資本主義の克服 「共有論」で社会を変える (集英社新書)/集英社
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・アベノミクスの三本の矢 「異次元の金融緩和」「財政出動」「規制緩和政策」は「失われた20年の間に使い古されたが金融緩和の規模が大きく、同時に三本の矢を実行する点に新しさがある。しかし、第一の矢から当初の目的を達成していない


・物価上昇の期待が生じたとしても、所得の上昇がなければ、消費を増やすことはできない


・アベノミクスは2012-14の二年間は2014年度の実質成長率は-0.5%、物価は+2.7%だがそのうち2%は消費税増税の影響で残りは0.7%それも円安による輸入物価の上昇による。完全に失敗


・円安にもかかわらず2013年以降貿易赤字は拡大。アジアへの工場移転による逆輸入増加、燃料原材料の輸入額の増加で貿易収支は悪化


・自民党の憲法草案や家族の助け合いを強調する日本型福祉社会論からは、復古主義的な社会を目指しているのかもしれないが、家族や地域は解体状況にあり、時代錯誤


・規制緩和中心の成長戦略は小泉構造改革で失敗した政策


・産業構造と社会システムは20世紀の「集中メインフレーム型」から21世紀の「地域分散ネットワーク型」への転換であると考える


・集中メインフレーム型のシステムが成立するには①人口増加②所得雇用の増加③製品の国際競争力が前提


・クラウドとICTの発達が猛烈に進んだことによって、ひとつひとつが分散していてもネットワークを組むことで効率的になっていく


・それぞれの地方・地域で自ら決定できる地域民主主義をベースとした分散型社会システムを形成


・地域分散ネットワーク型の産業構造形成の出発点として有望なのは、エネルギー、食と農業、福祉分野


・発送電分離、電力自由化を急ぐこと


・今は歴史的転換期であり、古い制度やルールから新しいそれらに作り直す必要がある


・制度やルールを共有することによって、人びとの自由で多様な活動を保障しながら、イノベーションを誘発することが大事


・資本主義は絶えずフロンティアを求めて動く


・国民国家同士がむき出しで衝突する時代は終わり、第1・2次世界大戦のような先進国同士の激しい総力戦は実行不可能になった。核兵器の水準から世界の破滅をもたらしかねない状況では、自制する動きも出てきた


・対テロ戦争は新しい形態の世界戦争


・諸国間の争いは関税に加えて、新自由主義による制度やルールの強要という形


・第一次大戦でイギリス中心の金本位制が動揺し、大恐慌が発生して、先進諸国の金本位制への復帰が放棄されていった。覇権国システムの動揺が収まらないまま、ブロック経済化が進み、第二次大戦に突入していった。この過程で、覇権国がイギリスから米国に交替して、グローバルなレベルでIMF態勢という一種の金為替本位制ができる


・世界的な格差拡大の進行を止めるには、累進的な資本課税を強化する必要がある


・日本の社会保障制度は持続可能性を失っている。制度分立を解消する年金制度の一元化が不可欠


・ローカルなレベルにおいて医療や介護、保育といった現物給付の充実が必要


・一律に子どもが育つための保証も与えなければいけない


・資産は富裕層のもとに集まり、非正規雇用で格差と貧困が拡大していく


・米国による金融自由化を軸にしたグローバリズムは、日本の政治をも呑み込み始めている。1990年代末以降、内閣支持率と株価はほぼ連動するようになっている


・規制緩和によってベンチャー企業が生まれ、イノベーションが促されるわけではない


・米国を中心とした投資家のマネーを呼び込むためには、米国に受けがいい新自由主義経済的な政策を実行せざるをえなくなっている


・第3次産業革命がもたらそうとする産業構造や社会システムはICTを媒介にして、地域分散ネットワーク型への転換にある


・これからはニーズに近い地域単位で決定していく方が優位に


・すべての国々が共有する国際通貨を選び直すことはあり得る


・電力の分野は、中中メインフレーム型の時代に許された独占の打破が地域分散ネットワーク型へ転換する突破口になる分野


・古い社会統合のシステムはいたるところで機能しなくなっている


・中間団体や職業団体の衰退と同時に、民意を吸収する経路としての政党も衰退していく。その結果、自民党の右傾化が進み、安倍政権になってからは一層国家主義的ナショナリズムの傾向を強めている


・日本ではまだ小さいながらも、市民ファンドが出資し地域金融機関が融資するご当地電力が生まれている


・供給者・利用者・負担者が地域で話し合って、どういうシステムが望ましいかを決めていく枠組みが必要


・社会システムが、行財政の地方分権だけでなく、産業構造や意思決定も含めて地域分散ネットワーク型に変わっていく


・丸山真男が戦前の日本の天皇制を無責任の体系と呼んだ状況が今も根強く存在していることに、人びとの間に諦めの気分が支配する


・グローバル・リージョナル・国民国家・ローカル・家族という5層のレベルを設定することで初めての制度・ルールの歴史的ダイナミズムを描くことができる


・石油ショック後に金融業や情報通信分野で復活した米国は、自国の制度やルールを他国に教養するようになり、新自由主義的な諸政策は世界人口の1%が世界の富の多くを所有する格差社会をもたらす