今だから小沢一郎と政治の話をしよう/祥伝社
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小沢一郎氏は、その評価はともかく間違いなく歴史に名が残る政治家になるでしょう。

それは、自民党幹事長という権力の中枢に居ながら、自民党的なものとは袂を分かち、非自民連立政権樹立(1993)と民主党政権交代(2009)の立役者であり、その両方の失敗に深く関係しているから。

インタビュアーの掘氏が、指摘するように「戦後レジュームからの脱却を夢見る安倍首相の政府が日本にあからさま新自由主義的で国家主義的な方向付けを与え始めている」昨今の状況で、

何かと小沢氏が注目されるのは、堀氏の言う

「小沢一郎氏が、保守のための革新の人であるがゆえに左から疎まれ、右からは恐れられ、自民党を離党して以来、常に政界の中心にいると言われながら、政権中枢からほとんど排除され続けてきた政治家」

であり、

氏の政治理念が自民党政権の対抗軸になるだけの「自立と共生」の政治理念を始め、氏の憲法観・歴史観・地政学的といった深い教養に裏付けされたものがあるからではないでしょうかね。

いろいろ原因はあるにしても、小沢氏が政治家として充分活躍ができていないことは、日本にとってどうなのか。氏の現在の考えを理解するのに適した本です。

小沢一郎氏の政治哲学は現政権の安倍さんの哲学と同様、対抗軸として学ぶところがありそうですね。

読書メモ↓

(堀)
・政治は権力をめぐる闘争。公正や豊かさを目指し得t政策のよさを競う競争

(堀)

・どういう政治をするかではなく、どういうやり方で権力を握るかに関心を向けるメディア


・日本が過去の不幸な一時期に暴走したのは、政治が悪いというより政治の名に値する政治が不在でることに起因する


・国民が別の政権に取り換えるのが民主主義


・日本人は自己主張しない。伝統的な日本社会は、誰も責任をとらなくてもいい仕組みになっている


・多数決を嫌う全員賛成の政治は見せかけだけの民主政治


・日本人が個人としてきちんと自立しなければならない。政治的に言うと民主主義が定着しないといけない


・国家は領土と国民からなるけれども、やはり国民あっての国家。私は社会契約論的な考え方に立つ


・国家のために国民が尽くすことは話が逆転していて国家は国民のためにある


・「今の自民党内閣のように、そもそも国家ありき、国家のために諸君はこういう責任を果たせ、これをしろ、あれをしろというたぐいの発想というのは、それが国家主義なのだろうけれども、本末転倒」


・国民が国家を形成したわけで、国民が当事者意識をもって、自分たちの社会生活をよくするために自主的に実践していくべき


(堀)

・国民は国家の目的であると同時に、国家の主体である。国民主権とはそのこと

(堀)

・小沢一郎は「自立と共生」の理念で自由主義かつ共和主義的な国民主義者であって国家主義者ではまったくない

(堀)

・デモクラシーへの取り組みの甘さ、安全保障・国防を真剣に考える意識の欠如がある


・日本の国民は憲法上は主権者なのに、主権者としては自立していない。お上に指図されながら依存し、国際的にはアメリカにコントロールされながら依存している

(堀)

・左翼・リベラルはあらゆる権力を嫌う傾向も根強くある


・イギリスはあまり好きではないが、民主主義のスピリットの意識には感銘を受けた


・日本軍の階級秩序が脆かったのは、権力や権威によって規律が上から押し付けられていたから


・国旗への敬礼とか、国歌の斉唱とか、そういうものは国家が強制してやるものではない。上から押し付け、洗脳したところで、本物の愛国心は生まれません。愛国心はそれぞれ国民の心の中や生活から自然に芽生えるもの。政治権力でどうこうするのは見当違い。なので日本の民主主義は一人前にならない


・国家をしっかりさせるのも、国民の生活が第一、という意識をもってでなくてはならない


(堀)

・立憲主義と民主主義=国民主権を両立させることが必要


・日本国憲法の平和主義は国際協調主義でもある。積極的に解釈しないと、日本国憲法の理念がしっかりと理解されない


・憲法は、護憲か改憲かというつまらない硬直した議論はやめたほうがいい。護憲・改憲は55年体制の自社両党のそれぞれの表向きだけの建て前


・帝国憲法と日本国憲法とは立憲主義の観点で一定の継続性を認めてもよい


・現行憲法を無効と見なしておきながら、その憲法を修正改正するというのは明らかな論理矛盾


(堀)

・保守を標榜している自民党憲法草案は、戦後70年の実績を無視して旧い伝統的価値観を押し付けようとするところがある

(堀)

・最近の自民党は、保守の看板に偽りありで、むしろ反動の印象が拭いがたい

(堀)

・自民党は、現代の個人主義の浸透に焦り、苛立ち、アイデンティティの危機を感じて個人の自立が邪魔であるかのようなビジョンを持つようになってきている


・彼ら(自民党)は政治論的にまず国家ありき。国家があるからこそ、国民がいるという話。言いかえれば全体主義的な発想


・国家ありきで、国民は国家のためにあるというたぐいの発想は、近代の社会契約論的な近代哲学、政治哲学に反する。日本は本当に国民自身でつくった国家ではないから国家として脆い


・日本国民のパブリックな連帯が攻撃され、否定されようとしていて、観念的な愛国を振りかざし、国家主義的に日本人の誇りを回収する、そういう自由主義的な政策と国家主義的なプロジェクトが表裏一体で進められようとしているところに危惧を覚える


・今の自民党は、アメリカの機嫌をとる一方、いずれは本当の独立、核武装、武装独立を目標としている。それは危険極まりない日本の再現


・現実には、一国で軍事的に独立できるのは唯一アメリカだけ


・自分だけ平和で豊かであればいい、というのは利己主義でしかない


・国連中心の平和維持活動のために日本は積極的に協力すべきであるという条項を拳法9条に加えることに賛成


・日米同盟と国連主義は矛盾も対立もしていない


・日本国憲法と国連憲章と日米安保条約は三位一体


・国連の法的正当性を認めて、アメリカの行動であろうとなかろうとどの国の行動であろうと、国連の決定を踏まえて論理的に判断する


・イラク戦争やアフガン戦争は、アメリカが自分の戦争だと言って始めた。国連が是認した戦争ではない。湾岸戦争は、国連が多国籍軍にお墨付きを出した


・目先の都合で憲法解釈をクルクル変えていけば必ず失敗する。日本国憲法にも日米安保にも裏付けのある国連中心主義を貫くべきであり、日本は最大の努力をすべき


・国連主義は、国連で決めたことに参加するのは、憲法上許される。その時々の政治判断で参加しないこともあってもよい


・日本に議会制民主主義を定着させることが私の究極の目標


・民主党政権は失敗したが、国民が意思表示して政権交代を実現させたことは画期的であり歴史的にみても非常によかった


・日本には責任の所在をはっきりさせながら集団の意思を決定するシステムがちゃんとできていないまま戦争への道を進んだ


・個人の自立こそ民主主義の基本


・自立というのは、自分の自由を堂々と行使した上で、自己責任を引き受けること


・公正で開かれた社会の中で競争原理を生かしながらの市場経済が基本だが、競争原理一辺倒ではいけない


・それぞれ自立してみんなと共に生きる「共生」


・自己責任という言葉を連帯や保護を拒絶することの口実にしてはいけない


・近代民主主義では、個人の自由の範囲に政治が介入することは許されない


・自分の意見をこうだと言うのと、対立する意見を排除するのとはまったく違う


・自民党の憲法改正草案は、9条で国防軍を用意するばかりか、基本的人権の尊重を強調した97条をあっさり削除すると言っている。それは民主主義を否定する話


・自民党的政党(閉鎖的で、日本人の特質と伝統を背景にした存在)はあっていいし、必要

(堀)

・真っ当な保守党と真っ当な進歩党の政権交代が望ましいのが小沢流


・第一次世界大戦から100年続いたアメリカ中心の世界秩序から世界の重心がだんだんアジアに移りつつある。古代はメソポタミア・エジプト・中国から始まって欧米以外の地域に世界の中心があった。産業革命以降経済・政治の力がヨーロッパ・アメリカに移った。欧米の圧倒的優位はせいぜいここ300年。


・欧米のキリスト教的哲学を背景にした文明というのは限界に近づいている。欧米の人間中心主義から東洋思想的自然観に


・極東東アジアに不安定要因が集中。中国が不安だらけ


・安全保障面の備えも大事だが、原理原則の議論をごまかし既成事実をつくって憲法の規定をなし崩しにしていくような姑息なやり方は国家のかじ取りとして最悪。日本外交は幼い。それは敗戦後アメリカの傘下でアメリカの指示のもと政治的な負担はしなくて済むし、軍事的負担は少なく、経済的なメリットは分けてもらうクセがついている


・日本は渡来人と仲良くやってきて、珍しいほど穏和でゆるやかな共同体をつくってきていた


・戦前は日本がアメリカと意思疎通ができないまま、独りよがりでヒステリーを起こして戦争に突入してしまったプロセス


・日本国憲法には国際協調の理念がありそれは生きていくための基本要件。けっして一国平和主義ではない。日本の国是は間違いなく国際協調


・「自立と共生」は小沢理念。自立した個人が国民として集まっているのが自立国家。主権国家同士他国と交流しながら平和共存するのが世界全体の共生


・国連中心主義でありながら、国境の壁を越えて地球全体を包括する世界政府・世界国家が理想


・国連が頼りにならないから国連を見捨てるという論理はおかしい。むしろ日本は国連に対して積極的な役割をするべき。ただし旧敵国条項は削除を主張し続ける


・国連憲章42条、紛争解決時に国連が警察軍を派遣し秩序維持することに日本が嫌がっている。平和の維持が目的で国際法的にも叶った任務に日本が積極的に貢献するのは当たり前


・やや独善に走る傾向のあるアメリカを国際協調に引き込むのが日本の役割


・日米同盟と国連中心主義は何も矛盾しない


・安倍さんは憲法9条の解釈論議のときも、安保法制論議のときも、集団的自衛権と国連の集団安全保障とを法的には別のものであっても一緒にしている


・積極的平和主義を主張するなら、日本国憲法の理念に立ち返るべき。国連の活動に対してあらゆる手段で協力するのが積極的平和主義のエッセンス


・安倍内閣は、集団的自衛権を地理制約抜きで使えるようにしているが、実は個別的自衛権の拡大を目論んでいるのではないか。個別的自衛権は一国の独自判断で発動できるので一層危険


・対米関係は日本外交の最優先事項


・日本とアメリカは本当に同盟と言える関係になっていない


・日米関係の日本は「生徒会民主主義」生徒会で決めても先生がノーと言われたら・・・


・安倍政権とともに台頭してきたのは、一種の武装独立派


・中国自体は危機的な状況にあり対外的に強硬路線を取っている


・中国ではGDPに占める個人消費が35%程度と国民経済が育っていない(米70%日60%)


・アメリカも中国もどちらも日本にとって大切だ


・A級戦犯を合祀してしまっているいまの靖国神社に政府閣僚は参拝するのはよくない。天皇陛下はじめ誰もが素直にお参りできる靖国神社に


・日本人は島国にいて苦手だろうけれど、対立を恐れることなくはっきり自分の考え意見を述べないといけない


・地方分権により21世紀型の新しい日本を造り出すことができる


・大きな中央官庁はいらないが、小さくて強力な中央官庁が要る


・今の行政システムで道州制をやればますます官僚統制を強めるだけ


・無駄な規制はなくすべきだが、新自由主義者ではない


・今はとても再増税できる環境にない


・世界に何が起きても日本の受けるダメージを最小限にとどめるには日本経済の構造を国内需要だけで回していけるよう変えておく必要がある


・共生という政治理念のもと、世界のさまざまな国民と共生するためにも、まず国内で同じ日本国民が互いに豊かさを分かち合える社会をつくっていかなければならない