【憲法記念日に憲法への私見】 
閲覧注意!あくまで現時点での私見です。国民世論が分かれている内容であることを踏まえて。護憲派でも改憲派にも与しない立場から。


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参考出典;朝日新聞

憲法記念日をタイパタヤーにて過ごしております。変わらぬアジアのパワーとインタナショナルな雰囲気を感じながら書いています。

憲法改正に並々ならる意欲と信念をお持ちの安倍首相は経済政策で国民の一定の支持を得ながら、選挙で与党自民党に安定多数議席を確保し、信念とも言っていい「戦後レジュームからの脱却」の象徴としての日本国憲法を改正させることに向かって進んでいこうとしています。

昨年、集団的自衛権の憲法解釈変更の閣議決定を行い、先日米国との協議を先に行い、関連の安保法整備をこれから行うという、法律学的には問題が残る手順をやってのけました。

個人的には安倍さんのイデオロギーや歴史認識についてはどうしても共有できない部分がたくさんあります。人々が持っている理念や政治思想を見透かそうとしてしまう私の性分で仕方のないことなのですが、とはいえ安倍さんの経済政策はじめ国政の様々な政策は個々に判断していて、国民の支持をバックにした強いリーダーシップを持った首相が出たのは近年小泉首相以来のことで日本にとって必要なことでもありますし、過去の失敗を軸に現実的な選択肢を持ちながらしたたかに自らの理想を追い求めているその姿勢、何より金融緩和による経済の停滞マインドを変化させた実績(あくまで現時点までの実績)それは認めないといけませんね。国際情勢の変化(領土問題、テロ、中国の台頭などによる安全保障環境の変化)もありますし。いずれにしても安倍さんは興味ある政治家です。安倍さんは、岸信介元首相の孫です。安倍さんの信念は尊敬する岸信介元首相の影響を大きく受けているようです。昭和の妖怪とよばれた岸信介への興味も湧きます。

憲法改正の発議が現実的となったということは、私たち有権者が国会の改憲発議が仮に衆参両院を通過した場合、憲法に対する国民投票を行使する立場になるわけでして、それまでに現行憲法が制定された歴史的経緯であるとか内容のこと、そして憲法改正の目指す方向として自民党憲法改正草案を知っておくこと勉強しておくことが大切になることは言うまでもありません。

自民党が党是として自主憲法制定を挙げているのは理由があって、日本国憲法が敗戦による占領下の中で制定された歴史的経緯からです。いわゆる「押し付け憲法論」です。日本の権力構造は敗戦で一変しかけたのですが、中華人民共和国の成立、朝鮮戦争、ソ連との対峙といった冷戦構造が出来上がった当時の国際情勢の変化で米国の対日占領政策が変更され、日本の理想国家にする元となる新憲法を忠実に履行することよりも、日本を共産主義の防波堤とするために、戦前戦中の旧保守権力者の公職復帰を認め、日本の復興を早める必要性がありました。憲法9条がありながら事実上の軍隊でもある警察予備隊→自衛隊を創設したのもそのひとつの現象でした。そうした保守政治家からすれば米国には追従せざるを得ないが、保守イデオロギーが残された中で自主憲法をつくって独立国らしい形をつくりたい、しかし平和を求める市民との認識の違いもあり、憲法も常に改正と護憲の狭間で揺れてきたけれども結果的に自民党以外の野党が議席の1/3以上を占めていたわけですから一度も改正されてこなかった歴史があるわけですね。それが自民党の大勝、安倍さんという保守志向の強いリーダーの誕生で憲法改正が議題として取り上げられるようになってきた、ということです。

憲法については、いつも9条が話題になります。

  1. 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
  2. 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

確かに敗戦国の日本が戦争に懲りて、占領下にあったとはいえ、国民の支持のもと、2度と戦争をしない平和な世界にしようとする並々ならぬ意欲があったものと思われます。憲法9条の平和主義は素晴らしいとする意見と戦力不保持・自衛権のない国家なんて独立国じゃない、とする意見の論争がずっと続いてきました。

理想世界があるとすれば、「戦争と国境と軍隊なき平和な世界」です。第二次大戦後に、戦勝国による国連創設もその動きのひとつ。さらに発展させて真に平和な世界にするためには、そうした「世界連邦」に向けた取り組みがなされなければなりませんが、未だ道半ばです。現実の国際情勢から、国境と軍隊がない世界は混乱をもたらしますし、世界最強の軍事力を持つ米国やその背景にあるキリスト教文明やユダヤ人への敵対心からかえって一部イスラム過激派によるテロが起こされてきたのも事実。その中でいかに平和を守ること、戦争をしないためにどうすべきかの方法論が理念として問われているわけです。日本が憲法を守ってきた戦後民主主義の成果は多くの国民が認めるところです。世界の戦争に巻き込まれることなく、軍事衝突で直接の死者を出していない平和主義の成果は平和憲法の理念を世界に誇ってよいものです。もちろんそれは日米安保など現実の壁と多くの代償を伴ったわけですが。

さて、自民党憲法改正草案の話ですが、2段階で改正をしようとしています。第1段階として「緊急事態条項」「財政規律条項」「環境権」といった与野党で合意のしやすい条項を国会で発議して国民投票にかける。

自民党としては、今、多数派を形成しているときに、憲法改正に突き進んで改憲の実績をまずは国民に示そうとしているようです。

そして、第2段階として、国民の世論が分かれるより困難かつ自民党が長年願っている改正「天皇の元首化」「9条改正による自衛権発動と国防軍設置」「公共の福祉を公益及び公の秩序に変更」「家族の尊重」「96条改正による憲法改正手続の緩和」です。

第1段階のさほど重要ではない?項目から改正して改憲の経験を国民にさせる。第2段階でより国家としての立場を強くした内容にすることが自民党の目論見です。

日本国憲法は聖典ではないのですから、改正の必要性を論じること自体は大事なこと。国民の関心もそう。護憲派の言う理想主義が現実世界との乖離と限界もありますし、内容が素晴らしいものであったとしても、占領憲法との歴史的側面からは逃れられない現行憲法を一度国民の力で作り直すことも「戦後レジュームからの脱却」は方向性は別にして確かに必要なことですから。


しかしながら、自民党憲法改正第2段階の内容には、疑問を感じます。

「天皇の元首化」は、象徴天皇制が定着している中で天皇を元首にするのは天皇に政治的地位を与えることになるわけでして、これには賛否両論があるでしょう。何より現天皇陛下は今までのご発言を見る限り戦争や歴史の重さをご存知ですし、憲法の順守義務のある現行憲法の擁護者に見えます。

「9条改正による自衛権発動と国防軍設置」は何より世界平和のための自ら率先して戦争放棄と戦力不保持の理想を捨てることになります。もちろん、そのままでも自衛隊の存在と集団的自衛権の行使容認といった武力行使の幅を広げている世界情勢とまったくもって矛盾しているわけですが。

現実問題日本って、日本国憲法の上に、「日米安保条約」や「日米地位協定」があり、米国の核の傘と在日駐留米軍に国防を目に見えない部分も含めて依存し、しかも憲法よりも上位にあるために、日本が米国の属国であることには何の変わりもなく、集団的自衛権の行使容認の本質は、過去戦後も間違った戦争を何度もやっている米国の下請けを自衛隊が危険任務としてさせられる可能性があるわけでして、それは安倍さんの言う「戦後レジュームからの脱却」ならぬ戦後レジュームの強化ではないか?という矛盾なのです。

「公共の福祉を公益及び公の秩序に変更」は、公共の福祉とはあまり使われなくなりましたね~しかし、公益及び公の秩序って、権力側の都合になりかねない危険性があります。権力者の一人として無制限の自由と権利なんてもちろんないわけで従って「公共の福祉」という柔らかい言葉があるわけで。本来権力は憲法に従って国民の自由と権利を擁護する立場にあるわけですから。公益及び公の秩序に反すると権力側が判断すれば国民の自由と権利を制限してきた過去の歴史を重く受け止めなければなりません。

「家族の尊重」は一見当たり前に見えますし私もそうありたい。しかし、家族はあくまで人間関係や人間組織のあくまで一形態であり、家族の尊重という、国民個人の自由と権利の範囲のことに抵触しないか、何より権力側から家族を尊重しなさい、と言われることへの強烈な違和感が残ります。尊重されるべきはまずは個人です。同性婚や夫婦別姓容認論、事実婚など多様な価値観の共存を願うことは本来の憲法の理念でもありますし、権力側も擁護すべきではないかと思うのです。

「96条改正による憲法改正手続の緩和」は改憲派も含む世論の反対に遭い、強く推し進める力は弱まっています。憲法改正の発議を衆参両院の2/3から過半数にハードルを下げるのはいかがなものかというもの。

現時点での私見としての憲法に関する結論として、

・日本が過去の戦争の反省に立ち、世界の平和に貢献し、米国から属国状態から真の自立した、アジアと共に生きるための、国民が本来求めている趣旨による憲法の改正もしくは国民による新しい憲法制定については国民世論の動向の上、慎重に進めていく必要があるのではないか。

・しかしながら、自民党の憲法改正草案を見る限り、米国への追従姿勢を強化し戦後レジュームからの脱却ならぬ戦後レジュームの強化につながる内容になりかねないこと、かえって日本を危険な方向に向かわせる内容になりかねないこと、国民の自由と権利を制限し公益及び公の秩序を優先されかねない本来の権力を縛るべき憲法の根本を変質させかねない現時点でのこの内容の憲法改正には違和感を覚える、

ことをあくまで私見ですが明記しておきます。今の自民党の憲法改正草案の内容ならば改正の必要性を感じませんし、それならば今の憲法の方がましです。

日本は敗戦国です。これからは、米国だけが覇権国になるわけではなくて中国がそれに加わろうとしています。日本はこれからも覇権国になることはありません。日本が世界の平和に貢献するためには、国連常任理事国という戦勝国に立ち向かい、過去の清算から逃げない姿勢が問われるはずです。日本だけが悪いんじゃないと安倍さんは言いたいでしょうけど敗戦国としての戦後レジュームを覆すのは世界を敵に回します。敗戦国としての責任と日本独自の立ち位置(平和憲法・核不拡散・日本文化の発信など)を踏まえた中日本がどの方向でいくべきなのか、憲法改正を考えていくべきなのです。そのために学ばねばならないこと、やらなければならないことはたくさんありそうです。

憲法改正論議が国民にとって憲法を学ぶよい機会となりますことを心より祈ってます。