性のタブーのない日本 (集英社新書)/集英社
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「源氏物語」への造詣深いことで有名な橋本治の本。源氏物語は文学的価値とそれに合わせた形で高校の古典で学ぶものですが、源氏物語の背景として存在する日本人の性文化に対しての考察が及んでいないことは少し残念なことです。

 今年の私的テーマである江戸文化史への記述は少なめですが、昨年公開された春画展への高い評価も合わせて学んでいきたいと思っています。

 明治以降の日本人が近代に追いつくために犠牲となった部分に対する学びが必要だと思っているわけです。


・明治時代になるまで、日本に性表現に関するタブーがなかったことは確実


・明治時代性の日本の刑法には「猥褻の罪」が存在している


・春画が日本文化として外国ではオープンにされ、画集として出版されていた。刑法が改正されたわけではなく、時代につれて性道徳も変わり、猥褻の意味も変わってきた


・性的な刺激を与えるものには、一時は大盛況なのに、しばらくすると流行らない、という変な傾向がある


・人は「エロスの匂い」に反応し「猥褻」に対して本能的に惹かれてしまう


・性表現の自由というのがめんどくさいことになってしまったのは「猥褻の罪」というものが刑法に存在しているから


・明治時代になって、行政府が「風紀」というものを問題にして、性表現に規制をかけた。「猥褻」という概念を導入して取り締まったから、我々は「性的なもの≒猥褻」というような考え方を刷り込まれてしまった


・明治時代以前の日本には性表現のタブーはなかったし、性にもほぼタブーはなかった。日本人には性的タブーがなくて、その代りにモラルがあった


・「まぐわう」の語源は「目交う」で視線が合うこと


・近代以前の日本にはあまりオッパイ文化がない


・日本女性の肉体表現を完成させたのは喜多川歌麿


・乳首に着色をしていない当時の日本の浮世絵師にはそこには特別ななにかはない、と多くの日本人が思っていたことになる


・乳首に色がついたら近代


・性行為とは「快感を得る非日常的な行為」


・江戸時代に春画が氾濫していたのは、この現実の中にそうままにはならない欲望が存在していてもいい、ことを示す一種のマーキング現象


・平安時代の結婚は、女の許へ三日続けて通わなければならない


・旧約聖書では子孫繁栄第一で妊娠に結びつかない性行為はダメ


・タブーというのは共同体の存続を守るためのもの


・旧約聖書に端を発する文化の根本にはまだやっちゃいけないという思春期的な性の拘束があるが、古代日本にはやってはいけない線引きはなく、お互いの身体的特徴に気づいたそのなかでためらうことなくやっちまう


・古事記では、親子間と獣はダメ


・日本語には性交自体を表す動詞がない。その行為だけを特別にピックアップする習慣がない。その行為が「逢う」ということに含まれていて、逢ったらもうやっちゃっているわけで、その行為の部分だけを特別視していなかった


・平安時代~「逢う」「見る」はそのまま性交渉・性的関係を結ぶこと


・女に仕える女房とコンタクトを取るのが平安時代の恋の常道


・平安時代は女性に貞操観念がなく強姦罪もなかった。でも現代は平安時代に近づいているかも


・人はきっかけがあれば恋に落ちる生き物でもある


・源氏物語の中には一人の女を共有することによって男同士が親愛の情を成り立たせるという隠れた同性愛原則がある


・日本では昔から女性が力を持っている国。複数の女帝が存在した結果、父なる天皇から皇位継承を受けた男の天皇は、日本の最初の女帝である推古天皇以来、平安京をつくった桓武天皇まで一人もいない


・摂関政治の時代は天皇が性的主導権を持てなかった時代。天皇の妃は摂関家の長が決めるもの


・性的主導権は人事権の獲得とも重なる


・大和撫子=おしとやか だが、これは武士の時代になってからの話で日本の女はおとなしくなんかない


・日本三大悪女、北条政子・日野富子・春日局 あくまで武士の時代の価値観


・明治初期の「硬派」は年下の男を、「軟派」は女性を恋愛対象としていた


・子づくりに励まないというのは女と肉体的接触をしたがらないということ


・院政の時代は男色の時代。権力者は自力で人脈を作る、人間関係=肉体関係というあり方が適用されたから

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・吉原をはじめとする江戸時代の幕府が認可した遊郭の遊びのシステムは平安時代の結婚を踏襲する形で出来上がった


・武士は各地の遊女宿に泊まって子を儲ける


・ひらがなは「女の文字」男は漢字


・平安時代は男同士の性行為は変態という認識はなかった


・貴族の社会は出世の度合いは生まれによって決まっていた