- 大前研一 日本の論点 2015~16/プレジデント社
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http://booklog.jp/item/1/4833421054
著名コンサルタント大前研一氏のコラムをもとに編纂した「日本の論点」昨年度版を過去読み、今年度版も立ち読みしたが、今年は論点に心を動かされず買いませんでした。
私個人は「維新」という名のつく改革は「明治維新」以外は多くが失敗していてあまり縁起のいい名前ではないと思っています。もちろん大前氏の論点は大切なところもありメモしておくことにします。
移民政策推進・道州制地方分権やエネルギー政策は国民の多数意見とは異なる氏の独自の視点がある(もちろん是々非々です)ので、そこは含んで考えた方がよいでしょう。
読書メモ
・日本の最大の論点は1000兆円を超える巨大な国家債務をどうするかという問題に尽きる
・40兆円の税収しかないのに100兆円の予算を組んで綻びが出るのは当たり前。国債地方債の債務残高は1000兆円を超えて世界最大の国家債務を更新し続けている
・就業者は毎年80万人減っているがリタイア組を引き延ばして毎年30~40万人のマイナスに留めている
・国家債務の最大の問題点は現実に対する国民全体の意識の低さ
・国家債務問題を日本が自力で解決する道筋は①歳出削減 税収40兆円で利払い25兆円 ②歳入を増やす 消費税? 超倹約か超増税か
・ひたすら貯金に励む国民性が政府の無駄遣いを助長し、国家債務問題に薪をくべてきたが、日本は人口減少時代に突入し、貯蓄性向も低下している
・コンサルタントは「この人を輝かせるためにどうしたらいいか」だけを考える
・土地や不動産を売ったり買ったりするチャンスは10~15年に一度やってくる。日本人は売るときに買って買うときに売る不思議な行動特性がある。本当の金持ちは皆が浮かれているときに絶対一緒に浮かれない
・本当に日本を活性化できるのは東京の西高東低を是正するような大規模開発
・日本の管理職の年収が上がらないひとつの理由は税金(所得税)1800万円を超えると限界税率が急激に上がる
・テレビやパソコンと同様、スマホもコモディティ化する
・ソニーは金融(損保や銀行など)で食っている
・世界で繁栄しているのは新しいものをつくり出した人であり企業
・2040年、日本の人口は10700万人。2100万人16%減少する。80万人が引退し30万人が新規労働力。差引50万人ずつ税金を払う人々が失われている。現状では日本は長期衰退するしかない。それを回避するには移民政策
・外国生まれの人口比率が高い国は移民政策に積極的で国民一人あたりGDPが高い国が上位
①ルクセンブルグ②シンガポール③オーストラリア④スイス・・・・
・オーストラリアの移民条件は①国に役に立つ人材か②政府が面倒を見なくても生活できる資産があるか とはっきりしている
・ドイルも移民先進国
・カメラやスマホの例として、ハイスペックなブランドを差別化できるのは5万円のセグメントが売れる日本のような先進国だけ。発展途上国では5000円のセグメントではブランド間の競争はない
・デジタル化はコモディティ化を加速する
・デジタル化した世界で現在生き残っている日本企業のほとんどが部品屋・素材屋
・リンクトインはプロフェッショナルと出会える
・情報は自分から取りにいかなければ価値を生むことはない
・胃に入れる金額と頭に情報を入れる金額を同じにしろ!(情報収集に金を使え)
・エネルギー政策は国民の感情的議論で決めてはならない
・世界第三位の火山国の日本としては地熱発電にもっと力を入れていい
・化石燃料を燃やしてつくった電気でEVを走らせた場合はエコカーといえるのか?
・厳しい条件を課せられたほうが日本企業は真価を発揮する
・LNGは島国の日本でのコストが(輸送段階で液化・気化するので)効率が悪い。ロシアから日本にパイプラインを敷くべし
・日本の電力産業は発電・送電・配電・原発関連事業の4つに分割するべき
・原発を輸出産業として育てよ
・アメリカは2020年には世界最大の産油国に
・アメリカの貿易収支の赤字の60%はエネルギー収支
・世界のトップ5に入る軍事力を持つ自衛隊は外国から見れば立派な「軍隊」
・日本の集団的自衛権の怖さは、アメリカの派遣要請に逆らえなくなること
・集団的自衛権の行使容認はもともとアメリカが軍事負担の軽減を日本に求めてきたことから
・集団的自衛権は、「アメリカの負担を減らすための集団的自衛権を日米ガイドラインに盛り込むため」
という本音を政府が隠して普通の国になるための集団的自衛権という建前に終始しているから
・日本が「普通の国」ではなかったことの幸せ
・安倍首相の言う普通の国とは、「安倍首相の御意のままにアメリカ軍に協力する特殊な国」
・ドイツの占領軍はナチスを恐れて統治システムをアメリカ型の連邦制にした。日本の占領軍も日本の軍部独裁と全体主義の恐ろしさを理解していたが、江戸時代から続いていた日本の中央集権制の危険性まで理解が及ばなかった
・天皇制は円滑な占領政策のために残された
・内務省は解体されたものの、天皇制と官僚制度はそのまま残り、日本の中央集権的な統治機構は維持された
・ドイツでは過去二度の大戦でヨーロッパを焼け野原にした反省と、ナチスの反ユダヤ主義に対する反省を教育課程で徹底して行っている。欧州の繁栄、周辺国との融和こそがドイツ繁栄の道であるという教育が施されている
・過去の戦争に対する深い反省とヨーロッパ連帯の大切さをドイツは指導者が自らが示す
・ドイツのマイスター制度、それと連動したデュアルシステムには学ぶべき点がある
・日本は戦前、産官学共同体の中で大学が戦争目的の研究に駆り出された反動で、進駐軍は日本の高等教育をアカデミックな方向に純化してしまった
・ドイツは過去の反省に立って、現在の繁栄に取り込む、「なぜ日本人たちは勝ち目のない自己主張をするのか」
・中国経済は製造業による輸出主導型から内需型に変わりつつある
・習近平体制は10年近く続く可能性があり、当面日本の企業に中国では浮かぶ瀬はなさそう。チャイナリスクを認識すべし
・歴史的に見れば、抗日戦争で勝利したのはどう考えても蒋介石
・自民党一党支配によって日本は政権交代できない国になってしまった
・自民党政権4つの特質
①中央集権体質(官僚依存・官僚主導)
②票を金で買う(財政赤字の大半は自民党時代のもの)
③継続性を担保していない近隣外交(時の指導者の密約外交、これが政権交代を困難にした)
④憲法改正
・日中国交正常化の3密約
①尖閣棚上げ論(周恩来→田中)
②戦後賠償問題(ODAとODA3%のキックバックが田中派に)
③A級戦犯問題(日本が中国に戦後賠償しない理由を中国国内用に周恩来が考え出したことは「A級戦犯を中国・日本国民ともに日本の軍部独裁の犠牲者である、としたこと。靖国参拝問題がこれに関係)
・政権交代が不可能な以上、自民党と中央官庁に変革と体質改善を迫るべき
・安倍首相の応援団は2派①経済重視のアドバイザリーグループ②右派グループ
・靖国神社は戦争神社
・日中国交正常化のため、中国はA級戦犯を日中両国の加害者に仕立てた
・天皇の戦争責任の問題があり、進駐軍も東京裁判も日本人もそこを曖昧にしてきた
・軍部独裁の軍部とは旧日本陸軍か、天皇か、日本人全員かを突き詰める作業をしてこなかった
・日本の戦後処理の曖昧さに起因している
・安倍首相の改憲・歴史見直しは戦後秩序の見直しに直結
・アメリカの懸念は日本が全体主義国家に戻ることではなく、日中間に偶発的な戦争が起こること
・歴史にはふたつある「事実として存在する歴史」と「後世の人々が思い込んでいる歴史」
・政治家の仕事は歴史を書き換えることではない
・韓国の経済人の多くは労働コストが1/10の北朝鮮をまずは植民地化したいと考えている