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「歴史家だから確信してますが、世の中は決して、極端から極端へは変化しない。歴史は短距離走者ではないのです」
「憲法改正を目指すことは、自民党政権として別に新しいことではありません。そもそも憲法9条を変えずとも、自衛隊の役割は劇的に変わった。事実を見れば自衛隊はすでに海外に派兵されている。アジアの地政学的要因や防衛費負担を求める米国の圧力があったからです。将来的に9条が開催されたとしても、それまでには改正が必要ないほど多くのことが実現しているのではないですか」
「日本が戦後という言葉を使い続けた理由は、それだけ、この体制が安定したものだったからでしょう。その理由のひとつは米国です。米国が日本の記憶とシステムを冷凍していたから。そして日本にとってはそれが快適だった」
「安倍首相は「普通の国」になるための9条を変えることを欲するけれど、戦後体制の日米関係は変えたくない」
「安倍首相を含む自民党の右派政治家たちは長い間、戦後問題やナショナリズムに関わることを国内政治扱いしてきました。加害責任を否定することで、国内の支持を得ようとしてきた」
「この20年ほどで、戦争の記憶に関する「グローバル記憶文化」とでも呼ぶべきものが生まれました。それは、国家が過去に行った行為について新しい国家規範ができたということを意味します。戦後すぐは、その規範は存在しませんでした。記憶文化が生まれた理由のひとつはホロコーストです。EUが創設される過程でホロコーストはヨーロッパ共通の記憶になりました」
「日本は長い間、戦争の記憶に関して何もする必要がなかった。強固な日米関係に支えられていたからです。中国は共産主義国だから存在しないのと同じだった。しかし、冷戦が崩壊し、日米関係が唯一の重要な国際関係でなくなった。アジアと向き合うことを余儀なくされ、90年代になて突然、日本政府は戦争の記憶に対処しなければならなくなったのです。それは世界の新しい常識です。」
「歴史問題はいまや安全保障にすぐに結びつく」
「90年代の世界各国で新しいナショナリズムが生まれました。冷戦が終わり、不確実に変化する世界秩序を前に、経済的な繁栄を譲渡さなければならないと感じた先進諸国が直面した問題です。このポスト冷戦期日本にもたらされた最も大きな変化は、アジア諸国の成長、特に中国の台頭でした。東アジアで経済関係がこれほど分厚く広がったことはかつてありません。地政学上の大きな変動は緊張をもたらします。ナショナリズムの矛先が中国、韓国に向かうのはそのためです」
「日本はグローバルプレーヤーになる努力をするべき。非核国で、兵器も売らず、かつ世界有数の経済大国という稀有な国です。ノルウェーが平和交渉の仲介役をするように、他国がしない隙間の役割を見つけるべきでしょう。もっと多面的なソフトパワーを武器にして何かできるはずです。それは、台頭する中国にどう対処するか、という問いへの答えでもあります。軍備に軍備で対抗するのはばかげていますから」