成田龍一


・安倍談話の歴史観は司馬遼太郎の歴史観と近い


・司馬史観の特徴は、国民国家という枠組みや価値観を肯定していること


・司馬史観の弱点は日本の近代化と国民国家化は成功だったがその先で間違えたこと、もうひとつは植民地の問題に視点が及んでいないこと 日本が加害者だという視点が希薄


・司馬は単純に国民国家を肯定していただけではなく、国民国家の枠組みを超えていくことも考えていた、しかし安倍談話はそれを一切取り入れず、「坂の上の雲」の司馬しか見ず、司馬史観のひとつの側面だけを安易に利用しているようにもみえる


・安倍談話は国民国家を立て直し、経済的繁栄を取り戻すという司馬自身が80年代に捨てた夢を追っていることが決定的問題


李元徳


・日本が1905年竹島を編入したのはロシアとの海戦を前に軍事的に価値があると判断したため。韓国では日本による主権侵奪の最初の犠牲と受け止められている


・安倍談話では1931年の満州事変から進みべき進路を誤った、となっているが、歴代内閣の立場は今後も揺るぎないとしているがどちらが本当の歴史認識か相矛盾している。



久保亨


・日露戦争でアジアの小国がヨーロッパの大国に勝ったことはインドやベトナムの民族指導者に強い印象を与えたが、日露戦争をその面だけから描くのはあまりにも日本中心の歴史観


・安倍談話では1929年の世界恐慌が日本が戦争への道を進んでいったきっかけ、としているが、軍事力にものを言わせ日本が中国で利権を手に入れようとした動きはもっと早くに起きていた


・日本は侵略を合理化する歴史観からまだ脱し切れていない


・日本中心の内向き歴史観を克服して、アジアの隣人とも共有できる、広い視野を備えた歴史観を持つことが不可欠