- 金融政策の死 ―金利で見る世界と日本の経済/日本経済新聞出版社
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野口悠紀雄氏は、元大蔵官僚、経済学者。専門は日本経済論。ファイナンス理論。野口氏の本は比較的わかりやすいし、本書も極力易しく書かれてはいるのですが、さすがに金融政策は専門的な予備知識が必要だなあってこの本を読んで感じます。
氏は現在の日本の金融緩和政策には批判的であり、日本経済のこれ以上危機に至らしめないための様々な提言をしていますがここでは触れません。
氏は日本の異次元金融緩和策の真の目的は、経済活性化ではなく、国債価格の利回りを抑制して政府の財政赤字を助けることにある、と見抜いています。これは私も同意見。日本経済活性化のためには、製造業ではなく高度な金融やサービス業の成長と規制緩和が不可欠だと説く。
崩壊している年金制度をどうするか、円安とインフレによって10年くらいは国家財政はなんとか持ちこたえることができても、10年後に起こりうるだろう金利、すなわち国債価格の上昇(日本国債バブルの崩壊)の被害を受けるのが日本経済であり、国民の財産である、ことに危機感を覚える本です。なので備えなければいけません。
①実物資産が強い
②優良不動産(国内外)を持つべき
③海外に資産フライトもしくは金融資産を外貨建てで持っておく(米ドルとユーロの将来は?となると人民元もしくは安定した新興国通貨?)
を積極的にやっておく必要があります。
そのためには、不必要な日本の保険会社の保険は解約して別の積立をする必要があるかも?
読書メモ↓
・ 問題意識①金利についてこれまでと異なる状態が生じている②日本において長期金利が異常に低下している
・①インフレ率が高まると消費が増加する、のは誤り ②金融緩和政策が日本経済の好循環を実現した、も誤り ③財政赤字が拡大すれば金利は高騰する、状況は生じていない
・日本の公的年金は金利と経済成長に関する基本的な想定を誤った
・短期的な経済変動に惑わされることなく、日本経済が抱える長期的な課題に対処すること~金利は重要な役割を果たす
・本格的な金融自由化は金融取引に国際化と国債の大量発行によってけん引された
・ROEは投資の目安にはならない
・デフレが予想されると支出が減る、インフレ期待が高まれば支出が増える、というのも誤り
・2010年頃からの€危機を背景として、巨額の資金が日本に流入し、国債に投資された
・日本国債はかなりの上昇が予測されている(10年債のフォワードレートは2%程度であることから)
・金融緩和をすると金利が下がり、国内の投資が増える、とされてきたが、2001年からの日本の量的金ウ緩和で金利は下がったが投資は増えなかった
・金融緩和で利子率が下がると国内の投資が反応するより早く海外金融資産への投資が増えてしまう
・経常収支の変化が為替レートを動かすのではない
・1990年代以降インフレ率が低下したのは80年代まで続いた石油ショックが終わったこと、実質金利が低下したから
・日本では新興国工業化に対応した産業構造の変化が進まなかった上に不良債権の問題も
・先進国が90年代以降インフレから脱却したことによって、先進各国の金融政策が緩和へのバイアスを強めた。フローのインフレは消滅したが、ストックのインフレが起きやすくなった
・日本国内の投資が増えないのは、資本収益率が低下しているから。製造業の場合、新興国の工業化によって日本国内の生産は縮小している。設備投資は海外に
・日銀が国債を大量に買い上げるため、日銀当座預金が増え、マネタリーベースは増える。しかし、そこで止まってしまい、貸出が増える動きが生じずマネーストックが増えない。金融緩和政策は空回りしている
・日本では2000年代初めに金利が低い水準まで落ち込み、伝統的な金融政策では経済を動かせなくなった、量的緩和政策はそのために採用された
・株などの資産価格上昇が消費を増大させる効果は一部であり、実質消費全体はアベノミクスによって伸び率が低下している
・日本の実質所得は減っている
・日本の金利が不自然なのは①金利が財政状況の深刻さを反映していない ②消費者物価上昇率と10年国債利回りを比べると実質金利がマイナス ③国債は銀行が日銀に売却している
・2012年秋以降に円安が進行したのは、ユーロ圏から日本への資金流入は頭打ちになり、海外投資家による円安投機が行われたから。これらは安倍内閣成立前であり、海外要因で円安が進行した
・日本の政策変更の予測が円安投機を引き起こした可能性も
・日本の不動産バブル崩壊(1991)の貸付残高は約832兆円日本名目GDPの1.76倍。アメリカの金融危機顕在化(2007)での貸付残高は18.2兆ドル、アメリカ名目GDPの1.26倍
・金融機関の総融資残高がGDPの1.5倍程度になるとバブル崩壊の危険性が増大する
・中国のそれは2013年で1.82倍。中国はいつバブル崩壊が生じてもおかしくない
・アメリカ金融危機による損失は3.4兆ドル
・中央銀行が国債を購入すると、政府の債務は貨幣という形の債務に変わる。これは返済する必要がない債務。これによって政府が赤字財政を行いやすくなる。この過程が続くと、インフレと資産の海外逃避に至る。日本はこの方向に進みつつある
・日銀引き受けの国債発行を禁止する財政法第5条の脱法行為となっている
・現在、財政再建の目標とされているのはプライマリーバランス。本当に必要とされる財政再建は国債の残高を減らすこと。そうしなければ金利が正常化した場合の利払いに耐えることができない
・金利が極めて低い状況にあり支払利子が抑えられており、日本の財政は異常の低金利のもとでかろうじて維持されている
・ジョン・ロー(15世紀フランスの経済思想家金融緩和政策の父)がやったことは現代世界における量的金融緩和政策
・フランス人が金にこだわるのはジョンローの失敗の歴史から
・日銀引受けは増税なしに政府に無限の財源を与える措置=憲法が定める租税法定主義に反する
・政府が財・サービスを購入擦れBあ経済全体の支出は必ず増える。これを続けるとインフレが生じ、実質所得が減少する。これは低所得者に重くかかる過酷な税になる
・国債の中央銀行引受け禁止はインフレに苦しんだ経験から人間の叡智が作り上げた基本的経済運営ルール。他方インフレによって国債の実質価値が低下し、政府は債務から逃れる
・日銀引受けによる財政支出拡大を行えば、コントロールすることは不可能。円安とインフレの悪循環が際限なく続く危険性が
・日本では資本の海外逃避が生じ、激しいインフレになる可能性が。生き残れるのは資産を日本から持ち出した人だけ。「日本を否定しないと生き残れない」悲劇
・マイナスの実質金利が長期にわたって継続することは考えられない。日銀の目標、物価上昇率2%ならば、金利はかなり上昇しなければならない
・金利が上昇すれば、金融機関に巨額の評価損が発生し、貸し出しが増えず設備や住宅投資も増えない
・金利が2倍になれば、利払い額は現在の4倍を超える。新金利が2%の場合は、2023年度の国債利払いは32.5兆円にもなる
・公的年金は目に見えない国債を発行しているようなもの
・国民年金制度は事実上崩壊している(納付率は60%程度)
・日本の公的年金制度は500兆円を超える負債を抱えている
・経済成長率と金利は密接に結びついている
・日本における年金制度は本当は20%の保険料率が必要である制度を(高度成長期当時の甘い見通しで)4%しかかけていない制度
・日本の財政は年金制度の誤りの清算に終始し、財政赤字が膨張した最大の原因は半世紀前に犯した保険料計算の誤りが永遠に修復できない問題を残した
・年金は破たんしない、とアピールするために仮定の数字で辻褄合わせをしている
・日本では実質金利が低下している可能性が高く、資本収益率が低下している
・現在の日本経済が直面している問題はマクロ経済政策によって対処できるものではないことを認識すべき
・日本には生産性の高い先端的なサービス産業の成長が不可欠。製造業の復活は新興国が工業化した現在では時代遅れの発想
・政府は産業構造の将来像を示し誘導するのではなく、規制緩和、とりわけ金融部門や外資の参入規制を緩和または撤廃することが必要
・資本収益率の低下は日本において特に顕著に生じている
・10年後日本の国債利回りは2.5~4.0%に上がる
・日本の金利上昇が贈れて、内外金利差が拡大すれば円安になる
・円の購買力が低下すれば、輸入品の価格が上昇する。消費者物価が上昇すれば実質消費は減少する。物価目標は達成できても日本人は貧しくなる
・追加緩和の目的は、円安投機を煽ることが狙い。円安が進めば円建て輸入価格が上昇し、物価上昇目標に近づく
・日本経済は危険な状態に突入しつつある