10/22
いまさらながら、政権交代の原因は何かを選挙後二ヶ月近くたって、私見としてまとめておきたいと思います。
もちろん私見ですから、「こういう見方もある」というのがあればお教えください。
時代の変化を大局観で感情に流されず見極めることをしなければいかんわけです。
現状の認識はこうです。
今回の選挙は民主党の勝利というよりの自民党の敗北です。ただ、政治思想としては中道右派から中道左派への転換に過ぎません。
その原因はどうだったのか?思いついたままメモしておきます。
自民党はかつて社会民主主義的な再配分を行う「権力党」でした。
政権を長年維持してこれたのも、派閥同士の政策論争・権力闘争という名で党内が活性化し、擬似政権交代を起こしてきたからではないでしょうか。
その中で官僚とともに、米国との妥協を重ねながら高度経済成長を実現した実績は大きいものがあります。その実績が常に最大勢力政党として有権者の支持を集め、権力を維持し、有能な人材を受入れて育ててきました。
もちろん、政権から転落した1993年の細川内閣時でも最大勢力を持ちながら野党に転落しましたが、1年たたずのうち、かつて対立してきた社会党を引き入れて村山連立内閣をつくるなど政権を保ち続けました。
それが、2000年代になって事情が変わりました。
世界的なグローバリゼーション(本質は金融技術の「発達」やBRICsを代表とする世界的市場への労働力の本格参加)やIT革命によって、市場原理主義という世界的な経済競争とそれに伴う金融投資と実体経済の活性化によって日本は取り残されがある一方、世界経済は高成長を続けました。
こうなったときに、2001年に登場したのが小泉政権と竹中理論です。
世界的グローバリゼーションに順応するために、市場原理主義・競争至上主義・構造改革によって日本を変えなければ世界に取り残されるという危機感もあったのでしょう。
しかし、その流れに利益を得た人よりも不利益を被った人が多い全体の流れの中で、一昨年の参議院議員選挙で自民党が敗北し、第一党から転落した流れと、方向転換を迫られる結果となったのが昨年の金融危機です。
小泉首相の退任が2005年。その時点で自民党も市場原理主義からの修正をしてきたはずです。小泉首相以降の政権はどちらかというと反市場原理主義的であり、官僚とも融和し、積極財政(ケインズ)・金融緩和といった自民党の伝統的な政治でもって修正をしてきたように思います。
麻生さんも「行き過ぎた市場原理主義と決別する」とおっしゃってましたから。
だから、政策的には反自民的な政策を取った小泉氏とその後の小泉氏の政策を修正した自民党政治は共通点もあって、必ずしも自民党は市場原理主義的ではなかったわけです。
そういう流れの中で迎えた選挙の結果としての自民党敗北の原因です。
その原因として考えられるのは
①自公連立政権への失望
②かつての小泉・竹中構造改革・市場原理主義への反発
(年金問題・非正規雇用・ワーキングプアにしろ、経済停滞による低所得者層の増加と格差拡大)
③小泉郵政選挙(2005年)以降の民意を問わない政権投げ出し(安部・福田・麻生)への批判
④選挙タイミング、民主党ネガティブキャンペーンなど選挙戦略の失敗
⑤米国追従体制への批判とオバマ大統領の誕生
⑥麻生首相個人への失望
⑦マニフェスト戦略の弱さ
⑧生活者支援に対する不安(増税・年金問題など)
⑨支持団体(郵政・農業・医師・建設等々)の離反
⑩政官財癒着構造への批判
整理整頓してはいませんけど。
今までは、自民党の受け皿になりうる有力なリアリストが居なかったわけですが、
小選挙区制の導入と野党勢力の収斂の結果としての民主党が結党され、自民党に代わる国民政党になるべく10年間力を蓄えました。
そして今回の選挙で、自民党的なるもの
それに代わる受け皿である民主党の存在への期待感が高まり、米国がブッシュ・市場原理主義に対する修正をするオバマ大統領の誕生という中で、
「とにかく、変わることが必要だ!」と思わせたことが今回の結果に繋がったのではないか、と考えます。
有権者が民主党の政策を評価したというよりも、いい加減一度変えてみたいと思わせる日本と世界の流れの変化が今年起きたということではないでしょうか。