【イスケヨリヒメ/神武天皇と大和で結婚した初代皇后】
@art.mochida.daisuke
イスケヨリヒメ（伊須気余理比売）は、ヒメタタライスケヨリヒメ（比売多多良伊須気余理比売）、ヒメタタライスズヒメ(媛蹈鞴五十鈴媛)やホトタタライススキヒメ(富登多多良伊須須岐比売)とも呼ばれ『古事記』・『日本書紀』において初代神武天皇（じんむてんのう）が二番目に結婚した女性であり、正妻(初代皇后)となったとされる女性です。
『日本書紀』ではヒメタタライスズヒメと表記され、母親は三島（摂津/大阪府北部）の有力豪族のミシマノミゾクヒの娘セヤダタラヒメ（タマクシヒメ）で、父親は三輪のオオモノヌシ（もしくはコトシロヌシ）とあり、出雲系の由緒ある神の系譜を受け継いでいるとされます。
『日本書紀』『古事記』のいずれも、イスケヨリヒメの誕生には異類婚が係わっていて、父である神は、『日本書紀』では「八尋和邇（やひろわに）」、『古事記』では「丹塗りの矢（赤い矢）」に姿を変え登場しています。
ようやく東征を果たし日本を建国した神武天皇は、側近のオオクメからイスケヨリヒメ誕生の異類婚の逸話を聞きます。
その話によると、美少女のセヤダタラヒメが厠に行く時を狙って、オオモノヌシは丹塗り矢に姿を変え、川の上流から流れていき、セヤダタラヒメの陰部（ホト）を突きました。
驚いたセヤダタラヒメが丹塗り矢を取って部屋に戻ると、その矢は麗しき男（オオモノヌシ）に変化し、両者は結ばれイスケヨリヒメが生まれたといいます。
神武天皇に見初められたイスケヨリヒメは皇后として迎えられ、2代綏靖天皇（すいぜいてんのう/カムヌナカワミミ/三男）とカンヤイミミ（多氏の祖/次男）、ヒコヤイ（長男）、を産みました。
『古事記』では、神武天皇が東征する前に結婚した九州のアヒラツヒメ（吾平津媛）との間にタギシミミが産まれていましたが、神武天皇が崩御すると未亡人となったイスケヨリヒメをタギシミミは自らの妻とし、神武天皇とイスケヨリヒメとの間に生まれた嫡子である皇子たち（綏靖天皇、カンヤイミミ、ヒコヤイ）を暗殺しようとします。
これを察したイスケヨリヒメは、我が子らに身の危険を知らせるために和歌を2首詠んで送り、異母兄弟のタギシミミの反逆を悟った皇子たちは、逆に先手を打ってタギシミミを討ち取りました。
タギシミミ討伐に功績のあった綏靖天皇が皇位を継ぎ、その後はイスケヨリヒメは皇太后となりました。
イスケヨリヒメの別名ホトタタライスズヒメの名前のうち「タタラ」の部分を、たたら製鉄と結びつけて解釈する説もあります。
タタラはたたら炉のことであり、「ホト」は陰部を指すとともに火床(ほど)という炉のことであるとされ、神武天皇がホトタタライススキヒメを妻に迎えたのは、皇族が製鉄技術を持つ一族との結びつきを示しているともいわれます。
イスケヨリヒメは別名が幾つかありますが、その中のイスズヒメ（五十鈴）は鈴を意味し、たくさんの鈴で手足を飾っていともされているので、鈴をモチーフにした装飾を身に着けて描いています。
・兄弟姉妹
イスケヨリヒメの母であるセヤダタラヒメ（タマクシヒメ）は、他に二人の子を産んだとされています。
アマノヒガタクシヒガタ（天日方奇日方）はイスケヨリヒメの兄。『先代旧事本紀』では神武天皇に仕えて「申食国政大夫」（宰相）になりました。（鴨王、三輪氏と賀茂氏の祖）
イスズヨリヒメ（五十鈴依媛命 ）はイスケヨリヒメの妹。のちに2代天皇の綏靖天皇の后になりました。
【お祀りする神社】
橿原神宮（奈良県橿原市）
率川神社（奈良県奈良市本子守町）
狭井神社（奈良県桜井市）
津森神宮（熊本県上益城郡益城町）
甲佐神社（熊本県上益城郡甲佐町）
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