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久し振りのゆったりした休日でした。

これも最近読んだ本。
野口悠紀雄氏の本
モノづくり幻想が日本経済をダメにする―変わる世界、変わらない日本

です。

この本の感想メモを記します。

・日本とドイツが似ている点は
  この10年に世界経済における地位の低下、自動車を中心にした製造業が強い、違 う点は自然環境の保護
・GDPにおける製造業の比率は日本とドイツは21%に対して米国14%英国15%と低 い
・円安政策は日本が望んで世界も望んでいるがこのままでは蟻地獄である
・日本ではITは回線の問題と捉え、回線を使って何ができるかの内容に乏しい
・世界の経済構造を変えてしまったのはITによって情報伝達に関わるコストが事実 上0になったことである
・東京と地方の格差が大きくなったのは国に依存し、自分たちが新しい経済活動を起 こさないからである
・高度成長期、日本は重工業化のパターンの常識を破った。(川鉄、現JFEの千葉 工場の例)だが現在は固定概念に縛られている
・日本は文化的には小国になったことを認識すべき
 英語をもっと勉強すべき
・多数の無名な人の意見の積み重ねは正しい
・(忠臣蔵を例にして)社会的ルールに反する行動が武士道の発揮としてみなされる ことはおかしい
・日本における組織人は社会に共通する知識や専門的知識よりも組織特殊知識が価値 が高い。これは藩と同じ発想
・日本が強いのは大量生産の製造業だが、付加価値の高い少量生産は苦手
・日本の教育に必要なのは「好きなことだけを勉強してもそれが評価される教育体  制」である。画一的人材をつくっていることが問題。
・日本は金融技術の面でも遅れている、それでも貿易収支<金融収支の状況
(これは寺島氏講演内容からも参照されたし)
・現在行われている政府の補助策をやめ、市場の力で生産性の高い分野への資源を移 動させよ
・日本の鉄鋼業が長期的に成長産業ではありえない
・危機感こそが変革に向けて人々を突き動かす最も強い力である
・日本は明治期と高度成長期に見られるように危機感から外国から謙虚に学んで異質 な社会を建設することができた
・保守とは守るべきものを選択し、将来に引き継ごうとするものであり、過去すべて を礼賛するものではない。これは悪しき復古主義である
・冷戦が終結することによって30億人の労働人口が資本主義経済の枠内に取り込ま  れ、労働力が大量に増加した
・自民党は企業と労働者(の一部)両方の立場を代表した「八方美人的万年政権党」 であった。野党が整合的な経済政策を持ち得なかったことも影響している
・ケインズは相続による資産格差の固定化が社会の活力を奪うことを危惧していた。
 日本の商店街の活性化が行われないのもこれが原因である


バリバリの市場主義経済論者である野口氏に反論もあろうと思いますが、
現在の日本の状況を的確に捉えているという点で
副島隆彦・森永卓郎・寺島実郎氏らの著作は参考になります。

最後に現状認識とこれからの日本の在り方をまとめます。

日本は
①冷戦の終結によって中国などの低賃金の国が世界経済に登場したため、大量生産型の製造業は先進国(特に日本)では太刀打ちできない。
②IT革命によって情報伝達コストが0になった

①と②により世界経済の大転換に対応が出来ず(多くの先進国、特にイギリスは対応ができた)、このままでは大変なことになる

この二つの現状からなすべきことは
①産業構造を根本から改革し、知識集約型のサービス業・金融業、新しいタイプの製造業に転換するべき
②外国資本の買収を受け入れて産業構造改革に寄与すべき
③世界的市場主義経済に対応できるひとづくり産業づくりが必要

新しいものを生み出していかないと日本は沈没してしまう、そんな危機感を強くしました。