのか、それともこれまで通り平和国家のままにするのか、国民の判断が問われている
・自由民主党は金権政治・密室政治・強権政治・対米従属といった批判があった。主流派と非反主流派が政策を競い合っていた時代は自由に徹底的に議論する開かれた雰囲気があり、党内に活気があふれていた自由・民主党だった。小選挙区制の制度改革が原因で反非主流派もいなくなり、自由で民主的な空気が失われた今、党是でる憲法改正へと突き進む先にいったいどんな未来があるのか、強い疑問を抱いている
・自民党が豹変し、一強多弱で野党がきちんと対応できない。マスメディアが弱体化している