憲法主義 (PHP文庫)/PHP研究所
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http://booklog.jp/item/1/4569764800

5月3日は憲法記念日。

むろん、高校でも大学でも憲法は学んだのだけど、基本を何度か学び直しておかないとと思い、昨年読んだ本。

元AKBの内山さんのような若くて社会的な影響力のあるアイドルがお堅い憲法をわかりやすく書いていることは、18歳選挙が始まり、安倍首相が憲法を改正したい、と宣言している昨今の状況から幅広い世代に憲法のことを考えるきっかけになればいいと思います。

私たち国民が確認しておくべき重要なことは、護憲か改憲かという観念的な対立ばかりの論議ではなくて、そもそもの「立憲主義」とは何かという考え方。


本書で「立憲主義」とは

①憲法の目的は人権を保障すること

②立憲主義とは憲法を政治の根本に据え、憲法によって国家を運営していく主義

③権利を保障するために国家権力を分立する、そうすることによって国家権力を制限するという考え方が立憲主義


この点を踏まえて与党自民党憲法改正草案を読んでみるのもいいでしょう。

http://constitution.jimin.jp/draft/


これを読むと言いたいことはたくさんあるのですが、今日は割愛。


この考え方をもとに、様々な憲法学者・識者の意見を聞いて、自分なりの意見でもって改憲の是非を問う参院選(衆院同日選もむろん有り得る)に一票を投じるべきところです。政民ともに大いに憲法論議をやった方がいいと思います。

内山さんのこの言葉を転記しておきます。


「憲法の価値とは草案の素晴らしさがそれを決めているのではない。その憲法が「その国に根づいているか」、「安定しているか」、「運用されてきたか」ということが、その憲法の価値を定めているのだ。そういった観点から見て、日本国憲法は素晴らしい憲法であると私は思う」




読書メモ↓


・AKB48の内山奈月さんは日本国憲法を暗記


・憲法は最高法規=憲法に反する法律・命令などはその効力を有しない


・権力を行使する人には法律で根拠が与えられている


・国会は唯一の立法機関ー国会しか法律をつくることができない


・法律は衆議院と参議院の両方で賛成多数で可決すれば法律になる


・法律と憲法が矛盾すると負けるのは法律(尊属殺重罰規定は憲法違反となった例)


・日本国憲法は硬性憲法


・大日本帝国憲法も硬性憲法だった


・現在の憲法に共通する特色は、最高法規・硬性憲法・違憲審査権


・権利や人権という考え方はヨーロッパが発明したもの


・human rightsを人権と訳したのは福沢諭吉ら明六社のメンバー


・社会契約論は、国家とか国家権力を正当化する理屈


・国家をconstituteするための文書こそがconstitution憲法である


・憲法の目的は人権を保障すること


・立憲主義とは憲法を政治の根本に据える主義。憲法によって国家を運営していく主義


・権利を保障するために国家権力を分立する、そうすることによって国家権力を制限するという考え方が立憲主義


・人権とは人が生まれながらにして持っている権利。国家より前にある


・憲法の名宛人は国家権力。法律の名宛人は国民及び日本に滞在している外国人


・国家のために国家の名前で動く人たちが国家権力


・憲法を守らなくてはいけないのは国民ではなく国家権力。憲法99条で規定

「天皇又は摂政及び国務大臣、国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。」


・国民は憲法によって守られる存在であって、憲法によって縛られる存在ではない


・新しい人権として、プライバシー権、環境権、自己決定権、知る権利などがある


・国民の三大義務は 子どもに教育を受けさせる義務、勤労の義務、納税の義務


・国民は憲法ではなく、法律によっていろいろな義務が課せられている


・憲法はあくまでも、国家権力を制約することによって国民の権利を守ろうという目的でつくられたもの


・憲法は国家権力を取り締まることに専念してその精度を上げている


・憲法は私たちを縛るものではなく、私たちの人権を守るために国家権力を規制していた


・直接民主制は危険な面も


・間接民主制でいい代表を選ぶのに必要な選挙制度こそ真の憲法


・国民の意思を正確に反映するためいは、純粋な比例代表制がいちばんいい


・不安定な政治も危険


・国会議員が国会議員を選ぶ制度を決めている。これが間接民主制に潜むジレンマ


・民主制にとっていちばん重要なのは、政治的な表現の自由


・民主主義は、最高の政治体制ではないけれども、民主主義よりましなものはない


・間接民主制の根底には、専門的な勉強をし政治家を職業とする人の判断に任せた方が、より賢明な判断をすることができるという考え方がある

・国民は選挙で責任を持った1票を投じる義務がある


・最高裁判所国民審査は最高裁判所の裁判官を罷免することができる機会であり、国民が裁判所を監視できることになっている


・日本の法律は、内閣が提出する法律案と国会議員が提出する法律案がある


・内閣法制局は法律のプロ。各省庁のエリートを選んで法制局に転ずる


・日本はドイツのように「憲法裁判所」を設置する必要があるのではないか。今のシステムでは違憲判決を下すことがなかなかできない(内山)


・日本国憲法が不磨の大典であるかのように、一度も改正されていないのは確か


・憲法は国家権力を縛るものだから、国家権力にとってはもともと邪魔なもの


・日本国憲法のいちばんの課題は9条。戦力不保持を定めた9条2項が問題。改憲派の人でも9条1項の戦争放棄を変えようと言っている人はほとんどいない


・吉田茂首相は「近年の戦争は多く自衛権の名において戦われた」と答弁したが、その後、自衛戦争は禁止されず、侵略戦争が禁止されており、2項で戦力不保持とされているから結果として日本は一切戦争ができない、と説明した


・侵略戦争を放棄しただけで、自衛のための戦争は放棄していない、というのが日本政府のその後の考え方


・9条の芦田修正9条2項に 「前項の目的を達するため」を入れた。限定放棄説+限定不保持説=侵略戦争の放棄、限定放棄だとして2項はそのための戦力不保持すなわち、侵略戦争の手段となる戦力だけを不保持とした、ということになる


・実は日本政府は日本政府は 限定放棄説+全面不保持説 をとっている


・日本政府の「戦力」とは「自衛のための必要最小限度の実力を超えるもの」


・憲法の解釈は昔からの解釈を維持する。その意味で保守的でなければならない


・集団的自衛権とは、自分の国が責められていなくても、他国のために反撃していいというもの


・安倍首相は集団的自衛権を認めたと言っているが、それは同盟国アメリカのため


・日本が太平洋戦争に突入したのは、アメリカやイギリスに経済封鎖されて石油が輸入できなくなった自衛のためでもあった。現代、どこまで自衛とするかは、いちばん明確な「自国が直接攻撃されたとき」に限定しておかないと危ない


・集団的自衛権の是非、9条の解釈はとても重要な問題


・集団的自衛権を認めるのなら憲法改正によるべき


・安倍首相は「日本が集団的自衛権を持ってアメリカを助けられるようになると、アメリカに対して対等のものが言えるようになる」と言っている。日本の保守思想のなかには戦争に負けてアメリカに憲法を押し付けれた被害者意識がずっとある


・日本国憲法が占領軍に押し付けられた憲法であることは、歴史を学んだ人であれば誰もが知っていること


・日本の憲法はアメリカが日本の国家権力に押し付けたもの


・戦後憲法改正が争点となった選挙では国民が2/3の多数を改憲派に与えなかった


・日本国憲法は完璧ではないが、それで70年やってきた


・憲法は国家権力を縛るものだから、国民の権利を増やしたいときはそもそも憲法は邪魔にならない。逆に国民の義務を増やしたいときは法律をつくればいい。


・憲法の価値とは草案の素晴らしさがそれを決めているのではなく、その憲法がその国に根づいて安定して運用されているかがその国の憲法の価値を定めており、その点で日本国憲法は素晴らしい憲法であると私は思う(内山)


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・憲法は守らなければならない価値を守る保守性と、時代の流れに合わせてその意味を変えていく柔軟性とをあわせ持っている(内山)