池上彰の憲法入門 (ちくまプリマ―新書)/筑摩書房
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池上彰氏が飛躍するきっかけとなったのは、当時NHK在籍時に「週刊子どもニュース」で時事問題をわかりやすく説明する役回りの経験から、フリーとなって時事問題の解説の第一人者となりました。

池上氏はNHK出身者らしく権力側でも反権力側でもありませんが、憲法問題は日本人の間でも、憲法の成立過程や現在の世界状況を踏まえた改正論議の過程と論点についてこの本は分かりやすく触れられています。

この夏の参議院選挙(ひょっとしたら衆参ダブル選挙)の結果によっては、憲法改正問題がより動く可能性があります。今の憲法や与党・自民党の「自民党憲法改正草案」の内容を国民・有権者として学んでおく必要性があるでしょう。

日本が真の意味で米国から自立し、アジアとの連帯を深めるため「占領憲法」のレッテルを貼られたままから脱却するために憲法をどうすべきか考えることは続けたらいいでしょう。

かといって、自民党憲法改正草案にあるのは、復古主義・国家主義、人権よりも公益といった今の憲法より自由が制限される感じを受ける内容です。正直、国家や家族を愛しなさい、と権力側から言われるのはまっぴらごめんです。

今後の議論を注視したいですね!

読書メモ↓



・憲法とはその国の法律の親分


・憲法は、その国の権力者が守るべきもの。国家権力を制限して、国民の自由と権利を保障するもの


・日本国憲法の三大原則「国民主権」「基本的人権の尊重」「平和主義」


・ジョン・ロックの「社会契約説」

①人間は生まれながらにして平等であり、生まれながらの権利(自然権)を持っている

②自然権を確実なものにするため、人々は社会契約を結び、政府の権力に委ねる

③政府が権力を乱用したら、人々はこれに抵抗し、政府を作りかえる権利がある


人々は生まれながらの権利を守るために政府を作るが、政府が勝手なことをしたら政府を作り変えてしまう権利を持っている


・言論・表現の自由を自国の政府にではなく日本に占領したアメリカによってもたらされたことが恥ずかしい(高見順)


・マッカーサー・ノート

①天皇の仕事は憲法にもとづく②戦争放棄、軍は持たない③封建制度は廃止する


・日本国憲法は、アメリカが草案をつくったが、日米間の議論で日本側の意見が通った部分があること、国会審議を経て内容が変更され承認された経緯から必ずしも押し付け憲法とは言えない(池上)


・第一次大戦後、不戦条約(国際紛争を解決する手段としての戦争を放棄すること)に日本も署名している


・憲法で戦争放棄を定めた国はいくつもあるが、戦力の放棄まで明記しているのは中米コスタリカと日本くらい。ただしコスタリカ憲法は国防のためのみ軍隊を組織することができる、と完全非武装ではない


・憲法で国民の義務は「教育」(子どもに教育を受けさせる義務)「勤労」(勤労は権利であり義務)「納税」


・憲法に義務が少ないのは、自分たちの権利を守るために憲法を作り、国家政府に憲法を守らせることで自分たちの権利を守る仕組みになっているので権利が多く義務が少ない


・第99条 憲法を守る義務を負うのは、権力者である政府と政府の下で働いている公務員


・憲法9条は芦田修正(2項+前項の目的を達するため)によって自衛のための力を持つことができるように憲法を修正した、とされる


・当初政府は、吉田首相も「自衛権を放棄した」、と答え、共産党の野坂議員が「侵略戦争だけ放棄するべき」と問いただした。吉田首相は、「近年の戦争の多くは国家を防衛するという名目で行われているので正当防衛権を認めることは戦争を誘発する(ので自衛権も放棄した)」と説明した


・66条文民条項で、極東委員会は、憲法9条が修正されたのをみて、日本は自衛のための軍隊を持つことが可能になると判断し、文民条項を入れさせた、とされる


・アメリカは日本にアメリカ軍に従う小規模な軍隊を作っておこうと警察予備隊を作らせた


・東日本大震災では自衛隊は最大10万人体制で被災救助活動に取り組んだ


・自衛隊は国際法上は軍隊


・自民党憲法改正草案では「家族条項」がある。家族は助け合う。美しく当然のことのようにも思えるが、憲法が人間の道徳に踏み込むのは立憲主義の精神からしておかしい。夫婦離婚は憲法違反?(池上)


・①主権が国民にあり国民の代表者が政治を行うこと②基本的人権の尊重③平和主義 その基本原理は変えられない、というのが憲法学者の定説


・自衛隊は憲法上軍隊ではないが、軍事費は世界5位の日本


・いまの北朝鮮に日本を攻撃する能力がないというのが軍事専門家の常識