民法条文研究~心裡留保~ | やぱたんのブログ

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専門学校で20年超講師をしている行政書士・宅地建物取引士です。
また公務員対策として経済・財政、民法、憲法、行政法分野も担当しております。
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  権利関係 第6回

 

 9)心裡留保とは何ですか

 

(心裡留保)
第93条 意思表示は、表意者がその真意ではないことを知ってしたときであっても、そのためにその効力を妨げられない。ただし、相手方がその意思表示が表意者の真意ではないことを知り、又は知ることができたときは、その意思表示は、無効とする。
2 前項ただし書の規定による意思表示の無効は、善意の第三者に対抗することができない。

一.93条1項本文

✅心裡留保とは、表意者(意思表示をした人)が、真意でないことを知ってした意思表示のことを言います。ウソや冗談がこれに当たります。

✅「裡」とは「裏」「…のうちに」という意味があって「秘密裡」などと使われます。つまり、心裡留保とは、「本当の気持ちを心のうちに秘めつつ意思表示をする=ウソ、冗談」ということになります。

✅人の心 「動機」⇒「内心的効果意思(=決心、決意)」⇒「表示意思」⇒「表示行為」

 

二.93条1項但書

✅心裡留保の効果は原則として「有効」です。つまり、「ウソから出たまこと」になります。ウソによって表出された外観を信じた相手方の利益を守るべきだからです。

✅しかしながら、相手方において①ウソと見抜いていた、②ウソとわかるべき状況であったと誰もが思うような時まで有効のままとはしません。

✅相手方が心裡留保の意思表示をした本人の真意を「知っている」もしくは「わからなかったが、わからないことに過失がある」時まで本人の利益を犠牲にする必要はないということになります。相手方において、心裡留保をした表意者の真意を知り、または知りうる時は無効となります。

 

三.93条2項

   A・・・(無効)・・・B  ⇒ (売買) ⇒  C
(心裡留保)    (悪意or善意有過失)     (善意)

✅Bの悪意または善意かつ有過失によって、AB間の意思表示が無効となったとしてもその後に利害関係に入ったCが「善意」であれば過失の有無に関係なくAは心裡留保による意思表示の無効の効果をCに主張できないことになります。「自らが認識しながらついた積極的なウソ」をついた人と冗談やウソとは「知らなかった」人では、前者(原権利者)の利益を守る必要性はありません。