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世界を知る力 (PHP新書)/PHP研究所
¥756
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少し時間が出来たら過去読んだ本の感想を書くようにしています。
といっても、本というのは旬のものもあるし、歴史や時代の大局を見極めることができるような良書はホント少ないのが現状ですね。

寺島氏のように三井物産に属するビジネスマンとしての立場の上に、歴史や世界に詳しく世間に影響のある知の人というのは以外に少ない。本人は「思想的スタンスは変わってないのに、学生時代は右翼と呼ばれ、今はリベラルと呼ばれる、と皮肉混じりに嘆いているが。


・戦後を生きた日本人が特殊な世界認識の固定概念は、アメリカを通してしか世界を見なくなったこと
そうした世界認識をあらためるには、アメリカというプリズムに頼らずに、対象となる世界を直視することが大切。

・空海のように、絶対平等の世界を訴え、現世の現実的な課題にも正面から向き合う、人間社会の総体を体系的かつ調和的にとらえようとする全体知を気球するなかで問題の本質的解決に向かわなければならない

・日本人はアジア・ユーラシア二千数百年の歴史の蓄積と、近代史における第二次大戦の敗戦はアメリカと中国の連携に敗れたことから眼を逸らしてはならない

・いい悪いという話を超えて事実として経済的歴史的結びつきが強い大中華圏を軽視するわけにはいかない。中国を見るには、まず大中華圏(中国及び香港台湾シンガポールなどの華僑国家の総体)を見る視点が必要

・ユダヤ的思想の基軸はふたつあり、ひとつは国際主義、もうひとつは高付加価値主義である。国家という枠組みよりも国境を超えた価値を重視する視点が、世界を変える偉人を排出してきたユダヤ人の特徴である。(モーゼ・キリスト・マルクス・フロイト・アインシュタインなど)

・いま世界は超大国が支配した冷戦時代を終え、バラバラに分散された小さな部分がネットワーク化され相関することで、全体として大きな統合された力を発揮する時代へと向かいつつある。(大中華圏のネットワークなど)

・松本重治「日米関係は米中関係である」20世紀からの密接な米中関係が日本の敗戦に結びつき、戦後の米中関係の混乱が日米同盟をもたらした。だが、アメリカのアジア政策は常に日本を基軸とするというのは幻想。日米中のトライアングルで世界を認識すべし

・日本が冷戦型の世界認識から完全に脱却するために必要なことは、対米外交原則をあらためて明確にすることが欠かせない。日米安保同盟のあり方を根本的に見直し、独立国である日本に外国の軍隊である米軍が駐留し続けていることが不自然な事態であると日本人は気づくべき。反米でも嫌米でもない形で新しい安全保障体制を目指し、独立した国民国家として国際社会に立つための問題意識が必要。

・親米入亜の思想

・自分たちが有している歴史認識とは違うとらえ方が、他の国民・民族にはありうるということ、世の中にはさまざまなものの見方、考え方があること、賛成はできないけれどもあなたのものの見方、誠実に物事を組み立てて考えてみようという見方について大いに評価する、という姿勢が外交においても、国際社会を個人として生き抜く上でも大切だ。

・世界を知る力、は自らを相対化し客観視しる過程なくしては磨かれない

・世界を知れば知るほど、世界が不条理に満ちていることが見えてくる。その不条理に対する怒り、問題意識が戦慄するがごとく胸にこみ上げてくるようでなければ人間としての知とは呼べない。世界の不条理に向けて情念をもって行動し向き合うべきだ。

氏の本を読んであらためて、米国に立ち向かった鳩山氏が何故失敗したか、今の民主党・自民党、橋下維新、中国・韓国との関係も少し見えてくる気がします。

氏がマージナルマン(境界人)という生き方、ひとつの組織に身を置き、役割を心を込めて果たしつつ、組織に埋没せずに社会にも軸足を置く生き方、

これは次代を見据える生き方ですね。

それぞれの環境や負う責任は違えど。